2018.12.05
「響」「BOSS」…サントリーの30年以上愛されるブランドづくり

「響」「BOSS」…サントリーの30年以上愛されるブランドづくり

サントリーのウイスキー「響」、缶コーヒー「BOSS」デザイン誕生の裏側を公開。語ってくれたのは、サントリーのクリエイティブディレクター 古庄章子さんだ。そこにあったのは「30年以上愛され続ける商品デザインの考え方」だった。

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サントリー「響」ロゴ開発のウラ側

サントリー「響」ボトル

サントリーの代表作である「響」。白い和紙のラベルに筆で書かれたロゴはいかにして誕生したのか。

「『響』は1989年にサントリーの創立90周年記念として作られたブレンデッドウイスキーです。”人と自然と響きあう”という企業理念からこの『響』が誕生しました。響は日本文化を表現したウイスキー。だからロゴは筆文字を採用しています。書家の荻野丹雪氏さんに書いていただきました」

世界に「日本のウイスキー」として売り出していくために、漢字一文字だった『響』のロゴデザインはさらにリニューアルすることになる。

「2004年くらいから、日本のウイスキーが世界で認められるようになっていきました。そんな中、ラベルの真ん中に”響”と漢字だけで表記されていた当時のデザインでは、海外の方にはなんと読めばいいかわからない。そこで、現在のラベルのようにローマ字にてブランドロゴの「HIBIKI」をメインに。筆文字を並列させたデザインに刷新することにしました。

ローマ字ロゴには時の重みや味の深みを感じさせるロゴでなくてはならない。そこで、ヨーロッパ文化圏の人から見ても、深みと古典的なバランスをもった、ローマのアッピア遺跡の石碑からヒントを得てロゴを開発しました」

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古庄章子|サントリーコミュニケーションズ デザイン部 クリエイティブディレクター

ボトルデザインで『響』の”らしさ”をつくる

続いて、『響』のボトルデザインについて。サントリーでは、古くからある「和魂洋才」という考え方を大切にして製品がつくられている。

「西洋文化のものであるウイスキーを日本人が作る。だからこそ、日本の文化を融合させて”響らしさ”を作ることを大事にしています。24面にカットされたこのボトルは、1日を刻む24時間や、季節の移ろいを記す24節気を意味しています。ウイスキーが熟成樽の中で過ごした月日だったりとか、受け継がれた歴史など、時を重んじる日本らしさを表現しているので、響のボトルを見た時に、”あ、日本のものだなぁ”と感じていただけたら嬉しいです」

サントリーには、ほかにも「和魂洋才」を大事にした製品がいくつもある。

「黄色のラベルや、ハイボールを飲む女性のCMでお馴染みの『角瓶』。日本古来の吉祥柄である亀甲切子のデザインが施されています」

この『角瓶』について、こぼれ話がある。

「『角瓶』でつくるハイボールは「角ハイ」と呼ばれるなど「角」のイメージが強いと思います。しかし1937年に誕生した当時も現在も、ボトルのどこにも”角瓶”なんて表記されていないんですよね。ラベルには『SUNTORY WHISKY』と書かれているだけ。『角瓶』はいつからか呼ばれだした愛称なんですよね」

豆を描かない型破りな『BOSS』

ボスのロゴイメージ

最後に語られたのは、サントリーの代表商品である缶コーヒー『BOSS』について。同商品は「働く男」を象徴としたデザインで親しまれている。

「BOSSの一番最初のコンセプトは”働く男の相棒”でした。昭和の時代に誕生した商品ということで、ロゴの”ボスおじさん”も昭和の働く男達をイメージしながら考えられたものです。

当時、缶コーヒーのデザインはコーヒー豆の柄や金の装飾を使って、ぱっと見で中身がわかるようなものが多かった。また、紺色は飲料品との愛称が悪いと言われていてほとんど使われていなかったんです。ほかの商品との差別化を図るために紺色を選びました」

300種類あるBOSSブランドの展開例

BOSSブランドの展開は今では約300種類にも及ぶという。どのデザインにも、同じ表情で同じ角度の「ボスおじさん」が描かれている。

「BOSSブランドの商品は根本にあるコンセプトは変えずに、時代によって変化する人々の働き方にあわせて発展してきました」

また、コミカルなやりとりが人気のテレビCM。そこにもまた、時代に合わせた働き方の変化が反映されている。

「今のBOSSは、”自由で新しい働き方を応援するBOSS”という形に、コンセプトがシフトしてきています。今のホワイトカラーの人たちだったりとか、CMにあるような自由な働き方を選択する人たちがメインになってくるんじゃないかなと。今後も新しい働き方を『BOSS』で表現していきたいです」

新しい商品や革新的なプロダクト、広告を生み出せる背景には、サントリーが大切にしているモットーあるという。

「まず何かをするには、やってみないと分からない。特に悩んで悩んで考え抜いているときこそ、やってみることの重要性が一番大事だという”やってみなはれ精神”というのをモットーとしております」

例えば、明治時代にサントリーが発売した『赤玉ポートワイン』。この宣伝ポスターは日本ではじめてヌード写真を使用した広告として、センセーショナルを巻き起こした。

日本ではじめてヌード写真を使用した赤玉ポートワインの広告


文 = 阪上葵
編集 = 大塚康平


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