2019.03.06
『POTLUCK』のサービス体験設計|ランチもサブスクの時代へ。

『POTLUCK』のサービス体験設計|ランチもサブスクの時代へ。

ランチテイクアウトサービス『POTLUCK』が好調だ。1食あたり400円~という手頃な価格で人気店のランチが食べられる。「ランチに悩む時間がなくなった」「行列に並ばなくていい」など利用体験を評価する声も多い。手がけた谷合竜馬さんにUX設計背景や市場調査から得た学びについて話を伺った。

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月額定額制ランチテイクアウト『POTLUCK』が好調

動画、音楽、家具、菓子、ビールサーバー、花……さまざまなものがサブスク化して提供されるようになった。

今回注目したのは、飲食領域のサブスクサービスとして仕掛ける『POTLUCK』だ。

30日間有効なチケットを購入すれば、さまざまなお店のランチをテイクアウトできるというもの。

1食あたり400円~という手頃な価格で、お店やメニューを毎回自由に選べる。行列ができる人気店も参画しているところも魅力ポイントだ。

2月に100枚限定で試験的に発売された「食べ放題プラン」は即日完売。需要の高さが伺える(好評につき、現在、食べ放題プランは常時購入可能になっている)。

2018年9月のサービス開始から半年、2019年3月3日には累計注文数が1万食を突破。ランチテイクアウトのサブスクサービスは好調な滑り出しだと言えそうだ。

『POTLUCK』を手がける株式会社RYM&CO.代表取締役の谷合竜馬さんに、発想や市場調査から得た学びについて話を伺った。

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ユーザーは『POTLUCK』から店舗とメニュー、受け取り時間を選択、事前に注文予約する。(予約受付時間は前日の午後5時~当日午前10時)。当日、受け取り時間になったらお店に出向き、カウンターで用意されたランチを受け取る。ランチタイムの行列を回避できるのもメリットのひとつ。現在は、渋谷・恵比寿・表参道・代官山エリアで展開されており、約100店の飲食店が加盟。自ら取りにいける範囲に制限されるが、最大約400以上の豊富なメニューから選ぶことができる。

「ランチタイムに余裕を生み出したい」

ー 『POTLUCK』を利用した人からは利用体験を評価する声も。どのような体験がユーザーにウケているのでしょうか?


ランチタイムの意思決定がなくなった、この点が評価されていると感じます。いかに精神的な余裕をつくるか、を意識して体験を設計していて。

ランチのたびに、「今日はなにを食べようか。どこに行こうか」って考えるの疲れませんか?

ランチの選択肢ってめちゃくちゃあります。コンビニで買ってもいいし、外食してもいい。外食するんだったら、どこのお店に行こうか…なにを食べようか…みたいに決めなければいけないことは意外と多い。さらにはそれを貴重な休憩時間内に考えなくちゃいけないのでわずらわしく感じる方もいると思います。

ところが、どこでなにを食べるかって、実はなんでもよかったりする。たとえば、「絶対カレーじゃないとダメだ」という状況は少ないですよね。

『POTLUCK』は、どのお店で何を頼むかを前日の午後5時~当日午前10時に決める事前予約制です。ランチタイムに考えることをちょっとしたスキマ時間に前倒しできます。さらに受け取りの際にはランチの行列に並ばなくていいし、お店に行ったらすぐ受け取れる。ランチタイムに考えなくて済んだり、少しずつでも時間ロスを無くしていくことが、精神面でのゆとりに繋がっているようです。

飲食店側としても、どのメニューをどれだけ用意しておけばいいか、朝10時の時点で決まっていることになります。それに合わせて段取りできるので、精神的にとてもラクになるんですよね。会計もサービス内で完結しているので、商品を渡すだけで済みます。

ランチタイムにおける無駄を省くことで余裕が生まれる体験を評価いただいてるのだと思います。

海外の成功事例に学ぶ

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ー 精神的な余裕を生み出すUX設計に至るまで、どんなことをしたのでしょうか?


類似サービスがどうやって上手くいっているのか、事例をたくさん調べましたね。

そのなかで『MealPal』という同じようなビジネスモデルのサービスを見つけました。アメリカをはじめ、世界15以上の都市に展開されています。

『MealPal』が成長している理由を分析してみると、「価格ギャップ」を訴求することが大きなポイントになっているとわかりました。

ニューヨークでのランチ価格はだいたい10ドル以上かかりますが、『Meal Pal』を利用すれば6ドル前後に抑えられる。そのお得感がユーザーにウケているようでした。

日本で展開する場合、「価格ギャップ」を魅力に感じる人たちはどこにいるのかを探りました。

最終的にたどり着いたのは、20代後半~30代ぐらいのOLの方たち。「美味しくて健康面でもヘルシーなものを食べたい。でもそういったランチは1000~1300円くらいなので毎日食べるのは金銭的につらい」と考えている人たちです。

彼女たちの求めるサービスを設計するにあたって、ランチの実態を把握するようなインタビューを行ないました。ランチにかける予算や、ランチするお店を決めるときに思い浮かべる店舗の候補数など、事実を確認することを意識していましたね。

徐々に、ランチのときに困っていることが何なのか?を探る質問にシフトして、インサイトを掴もうと試みました。そこでわかってきたのは、「意思決定をわずらわしく感じている」ということ。

『POTLUCK』では、ランチタイムにおける考えるコストや待つ時間コストなどを省いて、シームレスな体験づくりにフォーカスするべきだと気づきました。

店舗を仲間として巻き込んでいく大変さ

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サービスの全体設計が整った段階から、実際の体験を確認していきました。

最初は知り合いの飲食店3つくらいに協力してもらって、注文から受け取りを体験したり。反対に、以前働いてたバーを昼間使わせてもらって、飲食店側の体験をしてみたり。

『POTLUCK』はWEBから離れた場所での体験が肝になります。自ら体験して感じたことと試してもらった方の意見を聞きながら、ブラッシュアップしていきました。


ー 『POTLUCK』のビジネスモデルでは飲食店をいかに巻き込むかが成功の肝だと思いました。WEBで完結しないサービスならではの苦労はありましたか?


「営業」が一番キツかったですね(笑)

立ち上げた当初は僕ひとりだったので、飲食店への営業ももちろんひとりでした。これが本当に大変で。説明用のチラシとか作っていくんですけど、話すらも聞いてもらえないところもあって…。1時間ぐらい外回りしたら心折れて帰ってくるみたいな。

自分がやりたくてやってるサービスなのに、売り込みすらも出来ない自分がいて。自己肯定感が下がっていた時期もありましたね。

乗り越えるために、どうすれば自分が営業へ行かずに導入店舗を増やせるかを考えていました。

見つけたのが、アンバサダーのような紹介制度をつくることでした。ランチにお客さんとして行く人たちを味方にして、お客さんからお店の人にサービスを紹介してもらうんです。お店の人と仲が良い方も多いので話が通りやすかったりしますから。

最終的には250人ぐらいアンバサダーになってくれて。そこから巻き込めたケースもありました。

彼らのモチベーションは美味しいお店のランチが安く食べれたらラッキーだという点。新しいサービスを応援してくれる人も多くて。めちゃくちゃ頼もしかったですね。

『Uber Eats』のように浸透するブランドを育てたい

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ー 『POTLUCK』に込めた思いはなんでしょうか?


飲食店とお客さんの接点をもっと増やしていきたい。その橋渡しを『POTLUCK』が担っていきたいと考えています。

僕はもともとダイニングバーで働いたり飲食店のオーナーをやっている友人が居たり、飲食店の経営について考える機会が多くありました。

料理人の方たちはアーティスト気質の方が多いんですよね。食材を選んだり、調理方法や盛り付け方法。店舗空間の演出など。こだわる先がいくつもあります。

個人経営のお店だと特に経営までひとりでやっているケースもあります。料理人が集客方法に頭を悩ませていることもたくさんある。だから、もっと新しいメニューを考えたり、料理に集中できる環境づくりをお手伝いできたらいいなとも考えています。飲食店は集客や売り上げに気を取られることなく、『POTLUCK』を利用すれば勝手に売れていくような状態ができたら最高ですね。

それを実現するためには、『POTLUCK』をブランドにしていかなければならない。

『Uber Eats』が良い例ですよね。アプリで注文から決済までできて、自分が居るところまで持ってきてくれる。さらに取り扱っているメニューはデリバリー専門のピザやお寿司だけでなく、お洒落なカフェのランチまである。この便利で美味しい”体験”が、ブランドのイメージとしてお店側にもユーザー様にも浸透しているからこそ、『Uber Eats』を使いつづける人は多いのだと思います。


ー 直近、目指していくところとしては?


『POTLUCK』がブランドになっていろんなお店のプラットフォームになることですね。そうすることで飲食店とお客さんの接点をもっと増やしていけるんだと思います。

大きな存在になるためにも、まずは小さな目標を着実に達成しながら、サービスを育てています。

そういった意味でも、現在は「利用継続率」が最も重要な指標だと捉えています。

どれくらい店舗数とメニュー数があればユーザーのランチ予約数が上がっていくのか。その相関を見極めていきたいですね。

ありがたいことに「エリアを拡大してほしい」という声をたくさんいただきます。その声にお答えできるよう、準備を整えている段階です。期待して待っていただけたら嬉しいです。


文 = 大塚康平


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