中国トップエリート人材に共通するのは「高潔さ」。こう語ってくれたのが『アフターデジタル』主著者の藤井保文さん。いま「withコロナ時代」を生き抜く上で、ビジネスパーソンに必要な能力・考え方とは?
全3本立てでお送りいたします。
【前編】「監視」か「安心」か。中国のデータ社会、コロナが投げかける問い
【中編】コロナで進化、中国発サービスに見るUX至上主義
【後編】中国トップエリートの仕事観「目先の儲けより社会貢献を」
ここ最近、特によくいただく質問として、
「アフターコロナはどんな業界が残るか?」
「どの業界がアフターデジタル型になるのか?」
「どの業界は以前のように戻ってしまうのか?」
といったものなんですよね。
ただ、私が強く抱く違和感として、どこか他人事のようだ、ということ。同じ業界でも生き残るサービスもあれば、消えていくものもあります。つまり「あなたたち次第なのです」と。「これからどうなっていくか」ではなく「自分たちはどうしていきたいか」という視点こそ、このコロナ時代に求められるものだと思っています。
以前、中国アリペイの元トップの方に「なぜ成功者になれたのか」と聞いたことがあるんですよね。すると彼は「自分を成功者だと思ったことは一度もない」と言いました。
「5年後、10年後の社会で、自分がどのように貢献できるのか。ただ、それを考えているだけだ」と。
トップエリートこそ、目先の金儲けより、社会貢献に仕事の意義を置く。そういった高潔さを持ち合わせているように感じます。自らが描く理想の未来に対し、能力を最大限に発揮し、ひたすらに追求していく。
中国だと「墓場に入る時、その人の価値が決まる」という考え方があるのだそう。死ぬまでに何を成せるか。その時にどのくらいの人たちが死を惜しみ、自分の偉業について語ってくれるか。こういった高い視座もひとつ、求められていく考え方だと思います。
ちなみに中国企業は日本企業とまるで違うな、と感じたエピソードがあります。
アリババにおけるペイメント事業のトップに聞いた話なのですが、「スマートシティを作り、そこを拠点にモバイルペイメントを広げていく」という一大プロジェクトが役員会議で決まったのだとか。
彼はその足で自部署に戻り「明日からスマートシティをつくるプロジェクトが始まります。やりたい人がいたら手を挙げてください」と号令をかけて。その場で手を挙げた人に対して「1時間以内に、今の仕事の後任を探して引継ぎを完了させたら、あなたを担当に任命しましょう。できますか?」と伝えたらしいんです。
こういう人事はアリババの中では良くあるそうです。もちろん1時間で引継げるわけがないのですが(笑)それぞれうまく工夫し、自ら考えて動いていく。手を挙げ、まずは挑戦する姿勢を示せるか。失敗してもいいから、新しいことを真剣にやれば評価される、そういった組織としての評価軸があってこそ。日本企業も参考にすべき部分かもしれません。
このコロナ時代を日本企業は生き抜けるか。変われるか。今まさに問われていますよね。その中で大切なのは、いかに自分で考えられるか、だと思います。
ヒントになるのは「対話型組織」です。これは丸井グループ、代表取締役社長である青井浩さんにお話を伺ったのですが「DXを推進する上で本質的な課題は、ビジネス戦略ではなく、いかに命令型組織から対話型組織に変えるか」だとおっしゃっていました。
対話型組織とは、メンバーたち自身が考え、「こうした方がいいのではないか」と行動する組織のこと。命令を待って言われたものを作ると、自分の解釈が浅くなり、体験の品質が落ちます。自分たちで回していけないので、スピードも遅くなる。まずは組織改革を起こせるかどうか、ここが試されていくと思います。
そして取材の最後に伺えたのが、藤井さん自身の仕事観について。コロナを経て大きな変化を迎える時代、そこには「知的好奇心を刺激していくこと」そして「社会課題の解決につながっていくこと」の2軸があった。
『アフターデジタル』が幸運にも売れ、さまざまな方から「独立しないのか」「新しいことをしないのか」と聞かれるのですが、僕としてはあまり考えていないんですよね。
なぜなら、ビービットがやっていることは自分が「社会をこうしたい」というものと直結しているからです。会社であろうが、個人であろうが、軸としてあるのは、社会課題の解決につながっているかどうか。お金儲けはもちろん大切です。ですが、お金儲けは第一優先に来るものではないんですよね。
もうひとつ、僕としては「右脳」的な発想と「左脳」的な発想、この2つをバランスよく、常に高めていける環境に身を置くことが理想なんです。
もともと若い頃から音楽をやっていて、インディーズですが、CDを出したり、PVを作っていたりもしてきて。クリエイティブな活動を「右脳」的とするなら、ビジネスで理論を組み立てていくのは「左脳」的。それらが掛け合わさると思いもよらないユニークな発想ができる。
そして新しい人とつながり、知的な刺激をいただきながら、自分の発想をぶつけ、議論が生まれていく。自分もアップデートされていく。これがすごく楽しいことですし、一番のモチベーションなのかもしれないですね。
【前編】「監視」か「安心」か。中国のデータ社会、コロナが投げかける問い
【中編】コロナで進化、中国発サービスに見るUX至上主義
※本記事は、5月11日に実施した公開取材『コロナ時代を生き抜く方法』を編集したものです。公開取材の模様はYouTubeチャンネル「キャリアハック」でもご覧いただけます
【ダイジェスト版(20分)はこちら】
【ノーカット版(87分)はこちら】
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