カリスマホストのローランドさんが、いま中国で大人気になっている。山下智久さんや小嶋陽菜さんなど、中国進出する有名人も後を立たない。なぜ日本人は中国でウケる? どんな人が人気者に? 中国で66万フォロワーを持つインフルエンサー(KOL)、松浦文哉さんに実態を聞いた。
全2回の連載でお送りいたします。
[1]名もなき日本語教師が、一夜にして中国の大スターに。中国版YouTuber「KOL」のリアル
[2]ホスト界の帝王「ローランド」が中国で大ウケ。中国でバズる日本コンテンツの共通項
お話を伺ったのは、中国最大級の動画SNS「bilibili動画」にて66万フォロワーを持つ松浦文哉さん。現在は日本にて、中国進出を目指すインフルエンサーのプロデュースを手がけている。
松浦さんによると、中国ではいま、「日本人」が密かなブームになっているそうだ。
日本のコンテンツでいうと、アニメなどは世界的にも有名ですよね。中国にも日本のアニメファンはすごく多いのですが、最近だと、「個」にもスポットが当たっていて。
たとえば、ホスト界の帝王として有名なローランドさん。いまテレビにもよく出られてますよね。じつは、中国でかなり人気になっています。
ローランドさんが経営するホストクラブが、少し前に「Weibo」(中国版Twitter)でアカウントを開設されたのですが、すでにフォロワー数は6万人。中国の女性が「bilibili動画」(中国版ニコニコ動画)に投稿した「日本に行ってローランドの接客を受けてきた」という動画は、300万回以上再生されていました。
一つ理由として考えられるのは、そもそも「中国にホストがない」ということ。
歌舞伎町に「職業、イケメン。」と書かれた大きな看板があるのですが、日本に観光に来た中国人は大抵「なんだこれ!」とびっくりするんですよね。その写真がWeiboなどのSNSに投稿されて、日本で注目を集めるカリスマホストのローランドさんが徐々に話題になったのではないかなと。
ローランドさんの他にも、よききさんというYouTuberの方も人気です。よききさんはメイク技術がものすごく高い方で。YouTubeでは120万人以上、bilibili動画では20万人以上フォロワーがついています。
他にも、大食い動画で有名な木下ゆうかさん、オシャレで可愛い動画編集をするまこちさんなどの日本人が中国では人気ですね。
一つ共通点で言えば、「言葉がなくても伝わる」ということだと思います。説明なしにパッとみただけで面白いな、いいな、と思えるか。複雑さを排除したシンプルで強い表現ができれば、言語の壁を超えて人気者になれるのかもしれません。
中国では、こうした影響力を持つ存在のことを「KOL(キー・オピニオン・リーダー)」と呼ぶんです。分かりやすくお伝えすると、日本の「インフルエンサー」と同じイメージですね。
概念としては、「KOL=専門性を持っている人」と言われることが多いです。たとえば先ほどご紹介したよききさんだと、メイク技術に長けている。そこが日本のインフルエンサーや芸能人との違いかなと思います。
KOLは、中国でマーケティング手法としてもかなり重要な存在で。中国は社会主義国家という歴史的背景もあって、広告やメディアへの信頼度が日本より低いんです。つまり、インフォメーションより信頼する人からの紹介や口コミを重んじる風潮がある。
さらにはSNSの浸透もあって、いまはほとんどの人がSNSを情報源にしています。そういった状況もあり、SNSで情報を発信する人、中でも「濃く、専門的な情報」を発信する人が影響力を持つようになっていきました。
まあ……いろいろ語ってますが僕が「KOL」という言葉を知ったのって、ほんの1年前くらいで……(笑)。他国が中国ビジネスを語る上で生まれた言葉なのかな、と。
実際、ネット上で力を持っている人のことって、中国では「網紅(ワンホン)」と呼ぶことのほうが多いんです。ちなみに動画を投稿する人のことは「アップジュー」。中国国内では「ワンホン」や「アップジュー」のほうが通じると思いますよ。
もう一つ中国でKOLが人気なのって、「芸能界との距離」みたいなものも影響しているのかなと。
中国の芸能人って、一般の人たちからしたらものすごく遠いんですよね。雲の上の存在というか。
日本って、よく芸能人がドッキリにかかる番組とかあるじゃないですか。あれが中国の動画サイトに転載されると、「えっ日本の芸能人ってこんなに距離近いの?ドッキリなんてして大丈夫なの?」みたいなコメントがたくさんつくんです。
だからこそ、中国では芸能人ほど距離の遠くないKOLが人気になっているとも考えられます。
最近日本だと、芸能人やアイドルの方がSNSをやるのも普通になっていますよね。あれも、中国人からしたらおそらく考えられないこと。
そう思うと、日本の芸能人が中国のSNSアカウントで人気になるのもわかる気がします。実際、ここ1~2年で山下智久さんや木村拓哉さん、菅田将暉さんなど多くの有名人がWeiboをはじめていますが、すぐに人気に火がついている印象です。
中国ではTwitterやInstagram、FacebookなどのSNSが使用できません。それもあり、日本でいまWeiboアカウントを開設して中国市場との接点をはかる芸能人が増えているのかもしれませんね。
芸能人の中国進出の例もそうですが、中国市場は今後さらに見過ごせない存在になっていくのではないでしょうか。
日本は少子高齢化社会で。今後市場が縮小していくことは避けられません。グローバルで勝負しようと考えたときに、日本から一番近くて大きな国は中国ですよね。
それに、需要もすごくあると思っていて。中国って日本のことが好きな方が非常に多いんです。観光客も多いですし、注目されていることは明らかかなと。
僕、中国で6年ほど日本語教師をやっていたことがあって。初めての授業で生徒に必ず「みんなはどうして日本語を勉強してるの?」って聞くのですが、ほとんどの子が「日本のアニメを楽しみたいから」って答えるんです。
アニメだけじゃなく、音楽だったりメイクだったり。日本のものは基本的にすごく質が良い、レベルが高いと思われている。実際、日本の商品って中国ですごく売れます。
せっかくいいものがあるなら、国外にも届けたい。そしてただモノを届けるだけでなく、「日本のいいモノを日本人が届ける」ことで、経済の発展だけじゃなく人の交流にもつながるんじゃないかなって。
そういった意味でも、「動画×日本」というコンテンツはものすごく可能性があると思いますね。
取材 / 文 = 長谷川純菜
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