2016.08.24
勝てるプロダクトの裏側公開!ペロリ 中川綾太郎×エウレカ 赤坂優×フンザ 笹森良

勝てるプロダクトの裏側公開!ペロリ 中川綾太郎×エウレカ 赤坂優×フンザ 笹森良

ゼロからプロダクトを生み出し、作り上げてきたペロリ、エウレカ、フンザの創業者たちが集結!プロダクトを作り、成長させるために必要なスキルや考え方、メンバー集めに関するメソッドなどが語られた、その内容をレポート。

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ペロリ×エウレカ×フンザの創業者が登場

当然ながら、ゼロからプロダクトを作り、成長させるのは簡単ではない。メディアに登場し、眩しく微笑む創業者たちも、それまではただ淡々とプロダクトの成長のために尽くす日々を送っていたりする。

今年8月上旬に行われた、ペロリ主催のイベント「peroli night #1」では、「ゼロからプロダクトを生み出した創業者によるパネルディスカッション」と題して、エウレカの赤坂優さん、フンザの笹森良さんが登壇。モデレーターは、ペロリの中川綾太郎さんが務めた。

中川さんが「プレイヤーっぽくて現場感覚があり、事業やサービスの作り方を知っている人。かつ、インターネットが好きな人の話を聞きたかった」として3名の登壇が実現。和気あいあいと進んでいくトークの中には、ゼロからプロダクトを作り、成長させるためのヒントが詰まっていた。


[登壇者]
● 株式会社エウレカ(恋愛・婚活マッチングサービス「pairs」を運営)
 共同創業者・取締役顧問 赤坂 優
● 株式会社フンザ(チケット売買サービス「チケットキャンプ」を運営)
 創業者・代表取締役 笹森 良

[モデレーター]
● 株式会社ペロリ(女の子のためのキュレーションプラットフォーム「MERY」を運営)
 創業者・代表取締役 中川 綾太郎

"勝てる領域"で確実に勝負する

フンザ 笹森さん

フンザ 笹森さん

最初のお題は「プロダクトを作り出すときに一番大事にしていたこと、今だから大事だと言えることは?」

これに対する赤坂さん、笹森さんの回答は、ともに「“この領域で勝ちたい”ではなく、勝ちに行くためのマーケットを選ぶこと」だった。

笹森さんは、起業メンバーの年齢やバックグラウンド、そして自分自身に何度起業のチャンスがあるかを考えたとき「これが最初で最後かもしれない」という焦りがあったと話す。

絶対に負けられない戦いだと思っていました。なので、一番大事にしたのはビジョンではなく、勝つことでした。勝てるマーケットを選び、勝てる戦略を作る。CtoCでチケットを売買する「チケットキャンプ」も、マーケットを分析して、競合や関連性のあるデータを1ヶ月以上眺めて、いけると思ってから参入しています。(笹森さん)

上記以外でも、不要になったチケットの売買がTwitter上でやりとりされていて、アプローチすべきポイントがすでに見えていたことも参入の理由としてあったという。中川さんが「CtoCとしては後発だったのでは?」と指摘するように、すでに競合サービスもいくつかあった。しかしチケット売買の分野に関してはまだ参入されていなかった背景が「これなら乗り込める」と背中を押したという。

赤坂さんは、自社サービスを始める以前に受託開発や広告代理業を請け負っており、そこでFacebookマーケティングやUI・UX戦略のノウハウを培った。そして、当時すでに米国で急成長していた”オンラインデーティング”市場に注目し、日本国内で参入することを決めたと話す。

オンラインデーティングサービスはユーザー数が集まらないと、マッチングも回転もしないビジネスです。なので、まずはどこで最初のターゲットである「見込みユーザー」を獲得できるかということを考えました。「pairs」の場合、最もフィットするのはFacebookであり、その「いいね!」を圧倒的に集めることができれば、確実に勝てるビジネスになると思いました。(赤坂さん)

施策もチームも、すべてはKPIのため

ペロリ 中川さん

ペロリ 中川さん

プロダクトの実装機能や新機能のアイデア、改善など、すべて事業の成長に結びついていることが望ましい。とはいえ、具体的にはどのようにして、「やる or やらない」を決めていたのだろうか。

「MERY」の場合、施策としてKPIに直結しないであろう「デザイン変更」をしたことで、ユーザーの直帰率が下がったという。

サイトデザインをピンクから白へ変えたとき、直帰率が下がったんです。関係性を裏付けるものがないのであくまでも仮説ですが、ピンクだと「私向きじゃないかも…」となってしまうユーザーがいるようなんですね。ピンクが好きな人は定着するけど、そうじゃない人は去ってしまうイメージです。白に変えてみたら、よくなったんですよ。(中川さん)

一方で笹森さんは、施策の「やる or やらない」を、楽天勤務時代に培った経験則から判断している。

(デザインの変更を含め)KPIに直結すると言い切れない施策はやらない。なぜなら、自分が自信を持っているところに、開発コストをぶつけたいから。(笹森さん)

笹森さんの判断基準について、イマージュ・ネット勤務時代に同じくECビジネス経験がある赤坂さんも同意する。

サービス作りの思想はECにあります。”カゴ落ち”(ユーザーが商品を選択し、ショッピングカートに入れるが、購入直前のタイミングで買い物を中断すること)や”レジ前コンテンツ”などを重要視しています。コマース概念を持ってサービス作りができるプレイヤーは、”数字ドリブン×施策”というアイデアのベースがある点で非常に強いですね。(赤坂さん)

どのような体制でKPIを追っているのだろうか。当然だが、各々のメンバーが目指すKPIがぶれるとすべてが台無しになる。赤坂さんはツリー型のチーム編成で、そういったブレを防いでいると話す。

プロダクトを頂点として、その下にマネタイズ、グロースハック、キャンペーンといったファネル別のチームがあります。デザイナーやディレクター、エンジニアのメンバーは各チームにそれぞれアサインしています。KPIは頂点であるプロダクトからのトップダウンで各チームに設定しているので、これがブレることは絶対にありません。またさらに、プロダクトのKPIとメンバー個人のOKRが一致するようにもしているので、事業と組織の連動性もあります。(赤坂さん)

これに対して「うちは全然違う」と話すのが笹森さんだ。

うちではエンジニアチームが1つで、その中でバックログというスタイルを取り入れています。まずみんなでやりたいことを書き出して、ストックします。書き出したものをいくつかのテーマに振り分けますが、中でも優先度が高いのは、売上とSEOです。このテーマに関するものは最優先で進めていきます。優秀なエンジニアは、最優先のタスクからすぐ取り掛かれるようになっているんです。(笹森さん)

「3年後どうなりますか?」と聞く人は、採用しない

エウレカ 赤坂さん

エウレカ 赤坂さん

トークが加熱し始めると、気になるひと言が飛び出した。赤坂さんも笹森さんも事業計画書を作ったことがないという。事業計画書こそ作ってはいなかったが、数字を細かくチェックしていた、と中川さんは話した。

笹森さんいわく「セールスチームによって売上が大きく変わるBtoBでないかぎり、事業計画書はいらない」とのこと。CtoCの場合、細かい計算式による見込みは立てられるものの、数値の伸び方は予想できないからだ。これには、赤坂さんも同意していた。

KPIの因数分解は絶対にやったほうがいいけれど、事業計画書は不要です。特にCtoCの伸び方は、0か100か。0だったらずっとフラットだし、伸びればどこまでも伸びます。面接などで『3年後、どうなりますか?』と聞いてくる人は、センスないな…と思って採用しないですね。(笹森さん)

では、ディレクターやプロデューサーを採用するとき、どういったポイントをチェックしているのだろうか。

どこまでハードワークに耐えられるのか、「ガッツチェック」しています。ハードワークに対して愛がないプロデューサーは、成功確率が低いと思っているからです。また、面接中にスマホを見せてもらい、どのようなアプリが入っているかもチェックしています。単に人気アプリが入っているだけでは、視野の狭さや引き出しの少なさを感じてしまいます。「USのアプリランキング、1から100まで全部見てます!」ぐらいのプロデューサーを求めたいです。(笹森さん)

赤坂さんは、選考の初期段階でスマホの中のアプリをチェックすると話す。

「インターネットが大好きなので、この業界に来ました。」と言っているのに、自分が使うアプリしか入っていないことがある。そうすると、その言葉の信用性はなくなりますよね。あとは、一緒に飲みに行くこともあります。お酒の場だと、面接の時よりもリラックスしやすいので、より自然な姿になる。そこでの発言や振る舞いから、人として信頼できるかどうかを見ています。(赤坂さん)

パネルディスカッションの様子

最後に改めて赤坂さん、笹森さん、中川さんの共通点を挙げてみると次のようになる。

・ゼロからプロダクトを作り出した
・現場感覚がある
・M&Aにより事業売却している
・インターネットが好き

今回のイベントを通じて、一番強く感じた共通点は「インターネットが好き」だった。生みの苦しみもハードワークも、そのほかで起こる「Hard Things」も、プロダクトを成功へ導く根底には「インターネットへの愛がある」と言っても過言ではないのかもしれない。

(おわり)


文 = 福岡夏樹
編集 = 大塚康平


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