クックパッドのディレクター 松岡大輔 氏。新卒ながらサービス開発部で検索体験の向上や、アプリの機能のディレクションを担当している。ディレクターとして一人前になるために。そして生きていくために必要な技術とは?
※2017年3月に開催された「DIRECTORs' SCRAMBLE vol.1」よりレポート記事をお届けします。
「経験の浅いディレクターはスキルで仕事をしないといけないと思っています。経験豊富なディレクターやプロダクトマネージャーはたくさんいますが、僕は若い方なので経験で勝負したら一生追いつけない。
じゃあ、どうすればいいかというと、サービス開発における価値仮説をうまく言語化できるとか、データ分析がものすごくできるとか、そういったスキルをとがらせて価値を出していく必要があると考えています」
人によって色々なやり方があるが、松岡氏は新たなサービスを生み出す際に、
1,新たなアイデアを考える
2,アイデアを言語化する
3,チームで形にしていく
4,結果を確かめる
というフローで開発を行っている。
コードを書く以外に、ディレクターとして必要なスキルもある。各工程に沿って松岡氏が心得ている大事なポイントが解説された。
新しいアイデアを考えるために、自らに体験をインプットすることが大事だという。自分がどんな体験をして、料理にどんな想いや感情があったか、ということを考えることがアイデアにつながるのだ。
実際に松岡氏は、自分が料理をしたときの思考と行動を記録したそうだ。思考と行動をまとめることで、「自分の場合はこう動くけど、ユーザーの場合はどうだろう」という比較ができるようになり、サービスをつくる際によりリアルなストーリーがつくれるようになるという。
「これは先週の土曜日にカルボナーラを作ったときのものです。13時ぐらいに『お腹空いたな』と思った。そこから思考と行動が始まります。
今から米を炊くのは面倒くさい、パスタがあるからパスタにしよう、卵が冷蔵庫にあったぞと、クックパットで「卵 パスタ」と人気順検索するんですね。ここで始めてクックパッドが出てきて、クックパッドってこういうタイミングでこう使うんだなと、そんな感じで細かく記していきます。
言語化することでけっこう見えてくることがある。無意識のうちに考えていることや行なっていることが意外とたくさんあることに気づきます」
そうやって、見えてきたことから次のサービス開発のアイデアにつながっていく。
「お米を炊くことが面倒だと感じているユーザーに、ごはんのおかずとして検索した食材と同じ食材で作れるパスタのレシピを、代案として提案できるんじゃないかなど想像できます」
続いて松岡氏はアイデアを言語化するテクニックについて語った。
「アイデアは人に伝えるには絶対に言語化しないといけないと思っています。クックパッドではサービスをつくる際には、この価値仮説シートを書きます。『ユーザーは、〇〇したいが、〇〇できないので、〇〇することに価値がある』という一連の流れを記載し、これをどんどんブラッシュアップさせていくんです。これをいかにメンバーに伝わりやすいように書けるかが、ディレクターの腕の見せ所です」
この価値仮説シートを書くことでアイデアがブレることがなくなり、チームの中で伝言ゲーム化することも防げると松岡氏は言う。アイデアを言葉に落とすことで、どう形にしていくかも明確になるのだそうだ。
次に言語化したアイデアをチームで形にしていく際に必要な知識について、松岡氏は続けた。
「技術的な知識とチームメンバーからの信頼がないと、チームが迷走してしまいます。口だけじゃなくて、実際に手を動かす大変さを知ることもサービス開発ディレクターには必要だと思います。
じゃあ、どうすればいいかというと、僕は実際に自力でwebサービスを開発して、サーバを借りて、リリースするところまでを体験しました。webサービスを動かす技術を一度でも触れて使ってみた経験は、実際のチーム開発を進める上でも役に立ちました」
また、チームメンバーからの信頼を得るために、コミュニケーションは”やりすぎ”くらいを意識しているという。
「気づいたらずっとチャットでやり取りしていた、なんてこともあるかと思います。それはあまり良くないと考えていて。せっかく同じオフィスにいるんだからちゃんと顔を見て、信頼できるような環境をちゃんと作っていく。挨拶であったりとかランチとか雑談とかも意識して行なっています」
サービスリリースした後は、実際にどう使われているのかを調べないと意味がない。
「リリースした後はどのくらい使われているのか、どんな人が使っているのか。SQLを叩いてデータを調査分析します。
ディレクターの自分がSQLを叩いて抽出して、データ分析ができるようになれば、エンジニアの手を借りずに、先に次のステップを考えられるようになります」
スキルや知識を身につければエンジニアの工数も削減できるし、信頼関係も得られやすい。ディレクターがスキルを身に付けていくことは、今後さらに必要となっていくだろう。
▼「DIRECTORs' SCRAMBLE vol.1」で、その他の登壇者が語った内容はコチラ
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