2018.11.08
20代で3回のキャリアチェンジ…迷走した新人時代を経て、櫻田潤が見つけた居場所

20代で3回のキャリアチェンジ…迷走した新人時代を経て、櫻田潤が見つけた居場所

「ずっと、足手まといな新人でした」こう語ってくれたのは、櫻田潤さん。じつは、20代のうちに3回の転職を繰り返し、数々の職種を渡り歩いてきた。自分には何が得意なのか、居場所はどこなのか。迷いながらたどり着いたのが、NewsPicksのインフォグラフィック・エディターとして活躍する道。そこには、スキルの掛け算での戦い方があった。

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「僕は足手まといの新人だった」

「どの会社でも活躍とは程遠かった。むしろ”足手まとい”なくらいでした」

こう語ってくれたのが、NewsPicksのインフォグラフィック・エディターとして活躍している櫻田潤さん。インフォグラフィックを用いて情報を咀嚼し、読者とのコミュニケーションをより円滑なものにする重要な役目を担う。

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社外での仕事や講演も数多くこなし、インフォグラフィックに関する本を出版している、まさに”突き抜けた人物”だ。

「今まで、プログラマー、システムエンジニア、ウェブデザイナー、マーケターと、職を転々としてきました。そのほとんどの会社で価値を発揮できなかった。平たく言えば“足手まとい”。これらの経験が『インフォグラフィック・エディター』に繋がっていると言えるのは結果論として。当時はどこに進むべきかわからず、ずっと迷いながらいました」

そもそも最初はインフォグラフィックを仕事にしようとは全く思っていなかったそうだ。

「趣味でできればいいや、と思っていたんです。もし仕事にできるのだったら、メディアとの相性が良いと思っていた。そのタイミングでNewsPicksの佐々木さんに声をかけてもらったんです」

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[プロフィール]櫻田潤|NewsPicksインフォグラフィック・エディター東京生まれ。学習院大学経済学部卒。2010年に企業で働きながら、個人サイト『ビジュアルシンキング』(2018年運営終了)を立ち上げ、インフォグラフィックに関する情報発信と制作を開始。2014年末に『NewsPicks』編集部にインフォグラフィック・エディターとして参画。以後、ビジュアルを活かした記事を多数執筆・デザイン。主な著書に『たのしい インフォグラフィック入門』『図で考える。シンプルになる。』。2018年3月より、オンラインサロンの運営スタート。

50点のスキルでも、掛け合わせたら勝てる

NewsPicksに入社するまで、櫻田さんは仕事で突き抜けることができなかったという。

「プログラマーやデザイナーなど、それぞれ5年くらい経験してきました。そのなかで出会った技術者たちはひとつの領域で150点、200点の価値を発揮していた。自分はなにをやっても50点くらいしか取れない。”凡人”だったと思います。彼らには勝てないなとわかったんです」

そこで櫻田さんはスキルの掛け合わせで勝負することを選択した。

「キャリアステップの方法は二択しかないと考えています。ひとつは、1個のスキルでものすごく突き抜けていくこと。もうひとつは、いろいろな分野で50点くらいを取っていって、掛け算で価値を発揮すること。

例えば、僕がやりたいと思ったインフォグラフィック・エディターは『分析』『編集』『デザイン』という3つのスキルが必要です。NewsPicks入社時には、それぞれの分野で50点、50点、50点を取って、合計150点を狙おうということを意識していました」

スキルの掛け合わせで勝負できると気づいたのは、NewsPicksに入る直前だった。

「1つのスキルで突き抜けるのが無理だということに早く気づいたら、もっと戦略的に掛け算を考えられたはず。ここまで来るのに少し時間がかかってしまいましたね。今は3つ全てのスキルを70点にしようと思って仕事をしています」

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趣味で発信していた個人ブログが転機に

現在「インフォグラフィック・エディター」というこれまでにない肩書きで活躍する櫻田さん。その転機になったのは、2010年から趣味の一貫としてスタートした個人ブログ(*1)。ビジネス書やニュースなどを絵と図解で分かりやすく表現していた。それが当時NewsPicksの編集長だった佐々木紀彦さんの目にとまったのだ。

「絵や図解から始まり、最終的にはインフォグラフィックに。個人の活動は、なりたいものに合わせて計算でスキルをつけるよりも、好きなことを突き詰めてやったほうが良いと思っています」

「好きなこと」はなんでもいいそうだ。例えば、音楽が好きでカルチャー誌や音楽誌に将来的に行きたい場合、音楽の記事を書くとか、ライブに行っていることを発信するだとか、好きなことを明確に掘り下げる。

「そうしているうちに、それが仕事と上手く重なるタイミングがある。我慢して、「やっているけど、本当はやりたくないこと」を増やしてしまうと、何屋さんか分からなくなっちゃうんですよね。だから、できるだけ正直な行動をとる。何が好きかをとにかく明確にしていって、曖昧にしないことが大切ですね」

えらそうな感じでお恥ずかしいですが、と前置きをし、こう語ってくれた。

「時代が自分にそのうち追いつくだろう」みたいな。もちろん勘ではあるんですけれど、そこまで辛抱だ、というところはずっとありました」

※*1…櫻田さんは「VisualThinking」というインフォグラフィックのWebサイトを個人の活動として運営していた。

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やりたくないことを明確に

好きなことを突き詰めるといっても、好きなことが明確になっていない人も少なくない。櫻田さんもそのひとりだった。そこで彼が実践していたのが、「やりたくないこと」をはっきりさせることだった。

「就活をする段階では、自分が何をしたら良いのか全く分かっていなかったんです。でも、やりたくないことははっきりしていた。やりたくないことって世の中にすごく多いと思うんですよね。やりたくないことを明確にしていくと、逆にやりたいことが見えてきました。すると、どんどんやりたいことに忠実になっていく」

4回も未経験職種へ転職した櫻田さん。不安はなかったのだろうか。

「実際に入ってみると、当然なんですが今までやってきたことは全然通用しなくて、みじめな思いをすることもありましたね……。でも、やりたいことを求めて環境を変えるのは、間違いではないんじゃないかと思います。

あと、ゼロから始めることが好きなんです。成長曲線で言うと、最初でガッと上がるあの感じが、すごい好き。デザイナーになったときも「とりあえず飛び込んでみよう」という感覚でした。日々新しいことを学んでいる時間が楽しかった」

未経験は武器になる

何度も新人を経験してきた櫻田さん。そのなかで気づいた、早く信頼を得る方法を教えてくれた。

「基本的なことですが、ミーティングや打ち合わせの場で、わからなくても発言することですね。NewsPicksに入ったときも初回からもやっていて。僕はメディア未経験で、それに対してNewsPicksには編集部があって、新聞や雑誌などメディアのプロがたくさんいるわけです。それでもとにかく発言する、というのは心掛けていました。

プロを相手に億劫になってしまうこともあると思います。ですが相手を気にしてもしょうがない。中身よりも発言するという行為が重要だと思っていて。もちろん中身が揃っていたほうがいいですけどね」

未経験であることは、時に武器になるという。

「未経験の強みは、従来の既成概念にとらわれていないこと。フラットな視点、素人目線を出す、というのが強みですよね。だからそっちに価値を置くべきです。会議上で出ているアイデアに対して、良いと思うかとか、悪いと思うかとか。まずはそれだけでも良いと思います。

既成概念に合わせて発言しようとすると、知識量で絶対敵わないですよね。経験者は階段のように、これまでの知識や経験をもとに積み上げて次のことを考える。でも未経験だと、直感的かつ直接的に考えることができる。変な意見もあるし波もあるけど、経験者の域を超えるときがある。それを何回もやっていると、飛び越える方法を体が覚えていくというか……。そんな価値の発揮の仕方はあると思います。」

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文 = おかだもえか
編集 = 大塚康平


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