TWDW2015のレポートをお届けします。今回取り上げるのは「仕事は“会う”ことで変わる。〜ライブ系スキルシェアの可能性〜」トークセッションパート。山本大策(TimeTicket)さん、山本雅也(KitchHike)さん、田中翼(仕事旅行社)さんが語る「人と人が会う」Webサービスの可能性とポイントとは?
TWDW2015レポートとして、今回取り上げるのは【仕事は“会う”ことで変わる。〜ライブ系スキルシェアの可能性〜】トークセッションパート。
Webサービスにおいて注目されるCtoC、シェアリングエコノミーなど、「人と人が会う」Webサービスを提供するスタートアップの面々が集まった。
編集者である河尻亨一さんによる進行のもと、山本大策(TimeTicket)さん、山本雅也(KitchHike)さん、田中翼(仕事旅行社)さんは、【仕事は“会う”ことで変わる】というテーマに対し、ディスカッションパートにて、こう語った。
自ら開発したCofeeMeetingで320人ほどのユーザーと会い、TimeTicketや、今開発中の新プロダクトのアイデアが出てきている(レレレ山本さん)
手の届かない存在と思っていた方に実際に会うことで、同世代で身近に感じることができた。それで自分にも何かできるのではないかと思えた。実際に会うことによってもたらされる影響は大きい。それが仕事旅行というサービスの原型にもなっている(仕事旅行 田中さん)
そして、働き方において3名に共通していたのは、起業したことによってサラリーマン時代に抱えていたストレスがなくなったということ。
同時に、今回のセッションでは「働き方」「仕事」というテーマ以外に、いずれもCtoCサービスを手がけている者同士ということもあり、「人と会うことで広がるサービスの可能性」「サービスを持続させるために重要なこと」も語られた。今回はそのポイントを抜粋してお届けする。
【登壇者プロフィール】
山本 大策(TimeTicket/株式会社レレレ 代表取締役)
会社員として働いていたエンジニア時代に個人サービスとして「CoffeeMeeting」を開発。その成功をきっかけに独立。自身も「CoffeeMeeting」で約320人のユーザーと会い、そこで得たフィードバックを元に、スキルや知識を持った個人が30分単位で時間を売る「TimeTicket」をリリースした。
山本 雅也(KitchHike 共同代表)
世界中の食卓で料理をつくる人と食べる人をマッチングする「KitchHike 」を、2013年にスタート。世界6ヶ国30メニューほどからスタートし、現在(講演当時)は世界33ヶ国686のメニューが登録されている。
田中 翼(株式会社 仕事旅行社 代表取締役)
仕事が体験できる「仕事旅行」のサービスを2011年に開始。現在約130職種のプログラムを提供。一般的なワークショップや研修と異なり、「現場」を訪れることにこだわったブログラムが特徴。11月には、より短時間でオフィスを訪問する新サービス「仕事散歩」をリリースした。
河尻亨一(銀河ライター/東北芸工大客員教授)
出版にとどまらない様々な領域における編集者として活躍。現在、月1で「仕事旅行社」を手伝っているが、そのきっかけは2年前のTWDWのセッション。他にも人との出会いが仕事につながった経験が多く、「会うこと」の重要性を感じている。
トークセッションでは、TimeTicket山本大策さんより、「去年、シェアリングエコノミーが日本でもブームになり、一回きりのサービスに対するニーズが強くなっている」と実感が語られた。各登壇者もそれに共感。続けて山本大策さんは「シェアリングエコノミーをブームで終わらせない重要性」について言及した。
山本(大):
シェアリングエコノミーに関しては、個人的には去年だったかなと。最初のブームは終わりつつあって、それが本当のブームになるかどうかが、今年から来年にかけてだと思っています。
ブームに乗るってすごく怖いことだと思っていて、(シェアリングエコノミーというテーマで)呼ばれたら行きますけど、あまり自分から「シェアリングエコノミーやってます」と言ったことはないんです。
あまりここで「シェアリングエコノミーだ」って言われると、そのブームが終わったらサービスも終わり、みたいなことになるので。CofeeMeetingの場合はソーシャルマッチングブームに乗ったんですよね。それで今はもう終わってるみたいな感じで捉えられていますけど、じつはアクティブユーザーってあまり変わっていないんですよね。
河尻:
「仕事旅行」は5年前から続けているわけですが、(ブームに乗る、乗らないという話について)どう捉えていますか?
田中:
「やりたい」っていう思いだけかもしれませんね。さっきKitchHikeの山本さんとも「なかなか儲かりにくいですよね」なんて話をしてたんですけど、ビジネス直球で利益を追うやり方をしていたら、とっくの昔にやめてるんですよ。「こういうサービスが世の中にあるとステキだよね」という確固たる思いがあるので続けてる。とはいえ、ビジネスではあるので、日々アイデアをカタチにしたり、工夫は続けてるんですけど。
山本(雅):
僕らも3年近くやってきていますけど、単純に儲かる方向にシフトして行く方法はいろいろあると思います。でもそれをやらずに「こっちの方が必要」とか「楽しくないですか?」というのをやっていきたいな、という思いは強くあります。地球のオファーを感じているというか、「地球上にKitchHikeというサービスがあった方が、豊かなんじゃないか」という感じでやっているので、僕らが儲かるか儲からないかはそのひとつ下の話。どっちでもいいかな、と。
河尻:
(儲かる、儲からないに関わらず)必要とされている限り、あり続けるわけですよね。そこがさっきレレレ山本さんが言っていた「ブームに乗らない」ということなのかな、という気がしますけど。
山本(大):
「ブームには乗らない」と言いましたけど、世の中のニーズとかトレンドを掴んでサービスを作るということは必須だと思うんですね。
河尻:
ブームとトレンドはどう違うのか、もうちょっと具体的に言うと?
山本(大):
仕事旅行の田中さんは、ブームが始まる前から世の中のふわっとしたニーズをつかまえて、CtoCのサービスとしてはかなり早い段階で始められたわけですよね。
田中:
そうですね。2011年、Airbnbがバーンと来る前なので。
山本(大):
流行っていないかもしれないけど、「なんとなく必要だよね」と感じるその力はすごく必要で、「メディアが騒いでいるから」とか「あそこが儲かっているらしいから」とかでそこに乗るっていうのが違うということです。特にこういうCtoCの新しい価値観を提示するサービスは作りにくいと思います。
河尻:
ブームになってから始めたら、すでに乗り遅れてるっていうことですよね。皆さんはやっぱり、「新しい価値観を提示している」というつもりがありますか?
山本(雅):
KitchHikeのミッションは、表向きは「世界の家庭料理を旅しよう!」と謳っているんですけど、裏のミッションは「世界平和」なんです。これは、創業当時からずっと言い続けています。
方法論としては新しいわけじゃないんですよ。ある文献の記録では、世界中のどの民族も、言葉の通じない人たちが乗り込んできた時にどう対処してきたか・・・家に招いてご飯やお酒をふるまうことで仲良くなって争いを避けたそうなんです。僕らはこの具体的な方法論に共感して、あんまり今の時代にないと思ったのでKitchHikeを始めました。なので、新しい価値を提示しているというつもりは全然なくて、人間が昔々に持っていた考え方を、インターネットでもう1回やってみようという考え方なんです。
河尻:
つまり普遍的な価値を見つけ出して、新しいやり方でやっていると。それで言うと、「仕事旅行」はどうですか?
田中:
僕らも新しい価値うんぬんということよりも、「働くって楽しいよね」という、まさに普遍的な価値をもっと世の中に広げたいなと始めたので、今の話はすごく共感できますね。
河尻:
会場に来ている人の中には、いま会社員だけど起業したい人もいると思うのですが、皆さんから何かアドバイスはありますか?
山本(大):
新しいサービスを出しても、それを運営し続けるのが大変なんですよね。自分を駆動させるエンジンが必要です。それは情熱、アイデア、技術という3要素だと思うんです。技術というのは、「絶対的に人よりうまくデザインできる」とか「プログラムがうまくかける」というのがあって、それを活かしたいということです。アイデアも、「このアイデアは自分が世の中に出さなきゃ気がすまない」というようなエンジンになります。そして一番大きいのは情熱の部分かなと。「これは自分が世の中に出さないと誰もやらない。自分しかいない」というような、それくらい使命感を感じて情熱にかられるというもの。それがあるうちはやっていけると思いますね。逆にその信念がないと、続けるのがなかなか難しいと思います。
河尻:
覚悟、信念と言われると、KitchHikeの山本さんも「世界平和」と言うくらいだから、相当熱いものがあるんじゃないですか?
山本(雅):
「楽しそうな方に行く」っていうのが、働き方というか、生き方のチョイスとしては一番大事だなと思いますね。基本的には楽しい方を選ぶというのがいいんじゃないかなと。それと僕は、「不確実性にかける」というのが人生を躍動させるポイントだと思って、いつも心がけています。
河尻:
なるほど。田中さんは?
田中:
「楽しい方に」というのは本当にそうですよね。おふたりとも「楽しみたい欲求」が非常に強いんだろうなと感じていて、欲求に忠実に生きているだけという気もしなくもないです。自分自身も「こういうのいいな」とか「誰もやらないから、俺がやりたい!」みたいな気持ちに従ってるだけなので。
河尻:
皆さんは思いに突き動かされて事業を続けてきたわけですけど、今後どうなっていきたい、というのはありますか? 例えば5年後の2020年とか、もっと先でもいいです。山本さん、地球は平和になってるでしょうか?
山本(雅):
KitchHikeが普通になる世の中になっていたら、それは自然と地球平和、世界平和だな、と考えています。例えば国と国の関係でも、僕の妻はたまたま韓国人なんですけど、国のレベルで話をするとすごく事情にまみれて言いたいことが言えない、みたいなことがありますよね。それはしかたないですけど、ボトムアップで世の中が良くなっていくというのが、インターネットが発明されて以降の時代のあり方だと思うので、KitchHikeみたいに個人と個人とか家族と家族のレベルでバックグラウンドとか国籍とか言葉が違ったりする人が自然につながっていけば、「あの国とあの国って、政治的には揉めてるけど、国民同士はめちゃくちゃ仲良くない?」みたいな方が目立ってくる、という時が来るだろうと。その手法として、一緒にご飯を食べるというのは、具体的だし楽しいし、1日3回はやることなので、良いと思っています。
山本(大):
2020年ということでいうと、あと5個くらいは新しいサービスを作っていたいです。僕、だいたい1年に1個くらいは新しいプロダクトを出してきているんですよ。今ふたつしか紹介してないですけど、間に1個失敗したプロダクトがあるので、一応3期で3つ出してきていて。「プロダクトジャンキー」、つまり作ることが異常に好きなんで、組織とか関係なく常に作り続けていたいなと。「レレレ」という名前は、「次に何やるかよくわからないな」みたいな、そういう曖昧な存在でありたいということでつけたんです。そういうプロダクトを作る会社になれたらいいな、と思いますね。
田中:
「日本人は仕事ジャンキー」みたいに言われていますけど、いい意味で「日本人ってみんな仕事楽しくてしょうがないらしいよ」みたいに海外に伝播して影響を与えていくような状況にしたいんです。仕事を楽しんでいる人に会いに行くと感化されるので、とにかく仕事を楽しんでいる人を増やして、それに会いに行く人を増やして、みんな仕事が楽しくなって…、みたいな流れを作っていきたいですね。
河尻:
昨日も「仕事旅行」のイベントで、旅の提供者であるホストがたくさん集まったんですよ。占い師みたいな人とか伝統技術ディレクターとか…、皆さん実際に会うと、Webサイトで見ていたのと全然違うんですよね。やっぱり、「生身の人は魅力的」という当たり前のことを感じました。働き方を考えるにあたっても、「人に会う」という切り口は重要ですよね。ということで、この会を締めたいと思います。今日は皆さん、ありがとうございました!
(おわり)
文 = CAREER HACK
編集 = やつづかえり
4月から新社会人となるみなさんに、仕事にとって大切なこと、役立つ体験談などをお届けします。どんなに活躍している人もはじめはみんな新人。新たなスタートラインに立つ時、壁にぶつかったとき、ぜひこれらの記事を参考にしてみてください!
経営者たちの「現在に至るまでの困難=ハードシングス」をテーマにした連載特集。HARD THINGS STORY(リーダーたちの迷いと決断)と題し、経営者たちが経験したさまざまな壁、困難、そして試練に迫ります。
Notionナシでは生きられない!そんなNotionを愛する人々、チームのケースをお届け。