「コロナショックで経営破綻」などのニュースで目にするものの、じつは会計やファイナンスのことってよくわからない…そんな人も多い? とっつきづらい会計用語、数字の見方がわかるとビジネスはもっとおもしろくなるはず。 そこで#ビジネスモデル図解シリーズ でおなじみ、チャーリーさんの「世界一やさしい会計解説」をお届け!
全2本立てでお送りいたします。
【1】社会人1年目で知っておきたい、会計のきほん
【2】あらゆる職種で知っておいて損はない「B/S」「P/L」「C/S」基本概念
「会計というと漢字だったり独特ないいまわしが多くて、苦手意識がある人も多いかもしれません。でも、会計の仕組みってホントはシンプルで、とてもよくできているんです」
こう語ってくれたのはチャーリーさんこと、近藤哲朗さん。
キャリアハック読者のみなさんにはおなじみ、チャーリーさんですが、ビジネスをより身近に。そして楽しく捉え、仕事に前向きに向き合っていくために過去2回登場いただいてきました。*
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3度目となる今回。チャーリーさんにぶつけたのはこんなテーマでした。
キャリアハックで会計の基礎を学べる記事が届けたいと考えています。とくにコロナショックによって社会が大きく変化し、不確定要素の多い状況です。破綻とか、赤字とか…そういった経済ニュースに不安を募らせるのではなく、一歩踏み込んで自分で調べたり、数字と正しく向き合う、そんなきっかけを届けたいです。
こうして実現したのが、チャーリーさんとお届けする「世界一やさしい会計の用語解説」
「知らないことでその楽しさが理解できないのはもったいない。会計を学ぶのはハードルが高い、そう感じる人に、入門書の入門書になればなと思っています」
キャリアハック読者であるみなさんも、ぜひ私たちと一緒に、知ればおもしろい、会計用語について学んでいきましょう。
教えて!
チャーリーさん!
ーまずそもそも「会計」がなんたるものか、あまりわかっていないのですが、そこから教えてもらってもいいでしょうか…!
じつはとてもシンプルで、会計とは「会社のお金の出入りを説明する」ものです。
会計って英語で「アカウンティング(accounting)」とも表すんですよね。「account」は「説明する」という意味。これだけでも「え?数字のことじゃないの?」と発見があっておもしろいですよね。
では、誰が、誰に、何を説明するのか。
主に、会社が「国」と「株主」に向け、お金の流れを説明するもの、と捉えられます。
会社は「国」に対して税金を払わなければなりません。なので、毎年「決算書」をつくってお金の出入りを報告していきます。
そして、会社に出資してくれる「株主」に対しても、お金をどう使い、どれだけお金を儲けたのか、説明する責任があります。また、今後投資してくれるかもしれない投資家や、お金を貸してくれる銀行に対する説明にもなります。要は会計は、お金のやりとりのある、利害関係がある人たちにむけて、説明するためのものなわけです。
このお金のやりとりがある人への「説明」こそ、会計なんです。
会計には1年ごとの区切りがあり、3月末に終わり、4月から新たに始まる会社が多いです。ただ、その時期は企業によって違います。
ー…なんだかちょっと身近に感じられてきました。
よかったです(笑)「会計」というと遠い存在のものと思われがちですが、僕らが普段「買い物」をすることも会計と同じ仕組みなんですよ。
商品を買って、お金を支払う。そういったお金に関する取引を、ひとつひとつ丁寧に記録しているのが「会計」なんです。つまり、会計は「膨大な記録」ともいえます。そんな難しい話じゃないんです。
ー少しずつ理解できてきました。ただ、まだまだ難しそう…というのが正直なところです。
そうですよね。
今回は入門書の入門書、入り口のところでわかりやすくお伝えできればと思います。
たとえば、図で「お金の流れ」が見えていくと、そのおもしろさも感じてもらえるはずです。
会社がどうやってお金の流れを記録しているか。複雑に思われがちですが、やっていることはシンプル。1つの図でカンタンに説明ができます。
まず基本図をご覧ください。
これが会計の全てではないのですが、①~⑨が「代表的なお金の流れ」と考えてもらえればいいと思います。
① … お金を集める
② … 集めたお金を商品に変える
③ … 商品を顧客に提供する
④ … 売上が生まれ、商品は費用になる
⑤ … 売掛金が入る
⑥ … 売上と費用を対応させる
⑦ … 売上から費用を引くと利益が出る
⑧ … 利益が純資産に入る
⑨ … 売上と費用は1年毎に計算される
ここからはそれぞれの流れについて細かく見ていければと思います。
まず会社を経営する上で、必ず必要なのが「元手」となるお金です。
たとえば、「起業しよう」と思った時は、
・銀行からお金を借る
・株主にお金を出資してもらう
この2つの方法でお金を集めますよね。会計上は、
銀行から入るお金 → 負債
株主から入るお金 → 純資産
と分類されます。
「負債」と「純資産」が合わさって、集めたお金は「現金」としてつかうことができるようになります。
ちなみにこの図は書き方が決まっていて、
・図の右側が「お金の出どころ」
・図の左側が「お金の使いみち」
を表します。
「どこからどれだけお金を持ってきたのか」がひと目でわかりますよね。「お金の出どころ」と「お金の使いみち」、この両面から見ていくことが、会計の基本的な考え方です。
さて、手元にある「現金」をどうするか。
「現金」のまま持っていても商売にならないので、何かしらに変える必要がある。多くの場合は「商品」や「サービス」など、お客さんに届けるための「価値あるもの」を作っていきます。
この図では、「現金」の一部を「商品」に置き換えているのを表しています。
つづいて「現金」から生まれた「商品」を、お客さんに売っていきます。
では、「商品」がもし売れたらどうなるでしょうか?
顧客が商品を買う対価として「売上」が生まれますよね。お客さんが1000円払ってくれたら、1000円分の売上になる。
売上は、お客さんからお金をもらっているので、ある意味で「お金の出どころ」ですよね。なので、売上は図の右側に記載されます。
そして同時に、「商品」と記載されていた部分は「費用」へと置き換わります。これはどういうことかというと、商品はお客さんに売ってしまったので、物としての資産はなくなります。
でも、商品をつくるためにかかったお金、つまり「費用」がありますよね。それがお金の使いみちとして、記録されます。
ここまでは、元手となるお金で、商品をつくり(仕入れ)、お客さんに買ってもらう。売上をあげる。費用がいくらだったか出す。シンプルな流れです。
ただ、「商品が売れたが、すぐにお金が振り込まれないケース」があります。むしろ企業間での商売であれば、それが当たり前ですよね。取引先に請求書を送って、翌月などにお金が振り込まれるのが一般的。
じつは、これは会計の世界では「売掛金(うりかけきん)」と呼ばれています。「売掛金」は、将来的にお金が入ることが見込まれる権利のこと。お金が振り込まれるまでは、「売上」は一時的に「売掛金」となります。
もしも、「現金」を直接手渡しできる商売なら「売掛金」と書かれているところには「現金」が入ります。
④の売上が生まれたタイミングで、「お金の使いみち」である左側に「売掛金」が入ります。
ここでは「売掛金」と「費用」の順番を変えています。単純に売上と費用を近くにあると「利益」が計算しやすくなるからです。
いよいよここで「利益」が計算できるようになりますよね。
シンプルに売上-費用=利益となります。
計算して出た利益は、「純資産」に入ります。それが1年ごとに計算されて、純資産が増えていく構造になっています。
現金で商品を作って、お客さんに売ることで売上をあげる。その分費用はかかるけど、利益は純資産として毎年貯まっていきます。
そうすることで、会社は大きく成長していきます。図の右側の純資産が増えれば、翌年に使えるお金が増える。そしてまた商品なりサービスを作り、お客さんに届ける。そのくり返しです。
ついに⑨まできましたね。図では「売上」と「費用」が消えています。これはなにを意味しているかというと、つまり「1年ごとにリセットされる」というイメージです。
1年のスタートは会社によって違いますが、多くの会社は4月1日から、売上と費用をその都度、計算していきます。
たとえば、売上が1億円、費用が8000万円とすると、差し引いた2000万円が利益になります。その2000万円の利益は純資産に含まれて、売上と費用はその時点でリセットされる。翌年の計算をしていくことになります。
一連の流れで、実は①の図と⑨の図は変わっているので見てみましょう。
①の状態から⑨になると、赤い矢印の分だけハコが大きくなっています。これは利益が増えたことによって、大きくなったことを表しています。
毎年の利益を増やすと純資産が増え、ハコの縦が長くなることで会社が成長していくんです。
9つの流れは会社によって違うこともあるけど、基本的には同じ繰り返し。どの会社も同じようなことを会計上はやっています。自分の会社もこの図を繰り返しているとイメージするだけで、お金の捉え方が少し変わります。
①~⑨までの図を見てきましたが、これがじつは、「貸借対照表(B/S)」「損益計算書(P/L)」を組み合わせたものなんです。
次回は、「(B/S)」「損益計算書(P/L)」について、そして財務諸表について触れられればと思います。
>>>【2】あらゆる職種で知っておいて損はない「B/S」「P/L」「C/S」基本概念
取材 / 文 = 野村愛
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