『ズボラ旅 by こころから』と『ラブグラフ』が共同で新たなプランを開始した。その連携の狙いについて伺うと「今の時代のネットサービスに愛が必要な理由」へと話は展開していった―。
「大切な人と過ごす特別な時間を、写真に残す」
そんな”エモい”サービスが誕生した。
『ズボラ旅 by こころから(以下、ズボラ旅)』と『ラブグラフ』がコラボした記念日向けプラン『ズボラ旅 for ANNIVERSARY』だ。
ズボラ旅を手がける有川鴻哉さんと、ラブグラフの駒下純兵さんに提携の狙いについてを伺った。
すると、「いまの時代のネットサービスに『愛』が必要な理由」へと話は展開していった……。
『ズボラ旅 for ANNIVERSARY』のポイント
1,『ズボラ旅』のコンシェルジュによって記念日のための旅行プランを作成するところから実現するまでのサポートを受けることができる。
2,『ラブグラフ』のカメラマンによる写真撮影が旅行プランにセットで含まれており、旅行先での思い出をすてきな写真に残すことができる。
ー 大切な人と過ごす時間を写真に残す。すごく”エモい”ですね……。最近若い人を中心に、愛や感情をテーマにしたサービスが注目されている気がします。
有川:
たしかにそういった流れがきてますよね。『ラブグラフ』はその波がくる前からエモさに注目していたんだろうなって。
駒下:
そうですね。ぼくたちは「愛」によるエモさですね。これからは、どれだけ自分の人生で「愛」を感じられるかが重要視されていくと考えています。だから、目の前にある大切なものに気づけたり、「愛」を感じられるサービスが求められているのかな。
有川:
なんで”いま”きてるんですかね。
駒下:
テクノロジーの進化によって、人間の働く時間は短くなっていますよね。更にその流れは加速していく。日常の中で仕事以外の時間、つまり余白が生まれていくんじゃないでしょうか。その余白をお金やモノで埋めることは長期的には難しいと思っています。
有川:
なるほど。「愛」って究極的なポジティブ感情というか、ちょっと特殊な感情だと思うんですよね。
見返りを求めてない感情というか……。例えば、アイドルが好きな人ってアイドルのことがめっちゃ好きですけど、必ずしも見返りを求めてるわけじゃない。応援している自分が好きだったり、応援してる対象が頑張っていることがただ嬉しかったり。
駒下:
ある意味、一方通行でもいい…と。
有川:
一方通行だったとしても気持ちを注ぎ続ける。ことってロジックでは説明が難しい。説明できないような感情の究極的な概念は「愛」だと思うんです。それをうまく表現しているサービスが「エモい」と言われてウケている。
駒下:
「愛」って恋愛だけじゃなくて、人を思いやる気持ちすべてだと思っています。
愛って言葉をつかうと重く硬い感じになっちゃいますけど、サービスを作ったり運営する際に生じるユーザーへの思いやりも愛です。ズボラ旅なんてまさにですよね。
CSでチャット対応する人が「そろそろ終わらしたいな」と思って、パパっと簡単に返信して終わらせることもできる。でも、画面の向こう側にはユーザーが居て、その人にとって最高の体験にしてあげたいと思う。その気持ちが最後の1メッセージまでへのこだわりや、さらにもうひと工夫を生み出す。
有川:
おお、めっちゃわかってくれてますね(笑)
「愛」の有無が見透かされてしまうのも、これからのインターネットサービスなのかもしれないです。
ー みんなユーザーのためを思ってサービスをつくっている。とはいえ、感情を強く揺さぶり、人を動かすようなサービスやコンテンツをつくることは簡単なことではないと思います。
有川:
たしかにインターネット的なサービスのつくり方をしていては、難しいかもしれません。
機械的に便利なものをつくろうとしても、いずれコモディティ化していきます。極論、みんなが均質的なものになっていく。そんな中で、どうやって差別化していくかを考えることが重要です。
駒下:
めっちゃわかります。便利なサービスは機能の話なので、仕組みを真似されると同じようなものになりかねないんですよね。大企業が大きな資本を投じて同じようなものを作ったら負けてしまう。
便利だから使われるサービスではなく、好きだから使ってもらえるサービスになることが重要だと思っています。便利よりも先に「好きだ」と思ってもらえた方が愛着が強くなるし。便利さは、好きになってもらった後から追求していけばいいと考えています。
有川:
そうそう。簡単には真似されない、差別化していくための鍵のひとつが「愛」だと思うんです。
愛や熱狂が、これからネットでサービスをつくる上で大事になる。「めちゃくちゃ好き」とか、逆に「めちゃくちゃ嫌い」という怒りでも良いと思います。とにかく強い思いがサービスに集まるかが重要です。
インターネットに接続している人が少なかった頃は、熱量が高い人たちが集まりだすとその様子が可視化されやすかった。その様子を見て「面白そうだな」と思った同じ熱量を持つ人が集まっていく。そんな流れがあったと思います。かつてコミュニティサービスが流行ったみたいなイメージですね。
いまはどうかというと、誰もがインターネットに接続している状態。だから、「好き」を発信している人が多いし、また一口に「好き」と言ってもそれぞれが持つ熱量はさまざま。みんな、どこに自分が求める熱量が集まっているのか、わかりづらくなってしまった。例えば、Twitter上に漫画が好きって言う人が多すぎて、誰が自分の求める”漫画好き”なのかわからない。
サービスをつくる時には、自分たちが「めっちゃ好きだ」と思うものを同じような熱量で思っている人がどれくらい存在するのか、その人たちとどうすれば出会えるのか、を考えることが大事だと思います。
『ズボラ旅』に置き換えると、旅行が好きな人や旅行へ行きたい人に見つけてもらえるよう、一番目立っているサービスであるべき。「旅行に関係するサービスの中で最も熱量が集まってるサービスは『ズボラ旅』だよね」と思われる状態をつくることがすごく大事なんです。サービスの見せ方においても、不可欠ですね。
駒下:
「熱量を持っているのは自分たちだ」ということをより多くの人に広めていくために、「歌詞の意味を調べる人」をターゲットにしてサービスをつくるといいと考えています。例えば、曲のメロディが好きとか、ボーカルの歌声が好きとかは誰かに言語化してシェアしづらいんですよね。
ところが、歌詞やその意味が好きになったとき、歌詞の意味や由来を語りたくなる。知識として知ってる自分が好きになっていったり。どんどん代弁者が増えて、口コミで広がっていく。モノそのものを買う時代から、背景に込められた思いや情報を買う時代になっているのではないかと考えています。
だから、僕はnoteやプレスリリースで発信して、意味を伝えることをめちゃめちゃ大事にしています。「『ラブグラフ』はカップルを撮ってるだけのサービスじゃなくて、幸せの感度を上げたいと考えているんだな」と思ってもらえると一段思考が深くなるというか、「いい会社だよね」と言ってもらえることもすごく増えました。いまは思いを語る意味のある時代だなとすごく思いますね。
有川:
最近すごく考えるんですよね。もうちょっと自分の感情を出して、自分の好きなように語ってもいいのかなって。
駒下:
どうしたんですか、急に…(笑)
有川:
あ、いや……(笑)。
実は、いままで「公共性」をすごく意識していました。僕はもともと感情を見せるタイプじゃないことは確かなのですが、加えて自分を公共物のように捉えて物事を考えていました。仕事するときやTwitterでの発言もそうです。何においても、「こう言ったらみんな喜ぶのでは?」みたい、相手のリアクションから逆算していました。マーケットインな思考ですね。でも、徐々にその行動から得られるものに飽きていて……。
マーケットインな生き方で得られる楽しさって80点くらいだと感じています。そうではなくて、自分の好きなことを好きなように表現して、それが上手くいったら100点だと思えるんじゃないかと思うようになりました。最近は、公共性に対して感情の重要性を感じることが多いんです。
駒下:
なんとなく、わかる気がしますね……。いままでは、「あなたの好きなものなんですか?」って聞きまくって、その答えに合わせて提供するものを変えていくスタンスが定石でした。いまは「この指とまれ」のスタンス。「私はこういうのが好きなんだけど、どう?」と大きな声で言えば、気になった人が集まってくるので、彼らだけに届ければいい。そのほうが熱量が高い人が集まっていいサービスに育っていくんじゃないかと思います。従来の「マーケティングだけでは厳しい」と言えるのかもしれません。
有川:
スタートアップは、いきなり100人中100人に便利と言わせるサービスをつくろうとするべきではないと思います。それよりも、まず100人中10人でも「めちゃくちゃ好きだ」と言わせる方が大事なんだと思いますね。
ー 100人中10人に好きだと言われるサービス、どのようにつくればいいでしょうか?
有川:
サービスに「人格」を持たせることだ重要だと考えています。サービスの色の強さですね。
『ズボラ旅』の場合、サービスを立ち上げたときはすべての運用を人力で始めてみました。チャット対応や旅行プランをつくることなど、あらゆることを人の手でつくっていました。そして、あとからだんだんと機械化できる部分はないかどうか試みています。手づくり感や楽しそうな感じをマックスの状態まで振り切ってみて、それをインターネットやテクノロジーとの掛け合わせによってどこまで便利さを実装していけるかを試しています。
従来のインターネットサービスのつくり方で考えると、まずチャットボットをつくって、そこにどうやって人格を乗せていくのかを考えるのが正しいんですよ。でも僕らは逆でした。真心を込めて、ちゃんと手づくりしていくことをはじめた当初からずっと大事にしています。
他社に追随されないための策でもあります。チャットでの旅行相談をしている企業は実は増えてきている。でも、どこも機械的に対応している感じが強く、味気無さを感じます。それはサービスに「人格」ができていないからなんだと思います。
ー 最後に、今回の提携の狙いを教えてください。
有川:
記念日などの大事な日に、『ズボラ旅』を使ってもらいたいんですよね。旅行って、家族旅行や1人旅、卒業旅行など、いろんなシーンや目的の旅行がある。ただ、「ズボラ」という単語がサービス名にあるので、『ズボラ旅』が記念日の旅にも使えるというイメージはまだまだ足りなかったり…。
ところが実際は、チャットでコンシェルジュと会話しながらひとつひとつ丁寧に旅行プランをつくりあげるので、いわゆる旅行代理店のパッケージツアーよりも、記念日のような大切なタイミングにぴったりなはず。今回の提携がブランド認知を変えてくれることに期待していますね。
駒下:
ぼくらにとっても同じで、旅行で『ラブグラフ』が使えるんだと知ってもらいたい。カップルや家族の写真を撮るサービスとしてイメージが先行していて、まだまだ旅行へいくときに頼んでもらえる数は少ないです。また、写真撮影されることにハードルを感じている人もいるので、気軽さや手軽さというイメージを持ってもらいたいと考えています。
ミレニアル世代の反応をみていて思うのが、「どれだけ手軽か」はめちゃくちゃ重要なんです。これからも、手軽にできることの価値はもっと上がっていくはず。
有川:たしかに、いかに手軽にできるかは重要。カメラマンに写真を撮ってもらう経験ってなかなか無いから、ハードルは高いと思うんです…。でも「旅行の思い出にどうですか?」と提案されるとちょっと軽くなるはず。旅行という非日常に入ってるタイミングなのでカメラマンに写真を撮ってもらうみたいな非日常的なことも受け入れやすい。写真撮られることを嫌がるお父さんでも、旅行のときだけピースサインしてるみたいな(笑)。
駒下:
いますね。そういうお父さん(笑)。
実は、今回の提携の話がある以前から、「旅行先で写真を撮ってほしい」という相談や依頼はたくさんいただいていました。ニーズがあることはわかっています。また、なにかやりたいことを思いついたらすぐにスマホで行動する若い世代にとって、LINEのチャットで問い合わせから予約まで完結できる『ズボラ旅』は強い。
『ズボラ旅』と『ラブグラフ』は最強のタッグだと思っていますので、ぜひ多くの方に利用してみてほしいですね。
文 = 大塚康平
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