もう、履歴書がいらなくなる時代がくるかもしれない――。透明性の高い人材評価によって、転職や社内移動でのミスマッチをなくす。そんな世界観を目指すのが、『SKILLCOIN』だ。活用するのはブロックチェーン技術。『SKILLCOIN』、その仕組み、構想とは?
『SKILLCOIN』は一言で表すならば、「みんなからのお墨付きがついたLinkedIn」のようなサービスになる。
LinkedInをご存知ないかたに説明すると、職務経歴や保有スキルを登録しておくと、企業からのオファーや知人からのコンタクトがくる。そこが転職のキッカケになることもあるサービスだ。
『SKILLCOIN』がLinkedInと異なるのはブロックチェーンを技術を活用したサービスである点。職務経歴やスキルなどの情報はすべて暗号化されブロックチェーンに記帳される。自分をよく知る人物など正当な情報かを判断できる第三者による承認を得てはじめて情報の登録ができる。あとから改ざんはできない。
同サービスを開発運営する株式会社SKILLは6月4日に法人設立したばかりのスタートアップ。代表取締役社長兼CEOの水谷友一さんに、話を伺った。
[プロフィール] 株式会社SKILL 代表取締役社長兼CEO 水谷友一
2000年大手電機メーカーに入社。ポータルサイトや検索エンジンなどのサービス開発、新規事業立ち上げを多数経験。2013年インターネット事業会社に移籍し複数サービスの横断的なUX改善を担当。現在は、新規事業部門にてPOとして活躍しつつ、同部門マネージャとしてジュニアの育成にも取り組んでいる。
ユニークなのは、「リファレンス機能」によって信憑性の高い情報を集めることができる点だ。
リファレンス機能とは、ある人物を知る第三者が記載内容が真実であることを保証する仕組み。ユーザーはプロフィールを作成し、保有するスキルや職務経歴を記述する。そのスキルに正当性があるのか、他者からの証明となる”承認”をしてもらう。承認された情報はブロックチェーンに記帳され、後から改ざんすることができない。
アメリカではリファレンスチェックというものが一般に浸透している。選考中の転職者の前職にコンタクトを取り、申告された職務経歴の裏付けをとる。これは手間もかかるし、求職者は現職に内緒で選考を受けている場合も多い。情報の正当性を確かめるためには必要だが、なにかと不都合が生じる。このリファレンスチェックの役目も『SKILLCOIN』は代替してくれる。
書き換えができないということは嘘がまったく通用しないようになる。つまり「あれは俺がやった」のような嘘や”盛って”過大評価をする人は淘汰されていくことになるだろう。「スキルはあるのに控えめな人には強い味方になるはず。正当な評価システムを導入することで皆がちゃんと実績を出すよう努力するようになる。その努力が報われる世の中になると良いですね。そしたら自ずと社会全体の生産性が上がる」と水谷さんは話す。
また、第三者による「承認」が『SKILLCOIN』成立するための要だ。第三者ユーザーの協力を得るために、トークン発行というカタチで「報酬」を提供する。
正当な評価をあつめるために、報酬としてトークンを発行する予定。企業から参照手数料がプラットフォーム側に支払われることによってコインの流動性が発生する。そうすれば評価者に分配されたトークンにも価値が発生する。『SKILLCOIN』を中心とした経済圏ができたとすれば、買い物をすることも可能になる。
『SKILLCOIN』の世界観が実現すれば、転職市場に破壊的イノベーションがもたらされるだろう。
従来の人材紹介市場では、仲介業者(転職エージェント)によって人材情報が管理されていた。『SKILLCOIN』によって実現される人材市場は、ユーザー同士で評価や承認がなされる分散型(非中央集権型)の管理構造になる。
それに伴って収益構造も変化する。人材を採用すると仲介業者に支払われる仲介手数料が不要になる。企業はコストを抑えて適切な人材を確保することが可能となり、求職者は転職一時金の受け取りや給与の向上などといった恩恵を受けられることが予測できる。
現在、CoinExchange.io、Stocks.exchange、MERCATOXに上場している『SKILLCOIN』。3月にプロジェクトを発足し、わずか3ヶ月でCoinExchange.ioに上場している。また、6月4日には法人登記も完了している(株式会社SKILL)。
2018年内にも実証実験のスタートを計画している。プロジェクト発表直後より、既に複数の企業やVCから声がかかっているとのこと。登録する情報や公開権限など、具体的なサービス内容については現時点では公開されていないが、翌年には人材マッチングサービスをローンチする予定。着実に実現へと歩みを進めている。
「『SKILLCOIN』は職歴のライフログを作るようなイメージで、頻度高く更新される存在になればいい」と水谷さんは話した。
従来は、転職活動をはじめるときにあわてて履歴書や職務経歴書を用意する必要があった。数年あればアピールできる経歴はたくさんあるはず。振り返ってまとめるのも面倒だ。『SKILLCOIN』なら、1〜3ヶ月程度の短いスパンで職務情報を更新。その情報をみればすべてがわかる。履歴書や職務経歴書を作成する必要すらなくなるかもしれない。
また、同仕組みは社内評価システムとしても活用できる。社内での活動履歴がそのまま職務経歴となり、それが他の会社に転職してもシームレスにつながる。
『SKILLCOIN』誕生によって人材市場はどう変化するのか。また、ブロックチェーン技術を活用した新領域のサービスも増えていくはず。注目していきたい。
文 = 大塚康平
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