塩谷舞(しおたん)さんによる「Art Hack Day」レポート第1弾。そもそも「Art Hack Day」って??「カオスな場所に身を置きたい」と頼み込んで同イベントに携わるほど、塩谷さん自身が入れ込む理由とは?「ヤバいものを作るヤツ」の巣窟、潜入取材をどうぞ!
こんにちは。塩谷舞(@ciotan)です。色々書いたり広めたりしている人間です。
連載1回目で「自分よりヤバいものを作るヤツ」を紹介させてください! と書いていたのですが……
肝心の「自分よりヤバいものを作るヤツ」って誰なのか?
既に名の売れている有名人だけが該当するわけじゃないし、相手はまだ子どもかもしれないし、ネット上に存在してないかもしれない。
これから時代を作るぞ!って人に出会うためには、できる限りカオスな場所に自分の足で踏み入らなきゃいけないし、そんな中でアンテナを張り続けなくちゃ見つからないぞ。と、なんとなくずーっと思っています。
出会いのパーセンテージを出来る限り高くするため、カオスな場所に身を置きたいんです。そこで「運営スタッフとして中に入れてください!」とお願いしてずっぽり入っちゃったのが、Art Hack Dayというアートに特化したハッカソン。
Art Hack Dayは、2014年に初開催されたアートに特化したハッカソン。主にエンジニアとアーティストが参加し、最初の1日は自己紹介やグループ分け、そして2週間の制作期間を挟み、最後の2日間は開催場所の3331アーツ千代田に集まって完成までものすごい勢いで詰めていく…という流れです。
「エンジニアとアーティスト」と言いつつも、実際参加する人の肩書きはバラバラ。大企業のハードウェアエンジニアから、個人で活動するアーティスト、伝統工芸に携わる人、ダンサー、音楽家、広告プランナーも。いずれも、3〜4倍の倍率をくぐり抜けてやってくる猛者揃い。そんな面子がいきなり出会って作品づくりをするのですから、カオスであることは大前提です。
2年目のArt Hack Day開催を前に、私は昨年参加した人たちにインタビューを行いました。取材したのは、デザイナー、音楽家、バイオアーティストに陶芸家。
そこで聞いた各々の意見は、見事にバラバラ。でも、全員に共通しているものが2つあったんです。
1.自分の所属している業界、コミュニティなどに閉塞感や課題を感じていること。
2.その現実を悲観するのではなく、新たな活路を自ら切り開こうとしていること。
なんて素敵な人たちだろう、って。話を聞きながらドキドキして、ものすごく嬉しくなりました。未来を見ている人たちが集まると、未来の可能性がすごく豊かになるものだから!
そもそも「◯◯業界」という枠組み自体が、足かせになることって多いと感じています。
人間が知的好奇心の高い動物であるばっかりに、昔は生活の一部だった美術や音楽が独自の発展を遂げていって……いや、そのこと自体はすごく素晴らしいのですが、その過程で業界がパキンと別れて、断絶されてしまう。その現状はなんだか、さみしいものでもあります。
業界の独自ルールが出来て、ルール勝つための裏技が生まれると、アウトプットよりもプロセスが重要になってしまうこともしばしば。それって「大企業の中で、社内政治に勝つことに必死になるオジサン」みたいで、どうも本質的な行為から遠ざかってしまう。まるで半沢直樹的な世界ではないですか? いや、半沢直樹は名作なのですが。
そんな凝り固まった社会に対する一つの解決策として、このArt Hack Dayは存在します。
今や、東京では毎週末何かしらの「ハッカソン」が開催されてますが、そもそも「Hack」というのは、「切り刻む」「めった切りにする」といった、暴力的な動詞。そこに「Art」が加わったArt Hack Dayは、つまるところ「凝り固まったArtをめった切りにする」という、刺激的かつ暴力的な意味合いではないでしょうか? 私はそう捉えているし、そしてとってもドキドキします。
正しい主催側のメッセージは、ディレクターの青木さんの宣言文をぜひご参照ください!
『社会への問題提起をする「アーティスト」の社会的評価は、なぜ低いのか?Art Hack Day開催に至るまで』
そして、今年のArt Hack Dayは8月22日に幕開けしました。集まったのは、およそ60名のクリエーター。朝早く集合した彼らを見てすぐ、それぞれが本気であることがすぐにわかりました。顔つきが全然、ユルくない。
午前中には、メディアアーティストの落合陽一さん、美術手帖の編集長・岩渕貞哉さんがインスピレーショントークなるものを行います。メディアアートのこと、未来のクリエイティブ、アートとテクノロジーの関係性……。様々な情報やそれぞれの解釈を知る、インプットの時間です。
その後はひたすらに、ディスカッションに次ぐディスカッション……。
自分の特技は?
何を作りたい?
今、どんなストレスを抱えてる?
他の参加者はどんな人?
60人を超える参加者全てと話すことはなかなか難しいのですが、何度も何度もテーブルを変えては、とにかく話します。そして、それ以上にたくさんの話を聞きます。
そうしてディスカッションすること、約4時間。
「自分のアイデアを実現させたい、という人はぜひプレゼンしてください」
そこで手を挙げたのは、なんと30名。
最終的には5〜6人でチームを組まなければならないので、その中から3分の1ほどの人しか、自らのアイデアを実現まで持っていくことは出来ません。
30人それぞれがプレゼンテーションをしました。すぐに仲間が集まる人もいれば、一人も集まらず、他のチームに参加する人も……。ほんの一握りの枠を掛けて、参加者同士のシビアな判断が続きます。
参加者の一人である面白法人カヤック所属の佐藤ねじさんは、国内外のアワードを多数受賞している、既にキャリアのあるクリエーター。そんな彼は自宅でいくつもアイデアを考えて、Art Hack Dayに参加しました。彼のアイデアは、どれもユニークで面白いものでした。ただ、本人自らそれらを全て廃棄。「どうしてですか?」と聞くと「だって、会場にタップダンサーがいたから! 彼と一緒に出来ることをやりたくなったんです」と答えてくれました。
左から池澤あやかさん、中農稔さん、水落大さん、米澤一平さん。前にいるのが佐藤ねじさん
一方、午前中に「周りがスゴい人ばっかりで、私なんかが参加して大丈夫ですかね…?」と弱気な発言をしていたのは、日本大学芸術学部でイラストレーションやデザインを学んでいる甲斐桜さん。社会人参加者が多い中、少数派の大学生です。
彼女は、ディスカッション中に飛び出たキーワード「音の水族館」からアイデアを広げて、それを一生懸命にプレゼンテーション。
「水槽に魚が泳ぐように、音が泳ぐ様子を見てみたいんです!」
そのキラキラした熱意のもとには、心強い仲間が集まりました。
左から大谷友花さん、神田彩香さん、山崎さん、甲斐桜さん、大木昇さん、矢口雄大さん
年齢もキャリアもバラバラ。そんな人たちが真剣にぶつかったときに生まれるのは、最もシンプルでフラットな関係性。会社や学校のような上下関係は、一切感じられませんでした。
各チームは現在、それぞれの職場や学校に戻り、隙間時間で制作を進めています。そして9月5日、6日にはまた3331アーツ千代田に集まり、集中して作品を作り上げます。
ここから一体、どんな作品が生まれるのでしょうか?
それ以上に、どんな関係性が生まれて、どんな未来に繋がっていくのでしょう。
新しい「時代」が生まれるシーンに立ち会えるパーセンテージが限りなく高いかもしれない、Art Hack Day。その続編は後日レポートさせていただきますので、乞うご期待ください!
3331α Art Hack Day 作品展示
9/8(火) 〜 13(日) 12:00-19:00
3331 Arts Chiyoda 1F メインギャラリー
最新情報はFacebookページにて発信しています。
https://www.facebook.com/3331alpha
文 = 塩谷舞(しおたん)
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