2019.12.11
学生を、絶望させちゃダメだ。NewsPicks発『HOPE』が描く希望

学生を、絶望させちゃダメだ。NewsPicks発『HOPE』が描く希望

若者の未来に、HOPE(希望)を ──。ソーシャル経済メディアNewsPicksから、学生向け新メディア『HOPE by NewsPicks』が誕生した。「ポジティブに社会に参加できる若者を増やしたい」と、編集長の呉琢磨さんは語る。

原点は、未来に夢も希望もなかった若き日の記憶

自分の将来がどうなるかなんて、わからない。
けれど、少しでも手応えのある選択をしたい。
自分で決めた、と胸を張れる生き方を選んで歩いていきたい。
そのために、いま、なにができるだろう。──

『HOPE by NewsPicks』

本田圭佑さんなどが表紙を飾る鮮やかなマガジンをめくると、こんな言葉が綴られていた。

編集長の呉琢磨さんは言う。

「学生向けメディアですが、これを読んでおけば就活がうまくいきます、みたいなお得さはまったくなくて…(笑)簡単に消費されてしまう情報ではなく、社会にポジティブに踏み出せるような“HOPE”を提供したいんです」

激しく移り変わる経済。早期化、長期化する就職活動。学生たちが抱える「社会」への不安は、想像以上に大きいのかもしれない。

「将来に対して希望を持てる学生を、一人でも増やしたい」── その原点にあったのは、呉さん自身の、夢も希望もなかった頃の記憶だった。

2018年に創刊したものを、学生向けにブランニューした『HOPE by NewsPicks』。ユーザーに無料送付するフリーマガジン『HOPE magazine』と、NewsPicksアプリ上に学生ユーザーだけが参加可能な『HOPE online』を開設し、編集部によるオリジナルコンテンツを配信。ラブグラフ村田あつみさん、ワンキャリア寺口浩大さんなど、6人の「HOPEピッカー」が学生に知らせたい情報を曜日ごとにキュレーションしている。

キャリアメディアでも、就活メディアでもない

まず『HOPE by NewsPicks』がどういったメディアか、概要から伺ってもよろしいでしょうか。

前提として、就職活動に役立つお得な情報なんかは何一つ書かれていません(笑)。

『HOPE by NewsPicks』は、キャリアメディアでもなければ、就活メディアでもない。

シーンで言うと「就活に入る前」に読んでもらいたい、入口としての経済メディアかもしれません。「働き方」より、「生き方」のヒントをもらえるような、そんなイメージです。

なので、ビジネスの話もほとんどしていないんです。

たとえば、今回の創刊号では本田圭佑さんと石井リナさん、幡野広志さんにご登場いただいているのですが、お三方に聞いたのは、「あなたにとってのHOPEってなんですか?」ということ。彼らのビジネスには触れていません。

何をしているか、ではなく、「なぜそれをやるのか」という問いにフォーカスする。

彼らは何を見て、何を感じてきたのか。変われたきっかけは何だったのか。彼らのストーリーに触れることで、人生の中で見出した「希望」を疑似体験してもらえたらと思っています。

簡単に消費されてしまう一過性の情報ではなく、自分で選択した行動のきっかけになる。そんなたしかな“HOPE”を提供できたらと考えています。

【プロフィール】呉 琢磨(ご たくま)HOPE by NewsPicks 編集長|高校を中退後、フリーターを経験したのちに編集プロダクションへ入社。カルチャー/ライフスタイル系などの雑誌、書籍編集に携わり、25歳で編集・ライターとして独立。10年以上フリーで活躍し、35歳でニューズピックス(ユーザベースグループ)に入社。自身のことを「NewsPicks低学歴代表」と表現する。

学生には「原動力」が必要だ

最初の創刊から1年と、ずいぶんと時間が経っているようにも思います。

そうですね。もともとHOPEは学生向けでなく「若手社会人向けメディア」として始まったんです。そこから、ある大学生との出会いをきっかけに思い切ってピボットをした経緯があります。

その学生は当時、未来や社会に対してまったく希望を持っていなかった。大学の授業にもほとんど出席せず、遊んでばかりいて。

でもたまたま『HOPE』を手にして、「ビジネスってめっちゃ面白そうじゃん」と衝撃を受けたそう。そこからNewsPicksに興味を持って、1年間ひたすらNewsPicksの記事を読みまくってくれたみたいです。面接でそれについて語ったら、難関大学の学生しかとらないような企業に採用されたと教えてくれました。

すごいですよね。僕自身そのエピソードに大きな勇気をもらって、もう、学生に振り切ってしまおうと。他にも色々なきっかけはあるんですが、創刊から半年後の春には、学生メディアとしてのリスタートを決めました。

夢や希望を持って社会に出たはずの若手が、現実に打ちのめされてどんどん目の輝きを失っていく。最初に『HOPE』を創刊したときは、世の中のそういった課題にアプローチしたいと思っていました。ビジネスは希望を創るんだ、と。

でも、「希望」って多分、憧れや空想ではなく、「現実に立ち向かうための原動力」のこと。若い世代が社会にネガティブになってしまうのは、学生のうちに「社会に出てつらいことがあっても頑張り続ける理由」を見つけられなかったからかもしれない、と思ったんです。

だったら、多少楽天的でも「自分は世の中を変えるんだ」みたいな湧き出るパワーを提供できたほうがいい。そのほうが、現実を突きつけられた後に「でも楽しいこともあるから頑張ろうよ」と言われるより、よっぽど価値があるんじゃないかなって。

リアルで「シェア」する体験を

若者のコミュニケーションがオンライン化しているなか、フリーマガジンという形式にしているのも面白いですね。

ありがとうございます。「紙」は2018年の創刊時からのこだわりでもあります。

紙って物理的なもの。なので「何読んでるの?」というリアルでのコミュニケーションが生まれやすい。そこを意識してデザインもパッと目をひく色味だったり、ビジネス誌っぽくないカルチャーな雰囲気を重視したり。カッコよさを意識しています。

たとえば、職場で隣の人がものすごくかっこいいTシャツを着ていたら、つい「素敵ですね」と話しかけてしまいます。それってたとえばTwitterで「いいね」をもらうより、体験としては強いのかなと。

あと「HOPE magazine」は申し込みをすると同じマガジンが一度に3冊届くんですよね。「自分の好きなものを1冊ピックして、あとの2冊は友達に渡してね」というメッセージがあります。

何かが広まっていくのに一番有効なのって、シェアや口コミ。特に友人だったり家族だったり、知っている人からのおすすめは一番強い。

仲の良い友だちや尊敬している先輩から「絶対役立つから、ぜひこれ読んでほしい。人生変わるぞ」って言われたら、無視はできないはずです(笑)。特に手渡しのシェアって強いと思います。

もちろんFacebookやTwitter、インスタといったソーシャルの活用も進めていますが、こういったリアルでの「いいね」や「シェア」といった体験には、やっぱりこだわっていきたいです。

学生向けに振り切ることを決めてからリリースまでの期間は、約半年。社員4名と、学生インターン4名のスモールチームではじめたという。「学生インターンの力はものすごく大きかったです」と呉さん。まさにHOPEを届けたい世代のリアルな意見や姿勢が、コンテンツを作る上で非常に参考になったと話す。

学生の熱量を高める、クローズドな世界

今回のリリース後、学生の反応としてはいかがでしょう。

『HOPE online』には、いま1万人弱の学生が登録してくれていて。数的な手応えとしてはまだまだですが、コミュニティ内の熱量としては、すごく高いです。

とくに記事に対するコメントの多さを感じます。記事を読んでどう思ったか熱く語ってくれる学生がいたり、新たな議論が生まれたり。学生たちが熱心にコメントをしてくれる。ものすごくうれしいです。

本体のNewsPicksでは、学生がのびのびコメントしている姿はあまり多く見られません。おそらく、大人のシビアな視線にさらされることに懸念があるから。

各領域のプロの方々もたくさんいるから、ヘタなことを言えない。指摘されたらイヤだなって、ハードルが高くなってしまっている。他のSNSと比べて、学生が自由な意見を言いづらい雰囲気が若干あるんです。

NewsPicksにおいてそういった課題もあるので、学生が積極的に意見を発信できるコミュニティになれているのは良かったなと。

学生しか入れないクローズドな環境だからこそ、ビジネスに対する学生の熱量が高くなる。これは新しい発見でしたね。

自堕落だった若い自分に読ませたい

最後に、呉さん自身の原動力、「HOPE」は何かお聞きしたいです。

そうですね、自分の中ではいま「若い頃の自分が出会いたかったもの」を作っている感覚があって。

僕、二十歳くらいの頃って、ホントに狭い世界にいたんです。情報も機会もなく、日々の仕事をこなして生きること以外に何も知らなかった。やりたくもないのにひたすらパチンコばかりしてました(笑)。

ビジネスに対しても、「結局、お金儲けでしょ?」みたいなイメージを持っていて。社会人に対するリスペクトを感じたことなんてなかった。

当時の自分が、もっと仕事を楽しいものだと思える情報に出会っていれば、何か変われたんじゃないか。たまに、そうと思うときがあるんです。

だから、あの時の自分が読んだらヒリヒリするような、居ても立っても居られなくなるようなメディアを作りたかった。

新聞で見るような経済の難しい話や、一部の成功者の話は遠すぎる。育った環境や学歴に関係なく、自分のような「普通」の人が読んでも、この先の将来にワクワクできるものを。

現在のNewsPicksは、所謂ハイエンドなビジネスパーソンの方々に多く使っていただけていて。それはとても嬉しいのですが、もし自分が学生の頃に存在していたとしても、たぶん僕のもとには届いていなかったと思うんですよね。

『HOPE』をNewsPicksから別のブランドにしたのも、そのためです。NewsPicksだけでは届けられなかった層にも、ちゃんと届くように。

いい情報と、いいきっかけがあれば人は変われる。そしてその出会いは、早ければ早いほうがいい。僕なんて、35歳でNewsPicksと出会って、ようやく変われましたから(笑)。

今回のリリースはβ版で、正式なリリースは、来年の春以降を予定しているそう。今年中にマガジンの配信やイベントの開催をやり切ってユーザーの反応を確かめ、その結果をもとに年明けからコンテンツをブラッシュアップ。新学期のタイミングで正式リリースを迎えるという。「まず走り出したという段階ですね。やはり一部の人じゃなく広く学生に届けたいので、登録制ではないやり方なども模索中です」と呉さんは教えてくれた。


取材 / 文 = 長谷川純菜


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