自撮りをアップしたり、恋人とのラブラブ動画をアップしたり…いまどきのティーンにとってネットで日常生活をシェアするのはとても自然なことなのかもしれません。じつは勉強ノートも『Clear』というアプリで共有するのが流行っているそう。そこには大人たちの知らない世界が?!
10代の子たち、とくに中高生の5人に1人が使うノート共有アプリがあることをご存知でしょうか。それが『Clear』です。自分がつくった勉強ノートをアップし、子どもたち同士で「いいね」や「シェア」しあっているそうです。
「とってもキレイなノートですね」
「テスト勉強の参考になりました」
「わかりやすくまとまっててすごい」
いいノートにはこういったコメントがガンガン寄せられるといいます。
いわれてみれば、子どもたちも1人1台、スマホを持つ時代。
授業の音声を録音したり、板書を撮影して画像保存したり、あたり前にやっている子どもたちも。ノートのシェアにしても、もしかしたら「ネットにアップしている」といった感覚さえなく、「自分のノートをたくさんの人に褒めてほしい」「誰かの役に立ちたい」という感覚なのかもしれません。
もしかすると、テクノロジーで勉強のあり方、もっといえば教育が変わる!?
こんなテーマをもとに、今回はアルクテラス社で『Clear』のマーケティングを担当する孫寧(ソン・ニン)さんを取材。ティーンたちのシェアカルチャー&未来の教育について伺いました。
ー 『Clear』すごくおもしろいですね。今どきの子どもたちってすごく自然に勉強ノートをアップするんだなって。私の時代(※取材者:25歳)にはなかったことだと思います。
かわいく踊れた、恋人とラブラブだよ、おいしいケーキ食べたよ…こういうちょっとした日常ってインスタなどにアップしますよね。たぶん「勉強」も同じ感覚。彼ら、彼女らにとって共有しあうものになってきていると感じています。
たとえば、Twitterなどで「テスト勉強、ここまでやれたー」とかアップしている子どもたちもけっこういるんですよね。勉強専用のアカウントを持っていたり。
ー ひと昔前は友だちと図書館にいって一緒に勉強しましたが、それがネット上になったイメージ?
近いかもしれませんね。たとえば、誰かが「この問題の解き方、わかる人いますか?」ってあげたら、チェックして、解説してあげる人もいたりして。
ー 自然と教え合っていくというか。
そうなんですよね。『Clear』でもフォロワーが多い子たちってわかりやすい勉強ノートを自分でアップしている子。あとは得意科目を書いていたり。画像を工夫していたり。
やっぱり誰かの役に立てたらうれしいし、「いいね」がもらえるのが喜びになる。お互いに顔は知らないけど、励ましあったり、助け合ったり、ゆるいつながりのなかでモチベーションを刺激しあい、勉強をしているのだと思います。
◎生物◎
— *しおり*勉強垢 (@p_co_p_ko) 2017年12月3日
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明日から期末テスト( Ö )
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頑張ります~︎︎︎︎✌︎︎︎✌︎︎︎︎︎✌︎
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初日は生物*̣̩⋆̩*
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ー 大人たちからすると「勉強ノートは自分で取るもの」「勉強はひとりでやるもの」という価値観もある気がします。友だちとノートを共有するのは、けしからん!と(笑)
たしかにそういう見方もあるかもしれません。ただ、テクノロジーによって子どもたちの価値観は変化し続けています。何かを学ぶ、面白がるきっかけが増えているということ。
『Twitter』や『Clear』で勉強の進捗を報告したり、いいねしたり、シェアしたり、これが前提にある社会を生きているんですよね。
べつに子どもたちが勉強をしなくなっているわけではありません。むしろお互いに教えあって、わからないところをネットで質問しあったりしていく。これって素晴らしいことだと思うんです。学びに対して主体的になっているといってもいいかもしれません。これは「先生が教壇に立ち、子どもたちは一方的に授業を聞くだけ」というスタイルからは考えられなかったことですよね。
じつは2020年に文科省主導で「教育改革(*)」が実施され、従来型の教育に「生徒たちが相互に学び合う学習」形式も採用されていきます。子どもたちがインターネットを通じて自然とやっていたことに、国の方針が追いついてきたといえるかもしれません。
(*)... 学習指導要領「生きる力」|文部科学省
ー もうひとつ注目したいのが 『Clear』が世界でもヒットしていること。台湾、タイ、中国、インドネシアと規模を拡大し、ユーザー数が増えていると伺いました。使われ方は一緒ですか?
けっこう国によって違うんですよね。調査からわかっているのは、たとえばタイだと、Q&Aの機能ってほぼ利用されません。ただ、みんなすごく「いいね」を活用してくれています。
一方で台湾だと、Q&A機能のほうがたくさん使わていて、回答率も高いんです。すごくおもしろいのは子どもたちのやりとり。「この問題がわからない」と丸投げするのではなく、「ここまではわかる。この先がわからない」など、どこまで努力をしたか、ちゃんと伝えていれば伝えているほど返信も多くなります。そう考えると、台湾の子どもたちはSNSでのコミュニケーションに慣れているといえるのかもしれませんね。
このように国によって使われ方がぜんぜん違うのは、すごくおもしろいですよね。世界的にも教育がどうあるべきかと考えるきっかけにもなる。なので私は実際に足を運んで、世界をめぐり、アプリを使ってもらい、課題を探っていきたいと考えています。
― 孫さんのお話を伺っていて、世界規模での教育について考えられている視点もおもしろいと感じました。単にアプリを広めたいというわけではなく。
そうですね。『Clear』ってすごく大きな可能性を秘めていると感じていますし、いずれは世界的な教育格差をなくすということを目指しています。私はネットこそが、そんな未来へのキーファクターになると思っていて。
― 世界的な教育格差というと?
たとえば、タイは教育格差がすごくある国だと言われています。まだまだ学校に行けない子も多くいる。公立学校に行くことができる子どもたちでも、受けられる教育レベルは決して高いものではありません。
一方、エリート家庭に生まれた子たちはインターナショナルスクールに通い、英語が話せて、ハーバードやスタンフォードなど海外の大学を目指す。優秀な人材が海外へと行ってしまう。
ただ、4G回線でネットが普及したことにより、多くの子どもたちがスマホを持つようになりました。スマホさえあれば、エリート学生たちのノートを 『Clear』で見ることができます。高いレベルの勉強に触れられる、そんなきっかけになると思っています。
― なぜ孫さんは教育の課題を解決したい?
私が生まれた台湾にも似たような教育格差があるんですよね。私は都市部で生まれて育ったので、一定レベルの教育が受けることができました。ただ、私が高校生だったとき、田舎の学校にボランティアで行ってすごくショックを受けたんです。授業のやり方がぜんぜん違った。レベルも決して高いものとは言えませんでした。
大学へ行ってからも「教育」には関心を持ち続けていました。偶然、アルクテラスに出会ったとき「まさにこれだ!」と思いました。
― 最後に、今後の目標について教えてください。
いろいろなEdTechサービスが出てきていますが、私たちはネットやアプリをつかい、自主学習を支援したいと思っています。子どもたちが自分たちの可能性を広げていける、そんなインフラをつくっていきたいですね。
(おわり)
文 = まっさん
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