2018.05.01
後藤道輝が給与即日払い『Payme(ペイミー)』に込めた思い――お金による機会損失を無くす

後藤道輝が給与即日払い『Payme(ペイミー)』に込めた思い――お金による機会損失を無くす

なぜ、後藤道輝さん(25)は給与即日払いサービス『Payme』をつくったのか。そのウラ側にあったのは「お金に縛られず、若者たちがもっと自由に挑戦できる世界をつくりたい」という熱き思いだった。そんな彼のビジョンに迫る。

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メルカリ、CAMPFIRE、DeNAを経て。後藤道輝が選んだ起業という道

ペイミー社のCEOである後藤道輝さんは、25歳にして「テック × お金」の世界で専門的なキャリアを積んできた人材といっていい。

22歳のときにベンチャーキャピタルのEast Venturesに入社すると、投資先であるメルカリやCAMPFIREに出向。その後、DeNAの戦略投資推進室へ。いずれもマーケティングや戦略投資など「お金」にまつわる専門領域でキャリアを積んできた。

そんな後藤さんが独立したのは2017年のこと。同年11月には給料即日払いサービスアプリ『Payme』をリリースし、起業家としての道を歩み出した。

だが、なぜ「給料」という領域に注目したのか。彼の内側に宿った熱き思いに迫った。


給与即日払いサービス「Payme」

企業側は福利厚生として「Payme」を導入する。ユーザー(従業員)はアプリ上の申請ボタンから働いた分の給料を申請可能に。ログインに必要なものとしてはメアドとパスワードのみ。

「月末締め翌月末払い 」という仕組みへの違和感

後藤さん

ー まず後藤さんが、若者におけるお金の問題を解決したいと思った背景から伺ってもよろしいでしょうか。

いまの時代を生きる人たちが何かをはじめようと思ったとき、制度が時代に追いついていないことが多いと感じたんです。そのひとつが「給与」。戦後50年経ったいまでも「月末締め翌月末払い」という仕組みはほぼ変わっていません。最も身近なキャッシュインなのに。

しかも、国内の単身世帯の2人に1人が貯金ゼロ、カードローンの貸出残高は増加の一途をたどっているという調査結果もあります。この仕組みは変えるべきだと思いました。

なぜ「給料」というところに注目したのでしょうか。

近年、世の中における「ヒト・モノ・カネ」のサイクルはものすごい速さで変化していて、ユーザーがサービスを通じて現金を手にするまでのリードタイムもどんどん短くなっています。

たとえば、オークションやフリマアプリを例に考えるとわかりやすいかもしれません。もともとオークションサイトは〆切までの時間が決まっていて、その間で最高額を払った人が買える仕組みでした。その次に出てきたのがフリマアプリ。売値は決まっており、最速で落札した人が買える。さらに出てきたのがCASHなど買取アプリ。もはや買い手がいなくてもお金が手にできる。

この流れを見ていると、どんどん現金化までの時間が短くなっている。これが「給与」で実現できれば、一番健全なカタチだと考え、事業構想の根幹に据えました。

夢を諦める理由を「お金」にしたくない

後藤さん

ー 給与が即日払いで受け取れると、どのようなメリットがあるのでしょうか。

世の中はキャッシュレス化がどんどん進んでいますが、そういったものと無縁の人が世の中にはまだたくさんいます。たとえば、高校生とか大学生とか。

そういう人たちが、お金がなくてチャレンジを諦めているケースって意外と多いと思うんです。たまにしか会えない人との食事に誘われたけど断らないといけなかったり、学習のモチベーションがわいているけど教材や書籍を買うのを躊躇ったり。

若い時ってそういう些細なことがきっかけで未来が変わることもある。微力かもしれませんが、チャンスに出会った瞬間、やりたいと思った瞬間にお金があることはすごくプラスだと考えました。

ー なぜそこまで「チャンス」が大事だと?

なによりも、多くの若者にお金のせいで夢を諦めてほしくないと思っているんです。ぼくは中学生の頃からブレイクダンスをやっているのですが、それだけで食べている人ってほとんどいなくて。次の大会が迫っているのに、お金がなくて出場できない知人もいました。そういう姿を見ていて、すごく悔しかったんですよ。その時にすぐ使えるお金があれば、もしかしたら世界進出の足がかりをつくれるかもしれないじゃないですか。そうやって、名前もお金もない人たちの役に立つサービスをつくりたかったんです。

「給与の前払い」は、どのように実現できたのか

『Payme』の利用シーン

申請まではたったの3ステップ。さまざまなキャッシュレスサービスがあるが、『Payme』はクレジットカード連携をせずとも利用ができるのも特徴だ。

ー もうひとつ気になるのが、どのように給料即日払いという体験を実現していったのか?というところです。

ウェブもしくはアプリから『Payme』にアクセスすると働いた分のお金が表示されます。そこから使いたい額を決めて申請すると、弊社から銀行口座に給与が振り込まれる仕組みになっています。

ー 企業側として『Payme』を導入するメリットはどこにあるのでしょうか?

求人広告などを見ていると「給与即日払い」であったり、「前払いOK」といったことを打ち出している企業も多いですよね。つまり、それが従業員満足度の向上につながるということを指しています。たとえば、月給のみで対応していた企業も、福利厚生の一環として「即日払い」を組み込むことで、従業員の定着率や満足度があがったという声をいただくこともあります。若い人たちのお金に対する価値観が時代とともに変化していることもあり、今後さらに求められていくと考えています。

ー すごくおもしろいモデルですね。ただ、従業員としては手数料がかかることがネックになると思いますが、これについてはどのように考えていますか?

お金の価値って、そのときどきによって変化すると思うんですよね。たとえば、4月から新しい生活をはじめる人にとって、5月下旬に振り込まれる1万600円と、すぐに手に入る1万円のどちらがより価値があるかという話だと考えていて。

もちろん、その答えは人それぞれですし、手数料を引かれるのが嫌だという人もいるはずです。ただ、お金の使い方の選択肢を広げるきっかけに『Payme』がなればいいなと思っています。それを自分で稼いだ給与で実現できれば、大切にしているものをオークションサイトに出品したり、クレジットカードローンに頼る機会も減るんじゃないのかなって。

「人助けできる人」でありたい。

後藤さん

ー最後に、後藤さんを突き動かすもの、原動力について伺わせてください。

格差であったり、お金で苦労するような人たちであったりを、助けていきたい。父と母は消防士と看護師という「人助け」をする職業でした。すごく尊敬しているし、誇りを持っているんです。ぼくも誰かを助ける人になりたい、と。大学時代には国連で働きたいといった考えもあったのですが、起業し、会社をつくることでより多くの人たちの人助けができる。それを実現していきたいですね。

ー ここから目指す先は?

まだまだ走り始めたばかりですが、できることから少しずつやっていこうと考えています。まだ構想段階ですが、『Payme』でいただいている手数料の一部を積み立てられるようしたり、フリーランスや勤続年数の浅い人たちとって退職金の代わりになるような仕組みにできないか模索中です。

ほかにも、奨学金に変わるお金の仕組みもつくりたいですし、まだまだやりたいことがたくさんあります。いずれにしても、携わる人たちが幸せになるようなカタチでお金をまわしたい。そして、いつかは資金の偏りによる機会損失のない世界を創造したいなと思っています。

(おわり)


文 = まっさん
編集 = 白石勝也


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