NewsPicksの独自コンテンツでも人気を集めるインフォグラフィック。数年前からインフォグラフィックに関する情報発信や書籍執筆を行なってきたビジュアルシンキング・NewsPicks編集部のインフォグラフィックス・エディター、櫻田さんにお話を伺いました。
単なる数字の羅列や質素なグラフではなく、情報を整理し、視覚的にリッチな表現することで、読み手に「理解を促す」インフォグラフィックが注目を集めている。
今回お話を伺ったのは、NewsPicks編集部でインフォグラフィックス・エディターを務める櫻田潤さん。インフォグラフィックスに関する実践と情報発信を続けてきた第一人者だ。
NewsPicks内のシリーズ連載「ネット四天王」「ビジュアルレポートで見る決算」は、アナリストの解説に加え、インフォグラフィックでの表現を柱とすることで、これまでとは全く違うアプローチのコンテンツとして人気を得ている。
また、櫻田氏は個人プロジェクトサイト「Visual Thinking」の運営やWIRED、「助け合いジャパン」のウェブサイトのピクトグラムを手掛けたり、ピクトグラムとハッカソンを掛けあわせたイベント《ピクタソン》の主催、書籍執筆など、インフォグラフィックやピクトグラムの普及、認知拡大に大きく貢献している。
彼がインフォグラフィックと出会った背景や感じている可能性とは?NewsPicks編集部での手応えなどを伺いながら、インフォグラフィックの生み出す価値に迫った。
【Profile】
櫻田 潤 Jun Sakurada
NewsPicks編集部 インフォグラフィック・エディター
大学卒業後、プログラマ、システムエンジニア、ウェブデザイナーを経て2010年よりVisual Thinkingを運営。数多くのピクトグラム、図解、インフォグラフィックを制作。2013年5月『たのしいインフォグラフィック入門』出版。2014年12月NewsPicks編集部にインフォグラフィック・エディターとして加入し、モバイルに最適化したインフォグラフィックの編集・デザインとデザイン関連の記事執筆を行なう。
― インフォグラフィックは、国内でも2013年頃からじわじわと注目を集めているように感じます。櫻田さんはどうやってインフォグラフィックと出会ったんですか?
情報をもう少しスムーズに伝える手段があるんじゃないかという意識はプログラマ、SEとして働いていた時から持っていたと思います。
それから、趣味の一環として2010年から自分のウェブサイトにビジネス書などを図解したものをストックするようになったんです。ある時、海外で「図解」ってなんて言うんだろう、といろいろ調べた結果、ダイアグラムやチャート、そしてインフォグラフィックという概念があることを知って。サイトのドメインVisual Thinkingに変え、よりインフォグラフィックに特化したサイトとして情報発信を続けてきました。
それから書籍を執筆したり、WIREDやいくつかのウェブサイトでインフォグラフィックの仕事を何度かやってきましたが、あくまで趣味の延長で、あまり本業の仕事にしたいとは思ってなかったんですよね(笑)。
というのも、情報発信を続けているとアナリストやPR企業から問い合わせがとてもあり、インフォグラフィックに需要があるというのは肌で感じていたんです。でもバズワード化してある種の一時的なマーケティング手法として消費されることを回避したかったんです。
― そうだったんですね!そんな思いを持っていた櫻田さんが昨年末にNewsPicksにジョインしたのには驚きました。そして2月には国内経済メディアとして初めて、専門のインフォグラフィック・チームを設立されましたね。
編集長を務めている佐々木がVisual Thinkingや本を読んでくれて、連絡をくれたのがきっかけです。NewsPicksで実現したいことや、インフォグラフィックスのチームを立ち上げてどんなチャレンジができるかという話ですごく盛り上がって。
まだ海外でもモバイルやアプリに最適化したインフォグラフィックのコンテンツの事例は少なく、挑戦してみたいと思ったんです。入社してからは、ネット四天王シリーズなどを手がけてきましたが、もともとユーザベースにはSPEEDAという強力な情報メディアがあり、社内に一流のアナリストもいたので、コンテンツを創る上での情報取得にはあまり困りませんでした。この点は、全く新しい経済メディアを目指すNewsPicksの強みだなと改めて感じた部分ですね。
― 経済メディアでインフォグラフィックを用いたコンテンツを出してみて気づいたことは?
ユーザーリテラシーの高さが背景にあるかもしれませんが、煽るような編集・表現は不要だということ、そして情報を絞りに絞ってもコンテンツを理解してもらい、情報に価値付けがきちんと出来るということでしょうか。
今後は編集部側のテキストをなくして、インフォグラフィックだけでコンテンツを提供してみても面白いんじゃないかと思っているんです。判断は完全にユーザーに委ねてみてみる。そこでどんなコメントが集まり、ピックに人気がでるのか、ちょっと興味がありますね。
― これからより一層インフォグラフィックがあらゆるところで活用される機会が増えてくると思います。インフォグラフィックだからこそ果たせる役割ってなんなんでしょう?
3つあるかと思います。まず一つ目は大量に生み出される情報コンテンツの中で、興味を持って気づいてもらえること。次にそのコンテンツの内容の理解を促せること。最後に建設的な反応を得られること。
インフォグラフィックというと、どうしても表現の部分にフォーカスが当てられがち。ですが、一番大事なことはいかに情報を集めて整理できるか。正直な話、小手先のデザインはそこまで難しいものではないんです。
― なるほど。櫻田さんが「インフォグラフィックスデザイナー」ではなく、「インフォグラフィックスエディター」という肩書でいることがわかりました。
まだ手探りですが、NewsPicksのような「場」をデザインする編集者みたいなものですかね。あまりグラフィックのデザインしているという感覚はありません。グラフィックデザインなら、私よりもすごい人はほんとにたくさんいらっしゃると思います。しかし、インフォグラフィックという領域ではデザイン以上に情報の収集と取捨選択が何より重要なんです。
― 櫻田さんの場合、どのように情報を取捨選択していくのでしょうか?
意識しているのは、エクセルのシート1枚で収まりきるかどうかです。あれもこれも情報を出したくなるものですが、提示したいデータのみにフォーカスを当てることを心がけています。このプロセスはインフォグラフィックだけでなく、プレゼンテーションなどに関しても同じことが言えると思います。ちょっと宣伝になっちゃいますが、その辺の話は『シンプル・ビジュアル・プレゼンテーション』という新著で詳しく書いているので、気になる方はぜひ!(笑)
― (笑)。最後の質問です。インフォグラフィックスデザイナーもしくはインフォグラフィックスエディターになれる人の要件を挙げるとしたら、どんなものでしょうか?
デザイナーというよりも、情報を集めて整理して自分なりにアウトプットした経験がある人でしょうか。いろんなソースを元にして定期的にブログを書いていたり、アプリやWEBサービスをイチから作った人などですね。
※掲載時から内容を一部修正しています。(2018年3月13日 CAREER HACK編集部)
[取材・文] 松尾彰大
編集 = 松尾彰大
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