2018.08.16
ラブグラフ 村田あつみの新人時代ーー「嫉妬心」を原動力に

ラブグラフ 村田あつみの新人時代ーー「嫉妬心」を原動力に

「同世代への嫉妬が私の原動力でした」こう語ってくれたのは、ラブグラフ の村田あつみさん。いまスタートアップ界で存在感を放つ彼女は、もともとデザインとは無縁の文系出身。なぜ業界で名が知られるようになったのか?その軌跡を辿ってみたい。

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【連載】ぼくらの新人時代
「新人時代をどう過ごしていましたか?」テック業界のトップランナーたちに、こんな質問を投げかけてみる新企画がスタート。その名も、「ぼくらの新人時代」。知識もスキルも経験も、なにもない新人時代。彼ら彼女らは”何者でもない自分”とどう向き合い、いかにして自分の現状と未来を定め、どんなスタンスで学んできたのか。そこには私たちにとって重要な学びが詰まっていた。

「同年代の活躍が羨ましくて仕方がなかった」

いつになったら 、一人前になれるんだろう?

この仕事をはじめて3年目、そんなふうにちょっとした焦りを覚えることがあります。

今までやってきたことは自分の身になっているんだろうか。
このままでは、仕事は任せてもらえないんじゃないか。
同世代は活躍しているけれど、自分は...。

モヤモヤと考えているとき、このツイートが目に飛び込んできました。

デザイナーのなり方がまとめられたこの投稿は、6,000リツイート超え。Twitter 公式モーメントにもまとめられて、多く人たちに共感と勇気を与えていました。

投稿主は、デザイナーの村田あつみさん(26)。出張撮影サービス『Lovegraph(ラブグラフ)』のCCO(Chief Creative Officer)として、デザイン・クリエイティブディレクション・ブランドマーケティング戦略を担当し、その他にもデザイン講座の講師としても活動しています。

今でこそ、「クリエイティブディレクター」 という肩書きで活躍する彼女。しかし、もともとはデザインとは無縁の文系出身の大学生でした。周りにデザイナーを志す人がいないなか、

大学2年生のときに、スタートアップにデザイナーとして入社。念願のデザイナーへの切符を掴んだものの、その道は決して平坦な道のりではありませんでした。

「同世代の起業家やクリエイターの人たちが活躍しているのをTwitterで目の当たりにして、悔しくていつも泣いていました」

心が折れそうになった新人時代を乗り越えて、なぜ彼女はデザイナーとして成長することができたのか?嫉妬心を成長の糧に変えていくーー彼女の仕事哲学が見えてきました。

自分の感性を過信しすぎない

村田あつみさんの写真

ー新人時代、 未経験からいきなりデザイナーとして働きはじめたと伺いました。最初はなかなか苦労されたのでは?


正直、何から手を付けたらいいのか、さっぱり分かりませんでした。入社初日、名刺のデザインを任されたときは、名刺のサイズ ってどのくらいなのか?Illustratorってどうやって使うのか?基本的なことすら分からなくて、自分で調べるところからのスタート。睡眠時間や家に帰る移動時間も惜しくて、週3以上会社に泊まっていた時期もありました。

どれだけ時間をかけた自信作も、上司にはボロカスに言われて。「ゼロ点」「これくそダサいのわかってる?」 …心の中では「そこまで言わなくてもいいじゃん!」ってムカついてたし、自分自身を否定された気がして傷ついていました。

当時の私は「なにがダサいのか」すら全然分かってなかったんです。文字のサイズも普通なら12ptのところを平気で18pt使ってしまったり、 配色も自分の好みで選んでしまったり。課題解決のために最適解のデザインをつくらないといけないのに、自分の好きなイメージを形にすることがデザインだと勘違いしていました。

村田あつみさんの写真デザイナーとして働きはじめた大学時代の頃

上司からフィードバックを受けるなかで、今の自分のダサい感性に頼ってはダメなんだなって気づいて。そこから「なんとなく」つくるんじゃなくて、まずは自分に「美意識」を身に付けるため、徹底的にインプットをするようにしていきました。

たとえば、名刺のデザインをするのであれば、自分がいままでもらった数百枚の名刺をすべて見直してみたり、ロゴ案だったらpinterestで素材を100個集めて表現の幅を広げたり。目の前の1つの仕事をこなす時には、その100倍のインプットがある状態で望むぐらいの気持ちを常に持っていました。その経験を積み重ねていくうちに、なにが良くて、なにが悪いのかの判断を瞬時にできるようになっていきました。

村田さんのオススメ書籍村田さんオススメ書籍:「なるほどデザイン」「ノンデザイナーズ・ブック」

「嫉妬心」は、自分を奮い立たせる燃料になる

村田あつみさんの写真

ーお話を伺っていると、とてもストイックにデザイナーとしてやってこられたのかなと思います。なにが一番の原動力になっていたんですか?


決してかっこいいことだとは思っていないんですが、正直、 他人への「嫉妬」を燃料にしていました。私は誰かに嫉妬している自分がすごく嫌いで。嫉妬したくないからこそ、嫉妬しなくていいような自分に変わろうと思ったんです。嫉妬のまま放って置いたらただの最悪なゴミだけど、嫉妬に火を付けたら最高の燃料になる。そう気付いてから、嫉妬を自分のエネルギーに転換するようになりました。

私は大学時代に関西にいたので、東京で活躍している同世代の学生クリエイターがめちゃくちゃ羨ましかったんです。Twitterで、彼らの作ったサービスが話題になっていたり、取材されてメディアで「気鋭のクリエイター」として取り上げられていたり。それを見て、悔しくて泣いているだけの自分が惨めだし、すごくダサいなって。そんな自分が嫌いすぎて、今すぐ自分を変えたいと強く思っていました。

でも、「悔しい」って感じるのは、彼らのことを尊敬していて、自分もそうなりたいと思っているから。おこがましいかもしれないけど、「自分は彼らと肩を並べられるはずなのに」って心のどこかで思っていたんだと思います。

彼らと自分を比べて足りないところを埋めていけば、自分も追いつけるはず。だから、嫉妬する人の「羨ましい」ポイントを手帳に書き出して、自分を変えるためタスクに落とし込んでいたんです。

たとえば、「デザイナーなのにコードもかけるのが羨ましい」とか、「イベントを自分で開催できるの羨ましい」とか、「取材受けてて羨ましい」とか。

漠然と嫉妬するんじゃなくて、嫉妬心を分析してタスクに落とし込んでいく。やりたいことにアンテナを張るようになって、チャンスが巡ってくるようになりました。少しずつならタスクをこなしていける。できることが増えていくと、自分の自信にもつながっていきました。

どうしても心が折れそうになるときもあったので、自分を奮い立たせるために、自分の目につく場所に「嫉妬したくなかったら、自分が完璧になるべし!」って筆ペンでかみに書いて壁に貼っていました。

「やりたいこと」を発信しまくる

村田あつみさんの写真

ー新人時代に、自分のやりたい仕事を必ずしも任せてもらえるとは限らないと思うんです。村田さんは、どうやってそのチャンスを掴んできましたか?


今もそうなんですけど、自分のやりたいことは必ず発信するようにしています。発信することに、2つのメリットを感じているからです。

ひとつは、「声が掛かりやすくなる」こと。自分の担当の仕事じゃなかったとしても、周りの人や上司に「この仕事やりたいです!」と伝えていくことで、「村田さんやってみたいって言っていたし、任せてみようかな」って顔が思い浮かぶと思うんです。

それに、今自分が経営者の立場になって思うのは、「やりたい」って言ってる子にやらせるというのは、人材配置として合理的なことが多いんです。その子の才能やモチベーションが最大化されるし、コミットしてもらえるから結果も最大化される可能性が高い。なので「やりたい」って言ってたら、仕事がくるっていうのは、妥当性があります。Twitterで「〜やってみたい!」ってツイートするだけでも、誰かが見てくれてるかもしれない。新人のときこそ自分から発信したほうが自分の経験に繋がっていくと思います。

もうひとつのメリットとしては、「自分の価値観が明確になる」こと。「自分の心の声」を聞くことが大事ってよく言いますよね。心の声も実は言葉にしないと、自分の耳に聞こえないのです。なので、まずは雑にでも自分の「やりたい!」や「好き!」を言語化する。そうすると、どんどん自分の価値観が明確になっていき、それに従った意思決定ができるようになっていきます。自分の好きに正直な意思決定ができる能力って、つまり幸せになる能力なのかもしれません。


ー自分のやりたいと思うことをまず口に出してみたり、悔しいと思ったことをタスクに落とし込んだり。小さなアクションの実践と継続こそが、自分を変えていくことにつながるのだと感じました。本日はありがとうございました!


文 = 野村愛


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