在学中から企業で長期インターンをして仕事を覚え、自らビジネスを始めてしまう――今回登場するのはそんな3人のワーキング大学生。好きなことに好きなだけ打ち込める学生時代に、なぜ前のめりに働くのか。インターンや起業を経て、彼らが選ぶこれからのキャリアとは。座談会を開催し、彼らの仕事観に迫った。
【座談会 参加者プロフィール】
本間陽介(慶應義塾大学 商学部4年)
リア株式会社(現在株式会社Robust Designに社名変更)の長期インターン生を経て取締役となり、プログラミング初心者向けメディア「プロスタ」を立ち上げる。同時に、個人でアフィリエイトサイトの運営やSEOコンサルティング事業を行いつつ、資格スクエアを運営する株式会社サイトビジットでもエンジニアインターン中。来春、大手人材サービス系企業に就職予定。
太田亜美(産業能率大学 経営学部4年)
大学1年のときに個人でアフィリエイトビジネスを開始。3年で友人と共に起業を経験後、Rettyをはじめ複数のIT系スタートアップでインターンを経験。来春、大手証券会社に就職予定。
竹縄優作(中央大学 商学部3年)
大学1年の頃から、大小様々な企業でインターンを経験。昨年よりスタートアップで6ヶ月の修行期間を経て、今年8月に友人と3人でIT系サービスで起業。今のところ、卒業後は就職を希望。
― 本日はみなさんのリアルなキャリア観に迫りたいと思います。3人とも長期インターンを積極的にされていたということですが、そのきっかけは?
太田:
3年のときに友達がフリマアプリで起業したので、そこに参加したのですが、失敗に終わりまして…。それがきっかけで「サービスをローンチするってどういうことだろう?」「ITってなんだろう?」ということに興味がわいて、スタートアップでのインターンをRettyで経験しました。「なんて楽しいんだ!」と、その後もスタートアップでのインターンをいくつか経験しています。大学の先生にもインターンの意義をきちんと説明して「講義欠席」の許可をもらったりして(笑)一時期は2社でインターンして週6日で働いたりもしていましたね。
竹縄:
僕は付属校から大学に入ったんです。大学受験がなかったので、人生において同年代と競争することってなんだろう?と考えたら「就職だ」と。就活を先取りする感覚で1年生の時からインターンを始めました。はじめは金融系や大手などのインターンに参加していたのですが、選択肢を広げたいとスタートアップに行ったら、ドハマリしちゃって。その会社、経営者が23歳なんですけど、その人の判断力、決断の内容に衝撃を受けて「とてもかなわないな」「この人から学びたい」と半年間そこで修行させてもらいました。
その頃は、「みんなが休んでる土日こそチャンスでしょ」なんていう考えだったので、長期休暇のときは週7日働き、学校がある時も授業に出つつ、週5日で働いていましたね。半年間、こういった生活を続けるうちに「自分にもできるんじゃないか」と自信がついたのでインターンを辞め、この8月に友人と起業しました。
本間:
僕は大学3年目で休学して、10ヶ月間、1社でインターンをしていました。最初の2ヶ月はHTMLやCSSを教えてもらいながらひとりでアフィリエイトサイトを作りまして、そこから個人でもサイトを作ったり、SEOコンサルをしたり。そのインターンは辞めたのですが、同じ会社の方に声をかけてもらって、今年2月からは役員として新規サービスの立ち上げを担当しています。いまは週1〜2日程度出勤して、あとはリモートでの作業がメイン。現在はエンジニアとしてのスキルも身につけたいので、別の会社でもインターンをしています。
― 長期インターンとアルバイトはかなり違うものなんですか?
太田:
違いますね。私の考えでは、アルバイトは決められたことを過不足なくやるというものですが、インターンの場合は単に言われたことをやるのではなくて、その会社にどうやって貢献するか、考える義務があります。インターンの場合、お給料は安いかもしれないけれど、学生にいろいろ挑戦させてくれる会社であれば、行く価値がありますね。
― お話を聞いていると、3人とも遊ぶ時間が全然なさそうですね…。
太田:
仕事と遊びってけっこうカブるんですよね。人と会うのも自分の将来に役立つと同時に楽しいことだし、アフィリエイトとかもサイトを作ること自体が楽しいから、自分にとっては遊びなんですよ。
私は多趣味なので、ダンスのサークルにも入っていますが、それもパソコンの前でずっと座って仕事していると太るから、運動してリフレッシュするため。大学でまわりの女の子たちと恋バナするのも、人脈作りとかマーケティングの一環という感じ(笑)仕事につながらない遊びってあまりないですね。
本間:
プライベートと仕事をわざとごっちゃにするような感じですよね。今は旅行に行ったりするよりは、自分の仕事をしている方が楽しいと感じてしまうので、理想は遊びと仕事がまったく重なるような状態です。
竹縄:
高校時代は全く勉強せず、金髪でバンド活動とかしていたんですけど、大学に入ってからはあんまり遊んでないですね。カラオケもボーリングもいっぱい行っていましたが、今はさっぱり(笑)飲み会とかもあまり行かなくなりました。でもすごい人と知り合えるとか、何か学べることがあれば行きたいです。
― それぞれ、卒業後はどのようなキャリアを思い描いているのでしょう?
太田:
いろいろなベンチャーから内定をもらったのですが、最終的にはいくつかの証券会社を受けて、大手証券会社に行くことに決めました。というのも、インターン先のベンチャーが上場を目指していることを知り、「あ、スタートアップを金融面から支援できるかも」と気づいたんです。スタートアップのなかで働くだけが「世界を良くする」ということではないんだ、と。
本間:
僕は人材サービス系の大手企業への就職を決めました。最終的にその会社に決めた理由は、「複業に寛容である」ということ。社員の方がご自身の複業についてすごく楽しそうに話されていたのがすごく印象的だったんです。僕自身インターンをしながら個人事業もやるようになり、その相乗効果を物凄く実感しました。だから、卒業後も同時に複数の仕事を続けたいと思っています。
竹縄:
いま3年なので就活はこれからの話ですが、やりたいことはたくさんあります。まずは会社に入って勉強して、将来は起業するかもしれないし、会社の中でやりたいことが実現できるならそれでもいいかもしれない。今は、一度大企業に就職してみたいという気持ちが大きいです。
これまでスタートアップにおける経営判断を見させていただく機会はありました。次は大企業での経営判断を見てみたいんです。スタートアップは若い経営者の「センス」や「感性」が重要で、大企業では経営者の「経験」が重要なのかもしれない。こういったところにすごく興味があります。大企業にも尊敬できる先輩がたくさんいるので、そういった人達がいる会社に行きたいですね。
― スタートアップや起業を経験したみなさんが、それぞれ大企業への就職を希望しているというのがちょっと意外ですね。
本間:
就職するメリットは、できることの幅が広がるということ。学生時代にいろいろやってみて、企業の人の話を聞くなかで、学生のスキル、つながりだけでは、できることが限られてしまうと痛感しました。だから、行くなら豊富なリソースを持つ大手で、個人やベンチャーにできないことをやってみたいんです。
竹縄:
まったく同じ意見なのですが、起業してみて気づいたのが、エンジニアさんひとり探すのもめちゃくちゃ大変で、すごく時間を費やしてしまうということ。起業って好きなことができるように見え実は難しいと思いました。その点、大企業は「やる」ということが決まればお金も人もすぐにアサインされる。とても魅力的だと思います。
太田:
私の場合、生意気に聞こえるかもしれませんが、今スタートアップに入ったら1、2年目で突出できる自信はあるんです。ただ、Web系の女の子として埋もれないために、みんなが持ってないスキルを身につける必要があると考えています。最初にエンジニアを目指そうと考えたのも、女子比率が低いから。まわりには学生起業家もけっこういるなかで、同じ土俵で戦うのではなく、まずは金融系の専門知識を身につけ、またスタートアップの世界に戻ってきたい。たとえば、結婚、出産などでブランクが生まれたとしても、通用する専門スキルを今から身につけていきたいと思っています。
― 大企業は大企業で、また別の苦労もありそうですよね。
本間:
そうですね。大企業で働かせていただいた時、確認や決裁フローが複雑でやりたいことがうまくやれなかった経験があります。たとえば、スタートアップにないコミュニケーション、根回しや段取りなどはストレスになるのかもしれません。でも、逆にそういったところも身につけていきたいと思っています。
太田:
私が大企業のインターンで感じたのは、社員さんが私たちと同じ目線で話してくれないということ。困ったことがあっても「一緒に考えよう」ではなく「助けてあげよう」というスタンスで。逆に教育研修のしくみやマニュアルはしっかりしていました。自分で考える力を身につけたり、大きく成長したいと思うなら、スタートアップでのインターンがいいと思います。
竹縄:
どちらも良い点があり、有名な大企業だとインターン生の数も多く、自分のまわりにいないような優秀な学生から刺激を受けたりもします。逆にスタートアップだとインターン生は少ないかもしれないけど、とにかく経営者の近くで学べる。だから学生のうちは、両方経験してもいいのかもしれませんね。
― 貴重な経験談をありがとうございました。就職先での皆さんの活躍、そしてその先に続くキャリアも楽しみです!ありがとうございました!
文 = やつづかえり
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