2013.03.18
教えてHACK GIRL!ソーシャルゲームデザイナー女子に学ぶ、プライベートを犠牲にしない働き方。

教えてHACK GIRL!ソーシャルゲームデザイナー女子に学ぶ、プライベートを犠牲にしない働き方。

激動のWEB・IT・ゲーム業界で、女性クリエイター・エンジニアはいかに生き延びていくべきか―。その答えに迫るべく、CROOZでソーシャルゲームのデザインを担当する小林由紀さんに仕事観・キャリアビジョンを伺った。多摩美卒・面白法人カヤック出身のWEB女子が語る、プライベートを犠牲にしない働き方とは?

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新人時代を“カヤック”で過ごした、生粋のWEB女子のリアル。

激動のWEB・IT・ゲーム業界で働く女性クリエイター・エンジニアを応援する、“HACK GIRL”企画第2弾。

今回登場するのは、気鋭のソーシャルアプリプロバイダ《CROOZ株式会社》で活躍するWEBデザイナー 小林由紀さん。「神魔×継承!ラグナブレイク」の北米版タイトル「DeityWars」のデザイン等を経験し、現在では別タイトルのデザインを担当している。

中学生の頃から10年以上、個人サイトを運営していたという小林さんは、多摩美術大学で情報デザインを学び、卒業後、面白法人カヤックに新卒入社したという、根っからのWEB女子。

彼女の仕事観やキャリアビジョンから、この業界で働く女性の姿を探ってみたい。

“AKBの研修生”になるよりも、“ももクロの6人目”になりたい。

― まず、小林さんの経歴を教えてください。


多摩美術大学の情報デザイン学科を卒業後、WEBデザイナーとしてカヤックに新卒入社しました。2年半ほど在籍して、1年くらい前にCROOZに転職しました。


― カヤックではどういった仕事を?


最初はWEB広告を制作していくチームに配属され、修行を積んでいました。

そこで1年くらい経った頃、ちょうどDeNAのモバゲーがオープン化したんです。2010年頃かな。ミクシィやGREEなど、さまざまなプラットフォームが続々とオープン化したあの時期です。ほぼ全てのプラットフォームでアプリのリリースを経験したんですが、そこで“ソーシャル”の面白さに目覚めました。



― なぜCROOZに転職を?


直接の理由は人事異動です。ソーシャルじゃない部署に異動になってしまって。それはそれで興味深い仕事だったのですが、当時は「ソーシャルは来年どうなっているか分からない」と言われていて、「だったら、ソーシャル、今やらなくていつやるの!?」って思ったんですよね。


― ソーシャルの魅力とは?


ユーザーの反応が段違いなんです。広告用のWEBサイトって、ユーザーがあまり見えないじゃないですか。カンヌなんかの賞を狙っていくにしても、それは結局業界の方からの評価ですし。

その点、ソーシャルは厳しいご意見もお褒めの言葉も、ユーザーからたくさんいただけます。

反応が返ってくるというのは、やっぱり作り手として幸せですよね。そう考えたときに、私は最新技術でカッコいいものを作りたい、というよりも、ユーザーからの反応をいただくことがモチベーションになるタイプなんだな、と気づいたんです。


― CROOZではこれまでにどんな仕事を?


主に、自社タイトル「神魔×継承!ラグナブレイク」の北米版タイトル「DeityWars」のUIデザインを担当してきました。国内版のデザインを、海外ユーザーの嗜好にあうように調整する仕事ですね。


― 地域によって、UIの要件も変わってくるものなんですか?


日本版ラグナブレイクは、“美麗カード”押しというか、華やかなデザインでまとめられています。ですが、北米版のほうはかなりシックに、あえて暗い雰囲気にしています。日本と違って、キャラクターではなく、“バトル”重視のデザインが好まれるんです。

単純に、色味も全然違いますね。特に緑色。日本の緑って“広葉樹の緑”というか、どちらかというと黄緑に近い色なんですが、向こうはビリジアン。深い緑。日本に比べて、全体的に“青”が入っているように感じます。

なので、バナーをただ英訳するだけではユーザーに響かないんですよ。そういう細かな色の調整なんかもやっています。また向こうのユーザーはカードゲームに慣れていないので、難しい操作が必要だったりユーザーを迷わす恐れのある遷移を、かなり削っています。ほぼ全ページ作り直していますが、まだ分かりにくいのでもっと良くしたいです。



― ユーザーの反応って、どれくらいのスパンで見ていくものなんですか?


毎日です。必ず見てます。


― デザインの調整も?


毎日単位でありますね。ユーザーの動向を逐一追って、反応の鈍いコンテンツには随時調整を加えていきます。その日に決まってやることもあります。


― ハンパじゃないスピード感ですね!ところで、ソーシャルゲームをやっている会社って他にもあると思うのですが、その中でもなぜCROOZを選んだんですか?


まず「自分が必要とされる環境か」というのはすごく考えました。で、すでに歴史のある分野でデザインが上手い会社にデザイナーとして入社するというのは、ある意味「お金持ちにお金を寄付する」のと同じことだと思ったんです。

もちろん、良いデザインをしている会社で勉強するという考え方もあるとは思うのですが、私の場合は、デザイン的に未完成なところのある分野で、かつ伸びしろのある会社で挑戦するほうがいいんじゃないか、と。

確かに、怖くはあったんですけどね。まだまだ社会人3年目ですし。でも、“いま「AKBの研修生」になるべきか「ももクロの6人目」になるべきか”と問われたら、私だったら後者かなと(笑)

実際、ももクロは今ではもう知らない人はいないくらいのアイドルに成長していますし、CROOZのデザインも、私が入った頃とは見違えるほど変わりました。一年でここまで変わるところが、この業界のおもしろい部分だと感じています。

理想はシェリル・サンドバーグ。公私混同は絶対にしない。

― 小林さんが“いかにパワフルか”よく分かりました(笑)とはいえ、この業界、女性にとってなかなか厳しい面もあると思うんです。勤務時間がどうしても長くなりがちだったり。


クオリティのためなら火の中水の中!!って感じですね(笑)

でも、WEB業界って他とくらべて、男女の性別差は出にくいと思うんですよね。工事現場や運送業といったタイプの仕事と違って、勉強次第で女性にもチャンスがあるというか、比較的、努力が報われやすい業界だと思います。


― 長く働くことを考える上で、不規則なワークスタイルって課題になってきませんか?


デザイナーの場合、タスクを“先読み”するスキルがあれば、ある程度は大丈夫だと思います。「こういうことやるのなら、これとこれが要りますよね?」「この日までにやる必要があるのなら、ここまでに仕様を出してもらわないと困ります」とディレクターさんにアラートを出したり、ちゃんと自分で交渉できれば、ワークスタイルをコントロールすることは不可能ではないと思っています。


― なるほど、“タスクマネジメント”。


はい、とにかくタスクマネジメントを勉強しました。そうしないと、人生が破綻しますから。



― 周りにいる同性の先輩の存在って大きいですか?


そうですね、良い先輩に恵まれていると思います。

あと周りの先輩というわけではないんですが、もともとGoogleにいて、今はFacebookの副社長を務めているシェリル・サンドバーグがカッコいいなと思ってます。バリバリ仕事して、でも毎日17時半にはちゃんと帰って子供と食卓を囲む主義の方です。

この業界って、どこでも仕事ができるだけに、公私が混ざりがちじゃないですか。それをスパっと分けている人は、やっぱりカッコいいですよね。仕事は会社でやって、家ではしない。私自身もポリシーにしていることです。


― とはいえ、なかなかできることではないですよね?


うーん、私の場合は意図的に“多趣味”に生きることで切り替えて担保しようとしています。例えば料理とか…昨日も夜中の1時にかぼちゃの煮物つくりましたし(笑)海外旅行にも結構行っています。去年は7月頃にマレーシアに一人旅を。これまで10ヶ国くらいまわったかな。あとは水泳をやったり、3331(3331 Arts Chiyoda)でボランティアのギャラリースタッフをやったりもしています。搬入搬出とか、裏方の仕事ですけど。全力で働いて、全力で遊ぶんです。


― 旅行とかって、まとまった休みがないと難しくないですか?


ええ、なので前職ではゴールデンウィークに出社しておいて、時期をずらしてまとめて休みをとったりしていました。CROOZの場合だと、年末年始とお盆の休暇が長いんですよ。例年、9日~10日くらい。私が入社した年の年末は、12月22日からお休みでした(笑)


― そんなに連休をはさんで、ソーシャルゲームの仕事ってうまく回るんでしょうか…?


そのための“先読みのスキル”と“タスクマネジメント”だと思ってます。例えば年末年始に事故が起こらないように、計算して入念に準備しておく。休みは“獲る”気でいかないと、すぐに消えてしまうので。


― 先ほど「仕事とプライベートをきっちり分ける」と仰っていましたよね。WEB業界って、一方で「徹夜してこそ一人前」的な面もあるように思うのですが?


その点、CROOZの場合は、長く残っていることが逆に良しとされないんですよね。会社に泊まるのは絶対にNG。というか、22時以降に残っていると怒られるんですよ。“鬼”に追いかけられるんです(笑)


― “鬼”ですか??


ええ、“残れま10(テン)”という制度があって、現場の社員が当番制で、鬼ごっこみたいに「今日はオレが当番だからお前帰れよ」って言って回るんです。で、最後に捕まった人が翌日の鬼になる。私も一回捕まったことあります(笑)

転職する前は、22時に帰れるなんて絶対ウソだと思ってたんですよ。WEBやソーシャルゲームやってる会社であり得るはずがないと思ってたんですけど、いざ入ってみたら、ホントでしたね。


― 徹底されてますね(笑)


その分、効率と結果はシビアに求められます。でも私としては、このスタイルが自分の生き方にあっていると感じています。

クリエイターにこそ、“投資家的な目線”が必要。

― 小林さんはこの先もWEBデザイナーとして、この業界でずっと働き続けていきたいとお考えですか?


そうですね、いきなり工事現場に行っても使いものにならないと思うので…(笑)家庭を持ったとしても、WEB業界には身を置き続けたいです。



シェリル・サンドバーグのように、バリバリ仕事をしつつ、家庭もしっかり大事にするということは絶対にブレさせたくないですね。仕事は仕事できっちりやって、必ず子どもと一緒ご飯を食べて、というのが絶対的な理想です。カッコいいです。きっと並大抵の努力ではできないと思いますが、挑戦したいですね。


― 最後に、同じようにこの業界で働いている女性クリエイターに向けて、これからの自分のキャリアを考える上で、何かアドバイスをいただけますか?


自分の持っている能力をどこに投資すれば、会社と自分の能力をさらに高めることができるのか。これを見極めることが大事だと思います。

いくら有名なクリエイターがいる会社に入ったとしても、結局のところ、入ったあとは、その人を倒さなきゃいけないじゃないですか。入社後、限られた年数でどのポジションまで狙えるか、考えたほうが良いと思います。

私もそうだったんですけど、クリエイターって、業界で評価の高い成果物を残していたり、有名なアートディレクターさんがいるという軸で就職先や転職先を決めがちです。でも、成果物で判断すると、機を掴むには遅いことが多いです。

クリエイターこそ「もう有名な会社」に“憧れベース”で転職するのではなく、「これから伸びる」会社を見つけ出すための、“投資家的な目線”を身につけることが必要だと思います。そうすれば、きっと必要としてもらえる良い会社にめぐり合えるんじゃないかと。そういう意味では、活躍の場としてスタートアップを選ぶというのも面白そうだなと思いますね。


― なるほど、今日はいろいろなお話、ありがとうございました!


ありがとうございました!!



(おわり)


編集 = 松尾彰大


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