テーマはFinTech企業で働く「人」。金融出身者が多い? WEB・インターネット業界の出身者も? FinTech協会が主催したMeetup「FinTech企業で働くには? 金融 vs. テックのカルチャー」セッションの様子をどうぞ!
FinTechが盛り上がっていくなか、スタートアップやベンチャーではさまざまな人材を求めているが、その実態がわからない人もいるのではないだろうか。
FinTech企業ではどういった人が働いているのか?どんなカルチャーなのか? FinTechで働く「人」にフォーカスした「FinTech企業で働くには? 金融vsテックのカルチャー」(FinTech協会主催)セッションをレポートする。
モデレーター
杉本隆一郎(リンクトイン・ジャパン株式会社/日本オフィス代表代行)
パネラー
土井早春(freee/リクルーター)
佐藤佑子(クラウドクレジット/広報)
轟木博信(Liquid/管理部長弁護士)
梶田岳志(お金のデザイン/Head of Product Management)
※会場スポンサー:PwC Japan
最近、よく聞く「FinTech」だが、金融に馴染みがなく、ハードルが高いと感じる人もいるのではないだろうか。同時に気になるのが業界・各企業における今後の成長性。freee社でリクルーティングを担当する土井さんはその成長を肌で感じているという。
土井さん:やはり社員数が増えているところで会社の成長性を凄く感じます。私が入社した1年半前、38人だった社員が、今では160名になりました。毎月約10名くらいのペースで人が増えています。それは「お客様のニーズに応えていこう」「新しい分野にチャレンジしよう」ということがどんどん出てきている、ということでもあります。
私自身の話をすると、freeeに飛び込んだ時は“FinTechで働きたい”という意識ではありませんでした。私のまわりに事務作業で苦しんでいるNPOの主催者や起業家の友人がいて。「世の中を変えたい」という熱い志とは違うところに時間をとられていたんです。そういった人を助けたいと考えた時のソリューションがfreeeだったんです。
私はFinTechって大きなエコシステムだと思っていて。FinTechのなかにも資産管理、決済、投資…さまざまな分野がありますよね。将来的にはこれらが全てつながって大きなプラットフォームになっていくはず。多様なサービスがシームレスにつながっていく。だから大きなソリューションであり、ある意味「世の中を良くしていこう」という思想そのものがFinTechなのかもしれません。
“世界の信用市場を、ひとつに”を掲げ、ソーシャルレンディング(オンライン金融仲介サービス)を行うクラウドクレジット。そこで広報を担当する佐藤佑子さんも「マーケットの成長性」について実感していることを語ってくれた。
佐藤さん:私どもは新しい海外の商品などを扱っているのですが、興味を持ってもらえている、世の中に注目していただけているという実感があります。たとえば、メディアさまに取り上げていただける機会が多いということ。そして取り上げていただけた後の反響がとても大きい。セールスにおけるスタンスとしても、信用をしていただくことが重要となりますので、こちらから積極的にアプローチをするのではなく、反応を待つといったスタイルですが、運用に悩んでいらっしゃる方のお問い合わせも増加の傾向にあります。
また、新しい産業ということもあり、働く側としても「こういうことがやりたい」「アイデアがある」といった時に試しやすいですね。やりたいと思ったことがやりやすいのも特徴だと思います。やはり好きなことができているとイキイキと働くことができますよね。
梶田岳志さんはクックパッドをはじめ、これまでWEB・インターネットの畑で働いてきた人物。次に選んだのが、FinTech企業「お金のデザイン」社だった。なぜ、FinTech企業にジョインしようと思ったのか?そして自身のキャリアについての考え方について触れた。
梶田さん:私たちはロボアドバイザー(資産管理のセルフプロファイリング/分散ポートフォリオ自動運用)による資産運用サービスを提供しています。日本においては、まだ海のものか、山のものかわからないという状況です。そういう「新しいモノ」をカタチづくれる機会はなかなかありません。金融の新しいサービスをつくる、そういった機会に携わりたいと思いました。
もともと金融や投資について専門知識はありませんでしたが、クックパッドに入社したときも「料理」に詳しいわけではなかったので、そこに違いはありません。ただ、提供しているものはWEBサービスなので、開発に関する知識や経験は活かせています。
プロダクトマネージャーという職種についていえば、「新しい流れに付き合っていくしかない」という考えです。「何を作るか」を決める時、技術的な部分も重要ですが、「こういうモノがいいんじゃないか」といったアイデアが自分の中から出なくなったら終わり。アイデアを出せる状態でいるには、金融でもテクノロジーでも良いのですが、あるものごとの経緯や歴史を知っていることが大事。そのためにはやらないとだめで、たとえ失敗しても、やってその時代の流れと付き合わないと次がなくなる。ですので、そういった環境に身をおくことが大事だと思っています。
弁護士からベンチャーの「企業法務」というキャリアを選んだ轟木博信さん。ベンチャー、そしてFinTechならではのやりがいについて語った。
轟木さん:Liquidで働こうと思った決め手は事業の将来性ですね。弊社では生体認証技術を使った決済サービスなどを扱っているのですが、PCやスマホにとどまらず、「お金をおろす」「本人確認をする」という日常の行為にダイレクトで結びつくのがおもしろいと思いました。また、弊社代表も大学時代からの友人であり、信頼ができる仲間が立ち上げた事業だったので、それも一つの重要なきっかけです。
働いてみて、銀行との提携や海外展開などビジネスの広がりがもの凄いということは感じていますね。弊社は東南アジアを中心に既にグローバルでの事業展開を進めており、グローバルでのコーポレートストラクチャー・戦略立案といった業務にも携わっているのですが、移転価格税制を踏まえた無形資産やノウハウの管理といったFinTech企業であれば避けて通れない業務にも携われて、非常に充実しています。世界展開を進める上でのコスト削減など今後課題になっていく中で、できたての企業において一から戦略を考えるのはすごく勉強になりますし、おもしろいです。
また、弊社ではインバウンド旅行者向けに外貨で入金してもらい直接電子マネーを発行するサービスを展開しているのですが、資金決済法はもちろん、銀行法・外為法の規制や、犯収法や特商法など様々な法律を検討しなければならず、いわゆるFinTech企業の事業構築に法律家のアドバイスは不可欠だと感じています。
もうひとつ、弁護士の立場として私が実感するFinTech企業のやりがいとして挙げられるのは、テクノロジーを使うことで、従来からあった規制を突破できるということです。具体的な内容は公表できませんが、テクノロジーを使うことで、各種業法上の規制により実際社会で生じている様々なペインを解消することができ、行政に対して規制緩和なり特区設置など様々なアプローチでの働きかけが可能となります。フィンテック協会に加盟したのもその点が大きな理由ではあります。テクノロジーを使うことで意外と突破できることって多いですし、逆に経産省をはじめ行政側も積極的に動いているというのが印象です。テクノロジーの力で世の中を変えていけるって当たり前ですけど、すごいし、おもしろいですよね。
FinTechと一言でいっても、さまざまな企業・サービスがあるもの。特に今回のセッションではfreeeの土井さんが語っていた「いずれFinTechはさまざまな企業の提供サービスがシームレスにつながる」という言葉が印象的でした。また「世の中を変えていく」「新しいモノを生み出す」というのがみなさん共通して語っていたところ。これからのキャリアを考える上で「成長分野でチャレンジしてみたい」という方にとって注目分野といえそうです。
文 = CAREER HACK
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