AbemaTVの松本俊介氏が登場。多くのアプリ開発者が一度は直面したことがあるだろう「アプリの文言がなかなか決まらない」問題。AbemaTV開発チームでも同様の問題を抱えていたという。その原因はなんだったのか。どうすれば文言は決められるの?
※2017年6月に開催された「UX Failcon 〜先人たちの偉大な失敗と成功〜」よりレポート記事をお届けします。
インターネットテレビ局「AbemaTV」。2016年4月の本開局から約1年4ヶ月で2000万ダウンロードに到達しようとしている。
まさに飛ぶ鳥を落とす勢いで成長を続けているAbemaTVだが、同アプリのUI/UXデザイナーを務める松本俊介氏、とある問題を抱えているという。
「アプリ内の文言が全然決まらないんです……。UI/UXの観点で見れば、すごく瑣末なことに思えるかもしれませんが、個人的には“文言”もデザインの重要な要素のひとつだと思っています。それが決まらないというのは、大きな問題かな、と」
“文言が決まらない”例として、松本氏がイベント内で取り上げたのが、見たい番組の放送開始をプッシュ通知で知らせてくれる機能だ。
現在、この機能は「通知を受け取る」という文言で世の中にリリースされているが、そこに至るまで、文言が二転三転していた、と松本氏は語る。
「実はAbemaTVができてから約1年の間で、文言が3回も変わっているんです。これまでの変遷をたどると、『通知を受け取る→視聴予約をする→通知予約をする→通知を受け取る』ということになっておりまして……。これはデザイナーとして、ものすごく恥ずかしいです」
また、過去の放送を一定期間であれば、いつでも見られる機能「見逃し視聴」の“マイビデオに追加”という文言も、なかなか決まらずにいるという。
“通知を受け取る”という文言と同様に、オンデマンドリスト→オンデマンドに追加→タイムシフト予約といった形で堂々巡りが続いている。
なぜ、文言がずっと決まらないのか——松本氏曰く、この文言が決まらない問題には3つの原因がある、と言う。
1.参考にできるサービスがない
「参考にできるサービスがない、というのが大変なところでした。AbemaTVのサービス自体がすごく複雑。まず、地上波のテレビと同様に時間軸が存在する。それに加え、課金の有無があったり、コンテンツの契約の種類が複数あったりする。さまざまなユーザーステータスが存在するので、文言を決めるのも苦労しました」
2. コンセプトと機能、どちらを訴求すべきなのか
「コンセプトを訴求するのか、それとも機能を訴求するのか。AbemaTVの開発現場では、よくすれ違いが起こります。例えば、現状の“マイビデオに追加”に関しては、コンセプトを訴求しているのですが、そもそもマイビデオが何か分からない人もいる」
「一方で、機能面を重視して“録画する”という文言にしても、実際、録画をしているわけではなく、お気に入りに入れているだけなので録画と言えない。また、“お気に入り”にすると、アクションとしてそそられない。このバランスをとるのが難しい」
3. 文言を管理する人がいない
「AbemaTVには文言を管理する人がいませんでした。ほんと気の向くままに文言を決めていたんです。その結果、文言が定まらないため新機能の開発に手こずる。また、文言を変更した際の影響範囲も大きく、機能がユーザーに定着していきませんでした」
これらの原因を踏まえ、文言管理シートを作成。AbemaTVの機能の文言を決める際に困ったら、文言管理シートを見る。「文言管理シートが”正”だ!」という環境づくりに取り組んでいるという。
「神経質な人が文言管理シートを作る。そして文言には馴染みのある言葉を使う。この2つがいい文言をつくっていくために必要なことかと思います」
(おわり)
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