2016.10.12
「MERYらしさ」をデザインする。タカヤ・オオタが開拓する、CIデザイナーという生き方

「MERYらしさ」をデザインする。タカヤ・オオタが開拓する、CIデザイナーという生き方

CIデザイナーという職種をご存知だろうか。CIはコーポレートアイデンティティの略。企業やプロダクトのブランドをデザインで体現していく存在だ。デザイン事務所で活躍してきたタカヤ・オオタさんは、なぜ、ペロリでのCIデザイナーの道を選んだのか?そこにはデザイナーとして成し遂げたい想いがあった。

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MERYブランドロゴを手掛けたCIデザイナー「タカヤ・オオタ」とは?

MERYのTVCM

オシャレに敏感な女子から絶大な支持を得ている「MERY」。アプリのダウンロード数は600万を超え、10月1日から、小嶋陽菜を起用した第三弾TVCMを放映するなど、いま成長著しいキュレーションプラットフォームのひとつである。

そのMERYを手掛けるのがペロリだ。同社の特徴はクリエイティブ。少数精鋭のデザインチームを有し、メンバーの中に「CIデザイナー」がいる。

CIデザイナーとは、コーポレートアイデンティティ(CI)をデザインで体現していく存在。企業やサービスの特徴と個性を、一貫したイメージとしてユーザーに伝えていくことがミッションだ。タカヤ・オオタさんもその一人。彼は、現在のMERYのロゴデザインを担当した人物でもある。

MERYロゴ

タカヤ・オオタさんはデザイナーを志したきっかけをこう振り返る。

大学に入るまでデザインにほとんど縁がない生活をしていました。大学でフリーペーパーの制作サークルに誘われ、そこでデザインと出会いました。「自分で何かを作る」ということに魅力を感じたというのもあるのですが、何よりそのサークルに美人な先輩がいたんです(笑)こんな美人な先輩がいるサークルに入れば大学生活も楽しそうだなあ…と軽い気持ちで入部しました。あの先輩、今なにしてるかな…。

意外にもデザイナーを志したきっかけは少し不純(?)だったそうだが、そこからどんどんデザインにのめり込み、大学生活は一変したそうだ。

いざデザインを始めてみたらおもしろくて仕方なかったんです。自分が考えていることをデザインすると、さまざまな形で受け取られるんです。それは意図した通りのときがあれば、そうではないときもあって、こんな風に世の中に関わることができるんだ、と驚き興奮したことを覚えています。大学を休学しちゃうくらいのめり込んでいきました。ベンチャーでデザインを手伝ったり、個人でデザインのお仕事を引き受けたり、デザインに夢中の4年間でした。そこで手応えがつかめたので、デザイナーとして生きていこうと決心しました。

大学卒業後、タカヤ・オオタさんが選んだのはデザイン事務所で働くこと。若いデザイナーが多く在籍し、たくさんの刺激を受けたそう。そして巡りあったのがロゴデザインの仕事だ。

僕はロゴって「企業」「サービス」などいろいろな側面を持つ対象のイメージを、一番印象付けるものだと思っているんです。複合的な意味を持った漠然とした対象を一つの意図にまとめる。難しさはありますが、伝えられた時のインパクトは大きい。これは楽しいぞ、と思いました。

彼のロゴ制作におけるプロセスはユニーク。ロゴを起点にし、Webやその他のクリエイティブも制作し、広く提案していく手法を取っていた。この手法が「CIデザイン」に繋がったと自身を分析する。このアプローチに共感したクライアントからの依頼が増え、そのひとつが「MERY」のロゴデザインだったというわけだ。

そして、制作会社から「スタートアップの中の人」になった「タカヤ・オオタ」はCIをどう捉えるのか。スタートアップにおけるCIデザイナーとはどのような存在か。その価値と役割、そしてデザイナーにおける新しいキャリア選択の可能性に迫った。


[プロフィール]
タカヤ・オオタ(太田貴也)
株式会社ペロリ CIデザイナー/アートディレクター
1989年生まれ、沖縄県出身。大学卒業後、デザインファームにてデザイナーを務め、現職。ペロリおよびMERYのデザインとブランディングを担当。ポートフォリオサイト : TAKAYAOHTA.com

納品して終わりじゃない。ロゴのその先まで手がけたい

タカヤ・オオタさん


―MERYのロゴデザインは、前職、デザイン事務所時代に担当されたと伺いました。


そうなんです。ロゴ制作の依頼をもらうまでにちょっとしたエピソードがあって。

有川とはもともとTwitterで連絡を取り合う仲で、ある日、彼が「MERYのロゴ新しくしました」とツイートしていたんです。それを見て「次のロゴは僕がデザインさせてください」とメンションを飛ばしました。その後も3カ月に1回くらい定期的にツイートしていたんです。

冗談半分だったんですけどね (笑) でもMERYのロゴデザインがやりたかったのは本当だったので、声がかかったときには驚きました。


―なぜMERYのロゴをデザインしたかったのですか?


当時、インターネットのサービスの中でもMERYの成長はめざましく、また非Webの領域にも展開していることに魅力を感じていました。女性向けのブランドのロゴデザインは未経験だったというのも理由のひとつです。ロゴデザインの背景についてはスライド資料を見ていただければと思います。

タカヤ・オオタさん

MERY ロゴの制作背景・思いがまとまったスライド資料

ロゴを愛する者にとって「CIデザイナー」は天職


―MERYのロゴを完成させた後、ペロリへの入社を選んだのはなぜですか?


デザイン事務所で働いているうちに自身の制作手法や、デザイナーとしてのキャリアに対する課題も見えてきました。ロゴを作るのはすごく楽しいけれど、1つの企業やブランドの価値がどのように変化していくのか、より深く関わってみたいと思ったのです。ロゴは3年、5年、10年…と、他のクリエイティブと比較して長い期間使われることが多いです。その間に市場の様子は変わりますし、企業やサービスのイメージ、事業も変化していきます。

その変化の中で、企業やブランドの未来を先読みし、ロゴを打ち出すことで導いていかなければなりません。自分がデザインしたロゴが中長期的にはどのように使われていくのか。ブランドがどのように成長していくのか。これらと向き合うために事業会社に身を置いてみたいと考えるようになりました。


ー制作会社が手がける場合では中長期的な対応が難しいのでしょうか?


発注する事業会社側としては、コストやスケジュールの兼ね合いもあり、基本的にはスポットでの依頼になります。

本来であれば、デザインは流動的なもの。時代やニーズ、戦略に応じて一部変えたり、あえて変えなかったりするべき。常にその時その時のベストなデザイン、ブランディングを行い続けていく。そう思うと、どうしてもスポットの依頼では限界があって…ざっくり言うと長い目でみた時の「らしさ」を担っていきたかったんです。

事業会社へ転職するなら、会社もチームも若く勢いがあり、サービスが伸びていて、社会的なインパクトが大きなところが良いと思っていました。また、担当したロゴを延長線上で見ることができるため、ペロリへの転職を決めました。

元クライアントへの転職なので、関係性などたまに心配されるのですが、転職の際には前職の代表ともたくさん話をしました。デザイナーとしてのキャリアについて相談させてもらいましたし、温かく送り出してくれて、本当に心から感謝しています。きちんとした仕事をして「あいつ、がんばってるな」というところも見せていければと思っています。

「CIデザイナー」の定義、ロールモデルをつくっていく

タカヤ・オオタさん


―インハウス、しかもWebで「CIデザイナー」をポストとして設けているチームは多くないですよね。なにをする存在なのでしょうか。


主に社内外でのロゴの使われ方や、さまざまなクリエイティブのトーン&マナーの管理を担当しています。世の中に出ていくペロリとMERYの全てのクリエイティブに対して、一貫した意思と意図を通していくことが僕のミッションです。

ただスタートアップということもあり、「CIデザイナー」の領域が明確に定められているわけでもありません。Webだけではなく、印刷物やステーショナリーグッズなど、あらゆるタッチポイントのデザインを担当しています。

たとえば、今年の8月と10月に雑誌を発売したのですが、その際にアプリ内のコンテンツでもこれまでよりもリッチな体験を提供する取り組みをはじめました。現在、MERYでは社内にカメラマンやエディターを専属させることで、オリジナルのコンテンツにも力を入れています。そのようなコンテンツは、写真が見栄えるようにレイアウトを組んだり、アニメーションを入れたり、デザイン面でも読者の心に響くフォーマットで届けたいと考えました。このような新しい取り組みは「読者にMERYを愛してもらえるにはどうすれば良いか?」という考えが起点となっています。

僕個人としてはMERYのブランドストーリーを作りたいという想いを持っています。ロゴとクリエイティブを通じて目には見えない想いを伝えていくのです。点と点をきちんと繋げて連続性を持たせることで、ブランドはより強固な力を持てると信じています。デザインするにあたって思想やストーリーを大切にするデザイナーは、CIデザイナーという仕事に向いているかもしれません。自分が制作したロゴが、世に出た後にどのような役割を担い、どのように見られるのか、観察や検証ができるのも楽しいです。 CIデザイナーの役割を開拓する存在になっていきたいですね。

デザインで「見えない想い」を伝えていく

タカヤ・オオタさん


―お話を伺っていて、MERYはオオタさん自身であり、また運営しているペロリみなさんが届けたいストーリーそのものなのではないか?そんな風に感じました。


それはちょっと大げさかもしれませんが…確かに似た側面はあるのかもしれませんね。

前提として、ブランドイメージは人に見られて形成されていくものだと考えています。そのイメージに寄り添っていくのも大切ですが、同時に自分たちが持っている「企業やサービスに対する目に見えない想い」を伝えていきたいと考えています。

MERYは、Webメディアとしてだけではなく、雑誌やコマース、企業とのコラボレーションなど、どんどん新しい領域にチャレンジしています。MERYのロゴも、Webだけでなく、雑誌やグッズ、テレビ、店頭展示など、さまざまなところに登場しています。

これまでのMERYはキュレーションプラットフォームという性質上、「MERYらしさ」の大部分はキュレーターによって形づくられてきました。これからは、この空気のように存在する「MERYらしさ」をプラットフォーマーとして自らの意思も込めて発信していきたいです。

じつはいま、ブランディング室という今春新設された部門を兼務しています。ブランディング室ではペロリやMERYが世の中からどう見られることを望むのか、他部門のメンバーと協同して戦略的な計画を策定しています。

この計画に基づいてCIデザインチームが動くことで、経営戦略の観点を取り入れた「MERYらしい」クリエイティブを展開していきたいですね。


―CIデザイナーにおける役割の重要性、そしてデザイナーにおける新しいキャリアの可能性に触れることができたと思います。MERYそしてペロリの今後の展開を楽しみにしています。ありがとうございました!


写真提供:本山隼人(ペロリ)


文 = 大塚康平


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