2019.06.25
「担当を外れてくれ」と言われた悔しさを糧に。LINE 稲垣あゆみの新人時代

「担当を外れてくれ」と言われた悔しさを糧に。LINE 稲垣あゆみの新人時代

『LINE』リリース時から企画・開発をリード。現在では、上級執行役員としてLINEプラットフォームのあらゆる企画を統括する稲垣あゆみさん。エネルギッシュでリーダーシップの強い彼女にも、苦い過去が。模索の末たどり着いたのは、「一人で突っ走らない」という仕事スタンスだった。

「もう君には任せられない」

LINEヒットの数年前。彼女は前職、中国資本企業の第一線でサービス開発に携わり、バリバリと働いていた。キャリアは順風満帆、さらに責任ある仕事を…という矢先のこと。予期せぬ出来事が起こる。

じつは、前職でめちゃくちゃ悔しい辞め方をしたんですよね。中国資本の企業でWebサービスの企画開発を任せてもらっていたのですが、途中でプロジェクトを外されちゃって。

行動力があって物怖じしないところが自分の強み。昔から、先頭に立って物事を動かす役回りが多かったので、偉い人にもどんどん意見してプロジェクトを進めていました。

でも、次第に中国本社のマネージャーと揉めることが増えていって。最終的に「もう稲垣さんには任せたくない」と、追い出される結果に。

今だから冷静になってわかるんですけど、相手からしたら、日本支社の若者にガツガツ物を言われることが許せなかったんだと思います。でも、自分が間違っているという感覚は正直なくて。一生懸命やっていたのにどうして?って、納得もできないし、すごくショックでしたね。

+++

【プロフィール】稲垣あゆみ(36) LINE株式会社 上級執行役員 LINEプラットフォーム企画統括
一橋大学社会学部卒業後にベンチャー立ち上げを経て、バイドゥ(日本法人)に入社。2010年5月、ネイバージャパン(後のNHN Japan、現LINE)に入社。写真共有SNS・コミュニティサービスの企画に携わった後、2011年6月に『LINE』をリリース。2016年1月、当時最年少で執行役員に就任。2019年1月からは上級執行役員に就任。

無鉄砲さだけじゃ戦えない。「教え」を素直に実行する

自分が信じた道を突き進むこれまでのスタイルから一転。転職後の彼女は、「上司の教えを忠実に守ること」を心掛けていた。

27歳でネイバージャパン(現LINE)に転職したのですが、はじめはカドが立たないよう、波風立てないようにってあえて大人しくしてました(笑)

なんだろう、揉めて辞めるというのが、ちょっとしたトラウマみたいになっていたのかもしれない。自分流だけでやっても上手くいかないんだな。じゃあどうしようと。

「郷に入っては郷に従え」じゃないですけど、いったん自分らしさみたいなものにはフタをして、学び直そうって思ったんです。

まずはとにかく、上司の教えを忠実に守ったり、仕事ぶりを真似たりするようにしましたね。

最初に付いた上司はすごく細かく丁寧な人で、企画書の作り方は勉強になりました。普通なら10枚くらいにおさまるものも、競合情報から開発の目的、仕様やデザイン案、エラーの想定などをパワポ100ページくらいの資料にまとめていたんです。

何より他社サービスのリサーチがすごくて。単に画面キャプチャを集めるとかではなく、ユーザーに対するメリットやデメリット、なぜこの仕様になっているのか?どこを真似できそうか?などを、まず分析し自分なりの見解を持てと口酸っぱく言われていました。

最初はびっくりしましたよ。でも、とにかく同じようにたっぷり調査して、抜けもれもないよう、丁寧に丁寧に企画書をつくっていったんです。

そんなことを半年ほど続けていると、段々すごく納得度の高い企画をつくれるようになって。今までじゃ考えが及ばない細かい視点も身についたし、開発知識の理解も、前よりずっと深まっていって。

正直これまで、誰かに教わったことを忠実にやり続けるみたいなことってなかったんです。全部自分で考えて解決していくことが仕事だと思っていたし、それでわりと上手くやれていた。

人に習うことは、一人でやるより何倍も成長実感がある。それまで自分は、変に自信を持ちすぎていたのかもしれませんね。

+++その後、上司が変わる度に仕事の進め方も柔軟に変えていた稲垣さん。「次の上司は企画書じゃなく社内Wikiで共有するやり方だったので、最初は戸惑いましたけどね(笑)」と語る。また、プログラミングやUXデザインに強みを持つ上司のもとでは、技術的視点を習得。同時に、自身は進行管理が強みであることを再認識できたという。

引っ張るのではなく、巻き込んで前へ

入社から約半年後、LINEの前身となるメッセンジャーアプリの開発プロジェクトがスタート。最初こそ数名のプロジェクトだったが、すぐに何十人とメンバーが増えていった。そこで彼女は、プロダクトマネージャーの役割とは何か?を改めて考えることとなる。

PMの役割って、単にグイグイ引っ張ることではない。いかに信頼を分厚くして、みんなを巻き込みながら進んでいけるかだなって。

それまでの私は、先頭に立ってガツガツ指示を出すタイプでした。でもメンバーが増えると同時に、上手く意思疎通が取れなかったり、思うようにタスクが進んでいかない場面が増えていって。

それってまず「この人についていこう」と思われていないからだなって思ったんですよね。今ままで上手くいってたのは、たまたま少人数のツーカーな仲間同士だったから。

そう気づいてからは、いかに相手に気持ちよく動いてもらえるか?を意識していました。何か仕事をお願いするときは、“作業”として依頼をしない。「これやってください」ではなく、「これを実現するためにこうしたいんですが、できますか?」と伝えるんです。

意図や背景から共有しないと、相手も「やらされている」という感覚を持ちやすい。あくまで一緒にプロジェクトを進めていく「仲間」というスタンスを心掛けていました。

他にも、その人のタイプに合わせて仕事の進め方を変えたり。たとえばエンジニアだと、「企画段階でここまで細かく決められたら嫌だ」という人もいれば、逆に「なんで細部までちゃんと考えていないの?」という人もいる。普段のやり取りやMTGでの発言、様子をよく見て、この人にはどんな接し方がハマるのかを分析していたんです。

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遠くまで行きたければ、みんなで行け

LINE立ち上げ期に上司が教えてくれたアフリカのことわざで、今でも大切にしてる言葉があって。

「If you want to go fast, go alone. If you want to go far, go together. 」
早く行きたければ、ひとりで行け。遠くまで行きたければ、みんなで行け。

こういった言葉なのですが、社会人になりたての自分は、本当に「早くサービスを創りたい」「早く認められたい」の一心で。いつも一人で突っ走っていたなと。

大きなことを成し遂げようと思ったら、きっと一人では無理。知恵を借り、力を借り、みんなで走るしかないんです。そういった意味でも、「信頼される人」であり続けることは大事だと思いますね。

信頼を生むのは、サービスや事業のために行動を起こせるかどうか。

新人時代って「何者かにならなきゃ」と矢印が自分に向くことが多いですよね。私もそうでした。それだと気持ちに左右されやすいし、拠り所がなくなったときに行き先を見失ってしまうなって。

でも「目の前の仕事を成功させるためには今何をすべきか?」と考えてみると、少し見える世界が変わってくる。「とにかくこの知識が不足しているから徹底的に勉強しよう」「この部分は自分が一番理解しているからどんどん進めよう」って、やることが明確になるんですよね。

それを積み重ねていけば、スキルやポジションは勝手についてくるんじゃないかなって思います。


編集 = 白石勝也
取材 / 文 = 長谷川純菜


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