転職してすぐに活躍し、バリバリ成果を!と前のめりになるも空回りしてしまう…。これって初めての転職あるある? SHOWROOM 大島聖恵さんに「デザイナー転職」のリアルについて伺いました。
全3本立てでお送りいたします。
【1】「デザイナーは私だけ」の環境が、私を強くしてくれた
【2】「自分で考えて決める」場数を増やそう。デザイナーのスキルアップにとって大切なこと
【3】私、空回りしちゃってたかも。SHOWROOM デザイナー・大島聖恵(きよえ氏)が転職で学んだこと
SHOWROOMに転職して半年。
代表 前田裕二さんと共に同社で新規事業、デザイン戦略を任されているデザイナーが、大島聖恵さん(28歳)だ。
華々しく活躍している彼女だが、参画すぐに活躍できたわけではなかったという。入社当初、明確な役割が定まりきっていないなか、どうポジションを見つけていった?カルチャーの異なる会社で周りのメンバーから信頼をどう得てきた?
その半年間を振り返ってもらった。
【プロフィール】きよえ氏/大島聖恵(おおしま・きよえ) 1991年生まれ。SHOWROOM株式会社のデザイナーとして、新規事業立ち上げやデザイン戦略を担う。専門学校在学中からインターンとしてWhyteboard incにてデザイナーの仕事を始め、コネヒト株式会社に転職。ママの一歩を支える「ママリ」のデザイン全般を担う。2019年9月からSHOWROOMへ。
まずどうしてSHOWROOMに転職しようと思ったんですか?
前職のコネヒトで4年半の間ずっと「ママリ」のデザインを続けてきたけれど、大好きなサービスを育てていくためには、もっとスキルアップが必要だと感じていました。それなら全く違うカルチャーの組織で全く異なる分野のサービスをつくれるのか、チャレンジしてみようと思ったんです。
あとはSHOWROOMが第二創業期を迎え、本格的にデザインへの投資を強化しようとしていたタイミングでした。デザイン会社Basecamp代表の坪田朋さんがSHOWROOMのデザイン組織構築に関わり始めた時期で、SHOWROOMが必要としている分野で私の経験が役に立てる部分もあるんじゃないかな、と思って転職しました。
入社した段階で大島さんは何を担ってほしいと言われていたのでしょうか。
それが、何も言われていなくて(笑)。特にサービスのUIを担当してほしいと指定されなかったので、私が入社して感じた課題をベースに行動していきました。noteに書いた「デザインカルチャー」の話はその成果です。
では、入社直後はどんなことをされていたんですか?
1ヶ月目は、まずは「知る」ことに集中しました。サービスの考え方も会社のカルチャーも全く異なるなかに飛び込んだので、資料を読んだりデザイナーに話を聞いたり。あとは組織にデザインをインストールために今何が課題になっているのかを知るために、全社員にデザインに関するアンケートを取ったこともありました。
組織全体を知るためにまずは風呂敷を広げ、「アンケートから挙がってきた課題」、「自分が感じた課題」、「他のデザイナーから聞いた課題」をまとめ、これから何をしていくかを決めるための1ヶ月でした。
例えば、どんな課題があったのでしょうか?
分かりやすいところで言うと、社内コミュニケーションのために使っていた「Slack」のチャンネルに関する命名規則を整えたいと思いました。入社直後に「これは改善したほうがみんなの仕事環境が整うのではないか」と気づいたことのうち、一番やりやすそうだったのがSlackだったからです。
というのも、当時の社内のSlackは「デザイン相談1」「デザイン相談2」といった同じようなチャンネルが存在していたり、このチャンネルで何を議論するのかパッと見ても分からない名前になっていたり。英語か日本語なのかも含めて、バラバラだと感じたんです。
これを部署ごとに誰が何のために使うチャンネルなのかを整理して、分かりやすい名前を付けられるように、私が考えたガイドラインを全社に共有しました。
そのガイドラインは、その後スムーズに浸透したんですか?
それが、メンバーからの反対意見があり、このときは実現できなかったんです。
SHOWROOMのメンバーからしたら命名規則が存在していない状態が通常なので、ガイドラインによって自由にチャンネルを立ち上げられなかったり、体制変更に合わせて毎回名前を変えないといけなかったりするのは面倒だ、と意見をもらいました。
入社した直後から私が「あれもやりたい、これもやりたい」「早く役割を見つけよう」と焦って空回りした結果、まだメンバーからの信頼を得ていないのにいきなり一人でやろうとして頓挫してしまったのだ、と思っています。
自分がママリで経験してきて「これはSHOWROOMのみんなにとっても良いだろう」と思ったことが、受け入れられなかった。軽くカルチャーショックを受けました。
でも一人で抱えずに、坪田さんに相談されたんですね。
はい、心が折れかかっていたのですが、組織の状況を客観的に捉えている坪田さんに相談できてありがたかったです。自分のやり方にもっと改善できる部分があったんだ、頼り方を身につけていくべきなんだ、と気づきをもらいました。
おかげで心折れずに「単に私が新参者で、まだメンバーからの信頼がないからなんだな」と思えて、違う方法で「やってみる」を続けていきました。Slackのガイドラインに関しては、結局私が転職して4ヶ月ほど経ってから、大きな組織変更のタイミングでボードメンバーが吸い上げてくれて、トップダウンで統一を進めていけたんです。
転職してから「まずは知る」段階を経て、「やってみる」ステップに進んだんですね。
そうです、入社して2〜3ヶ月は、あえて「やってみる」を続けていきました。というのも入社直後に「これってもっと良くできるんじゃないか」と直感で気づいた違和感は、会社に慣れるとだんだん薄れてしまいますよね。それに、メンバーと関係ができていない時期のほうが、空気を読まずにアクションできることもあるかもしれません。
私はSHOWROOMでデザインカルチャーを育てたいと考えているので、そのためには私がSHOWROOMにすでにあるカルチャーに染まるべきではないと考えていました。あくまでもデザインの視点で判断するために、自分の違和感を大切にしながら、常にフラットでいられるよう意識しています。
「やってみる」を続けていくうちに、何か変化はありましたか?
転職当初は風呂敷を広げていましたが、少しずつ新規事業に絞っていきました。最初は全部やろうと思っていたのですが、だんだんリソースに余裕がなくなっていくなかで、全社に関わるやりたいことへのコミットが浅くなってしまって。
解決のために動けていない課題が山積みになっていき、自分で自分に「SHOWROOMに何しに来たんだっけ?」と自問自答するようになりました。あれこれやろうとしても浅く薄くなってしまったら、メンバーからの信頼にはつながらない。全部はできないんだな、と吹っ切れました。
大島さんのように転職した人が新しい組織に飛びこむとき、どのようなスタンスで挑戦していくことが重要だと思いますか?
2つあって、1つは小さな意思決定を積み重ねていくこと。私が転職して役割が何も決まっていない頃に、まずはできることから「やってみる」を積み重ねたことで、私がどう意思決定していくのかを周りのメンバーに見てもらえたのだと感じています。それらが回り回って信頼につながり、だんだん大きな意思決定を任せてもらえるようになりました。
「意思決定の根幹に関わりたい」と思っても、メンバーからの信頼が必要な役割を転職してきたばかりの人にいきなり任せにくいんですよね。だから「このアクションは地味だからやらない」と思わずに、目の前にあることを地道に一つひとつ、自分で決めてアクションをおこしていきましょう。必ず誰かが見てくれて、支えたり応援したりしてくれます。
もう1つは、なんでしょうか?
これまで培ってきた成功体験を捨てて一から学び直し、新しい環境に適応していくことを「学びほぐし」と言うのですが、これが転職したときにすごく重要だと思います。
私のSlackガイドラインの経験がまさにそうですが、これまで学んできたことが自分のなかで無意識のうちに凝り固まってしまい、新しい会社に行っても「前職ではよかったのに」とか「この会社はできないことが多いな」と不満を感じてしまうかもしれません。私もたくさん、もやもやしました。
でも、組織が違えば人も違いますし、カルチャーも異なります。自分と同じように、転職先のメンバーも自分のやってきたことが正しいと思うものです。そのまま「正しい」と思うことをぶつけ合っていても、チームが良い方向にいかなくなってしまうんですよね。
だから自分が経験したことのある手段をそのまま使おうとするのではなく、その会社に合った方法を選択することが重要だと学びました。特に新しいことを導入しようとするときは、どうしても不満がおこりやすいです。自分がやりたいことを実現するために、今いる組織に合わせてベストな選択を模索していきましょう。きっと見つかるはずです。
全3本立てでお送りいたします。
【1】「デザイナーは私だけ」の環境が、私を強くしてくれた
【2】「自分で考えて決める」場数を増やそう。デザイナーのスキルアップにとって大切なこと
【3】私、空回りしちゃってたかも。SHOWROOM デザイナー・大島聖恵(きよえ氏)が転職で学んだこと
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