2020.08.19
今、そこに「Fun」はあるか。hey 佐藤裕介さんと考える“ 遊び ”の効能

今、そこに「Fun」はあるか。hey 佐藤裕介さんと考える“ 遊び ”の効能

個性的なオンラインショップが自由につくれる『STORES』が人気だ。運営するのは「Just for Fun」を掲げるhey。 感染症拡大など重苦しいニュースも多く、最近あまり「Fun」に目が向けられていなかったかも…?そこで、hey 代表の佐藤裕介さんと、こんな時こそ大切な「遊び」について考えた。

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意味を求めすぎるよりも「楽しさ」を。

hey社といえば、2020年8月4日、70億円超の調達&クービック買収という大きなニュースが話題になりました。一方、佐藤さん個人は秘書のうえのるいーずさんとビックリするくらい肩の力が抜けたstand.fmを配信していたりもして。

あんな、ゆるゆるのラジオを聴いてくださって(笑)ありがとうございます。

配信のファンです(笑)ただ、楽しみつつ「この配信の狙いは…いったい?」と考えてしまったりもします。

まあ、ビジネスに役立つヒント、とかそういうものが全くないコンテンツです(笑)むしろ「あまり意味がないものにしよう」と。

もともとコロナ禍で外出自粛になった時、近所の公園を散歩することが日課になりまして。その時、ラジオを聴いていて楽しかったんですよね。芸人さんのラジオとか。

ちょうど友だちの中川綾太郎が『stand.fm』という音声配信サービスをはじめたので自分でもやってみようと。最初は一人で配信していたのですが、秘書のうえのさんが誘ってくれて、最近は2人で配信しています。今の空気感として、自分でも求めていることだったんですよね。

「オーディオコンテンツって、そもそも「ながら聴き」するもの。あまり含蓄があったり、良いこと言っても、疲れちゃう。ちょうどいいさじ加減のコンテンツになるといいなと思っています」と佐藤さん。

自分の「内側」にも大きな世界がある

あらためて「自分はラジオが好きと気づいた」という感じでしょうか。意外と「自分を知る」が大切?

そうかもしれないですね。「今、自分はリラックスできている」とか「コレをやってる時の自分が好きだ」とか。自分の「内側」にも大きな世界があるから、そっちに意識を向け、そこに避難してもいい。こういう時だからこそ。

今って、文字通り「外側」がこわいんですよね。リアルな感染症もそうですし、オンライン上もこわい。誹謗中傷とか、デマとか。怒っている人たち、不安を煽る人たちもたくさんいて。

もちろん正しい情報は大切ですが、取り入れたら自分にとって「毒」になる情報も多い。むしろそういったものばかり。「外側」の環境がハードすぎる。「内側」つまり「自分に興味を持つ時間」があるといいなとは思うんですよね。

あとは…もう30年以上も「自分」を生きていると、自分自身に飽きる(笑)あえてちょっと変化に自覚的になる。

「何をするか・したか」ではなく、流れに任せて「自然にそうなった」「自然にしていた」ということにあえて目を向け、自分をおもしろがってもいいはずです。

いま、「古いうつわ」をおもしろがっています

佐藤さん個人として「今、おもしろがっていること」があれば教えて下さい。

それでいうと、完全に個人的な趣味ですが、「うつわ」とか「陶器」とかにハマっていて。『STORES』を使ってくれている骨董屋さんをチェックしたり、本も読んだり、異様なほど関心を持ち始めています(笑)

家にずっといると刺激がなくなるので、いかに家での食事を楽しくするか、食事のコンテンツ性って高まっていますよね。たとえば、デリバリーでも、お皿に移し替えて食べると楽しい。「うつわがいい感じだと、食事のときにテンションがあがるぞ」と気づいて。

たとえば、300年前のお皿とかって当時の偉い人が基本的には使っていたもの。「同じ皿で食べているんだな。完全にちょんまげの人たちだよな」と思うだけで、ひと妄想できます(笑)

そういう意味では、コロナがきっかけで、陶器についていろいろ調べたり、骨董屋さんのオーナーさんとつながって豆知識を教えてもらえたり、興味が持ててよかったですね。

それは、ホントに自分が取り扱える「問題」か

一方で、いわゆる「外側」のニュース、SNSなどの情報に触れ、いろいろ悲観的に考えたり、気分が沈んでしまう自分もいて…。

ありますよね。ただ、あまりに大きい問題に打ちのめされるのは良くないんだろうなと。コロナとか「外側」の問題は、いつどう終わるかわかりません。自分の手を離れた場所で起こっているから、コントロールできない。だったら、問題を自分の取り扱えるサイズに小さく”ちぎる”しかない。で、早くその問題に取り掛かるしかないんですよね。

コロナについてめちゃくちゃ調べて詳しくなった方が、正しい意思決定ができる、という人もいるのかもしれません。ただ、今、それを知ったところで目の前の「自分の問題」が上手くいくわけではないし、状況が好転するわけではない。

往々にして「冷静じゃない時」に判断を間違ったりする。本来は自分で取り扱える問題なのに、すごく不安になり、焦って、大きい問題に目がいってしまうとケアレスミスをしてしまう。その方がもったいないですよね。

冷静に、自分が取り扱える範囲を決めちゃって、課題解決をやろう、がんばろう。それ以外は考えても仕方がない。そんな風に切り分けられるといいのかもしれない。

歪ませないクリアな脳味噌、適切なインセンティブの中で、正しい意思決定をする。そのためのコンディションを維持する、メンテナンスのほうが重要だと思うんです。

そういった意味でも、リラックスする時間、遊びといってもいいのかもしれないですが、それを自然に求めていて。人間、どれだけ「火事場」になっても「24時間ずっと考え続ける」なんてことはできないですから。

今回の取材は『STORES』にてオンラインショップを運営する『BELTZ』のバスクチーズケーキを食べながら屋外で実施した。濃厚でありながら軽やかな食感、さわやかな甘さが虜になる一品。

自分らしい「how」でやってみよう

マジメな人、正義感が強い人ほど、大きな問題に打ちのめされてしまうのかな、と思ったりもします。

大きな問題に向き合っていくこと、その中で誰かに貢献したい、役に立ちたいと真剣に考えるのは、健全な精神ですよね。あとは、その「how」として、いわゆる正攻法じゃなくてもいい。自分らしい「how」がきっとあるんじゃないか、とも思います。

heyだと「Go Original」というスローガンを掲げているのですが、「誰でも、自分の中にそれぞれが持っているオリジナルがあるから、それで勝負していこう」という意味合いです。

ここには自分自身の原体験もあって。

僕、前の会社でエンジニアをやっていたのですが、作ったものを売るために、いわゆる営業も自分でやっていたんです。でも、ぜんぜん売れなかった。いわゆる「売り込み上手、バリバリの営業マン」みたいな人間じゃないし、なれないし。ずっと「売れないし、向いてねぇな」って思っていました。

で、もう何もかもめんどくさくなっちゃって。半ばやけくそで、スーツも着ずに、ラフな格好で大手航空会社さんに営業に行ったんですよ。当時、あらゆる承認が厳しく、予算もシビア、重い空気で。

そんなところに普段着で乗り込んで、モジモジしながら「エンジニアでこんなのつくってます。あまり上手くしゃべれないですが、自分で作ってるので、仕組みは詳しいです。ブラックボックスにしません」とか、がんばって説明しました。そうしたら話が下手すぎて、むしろ信用してもらえた(笑)

「社会常識は著しく欠如している。ただ、彼はきっと製品のことについて嘘が付けないタイプだろう」と。それが人生で初めてちゃんと自分で営業してお金を払ってもらった体験でした。

いい感じのセールストークはできないけど、むしろエンジニアならエンジニアらしく、自分が何を考えて作ったか、そのまま話せば伝わることもある。それぞれのやり方があっていいんだと身を持って知ることができました。

自分の今までやってきたこと、持っているもの、考えてきたことって過小評価しがち。「どうせ自分は大したことがない」「まわりの人の方がすごい」とか。でも、「内側」にあるものにこそ、オリジナルの価値があったりもする。

『STORES』のオーナーさんにお話を聞いても、最終的には「自分の中にあるもの」を吐き出していて。自分の人生って一個しかないから、深く自分と関係しているものでつくれば、独自になる、とお話される方が多い。だから、考えてきたこと、ストーリーを素直に世の中にまっすぐ提示している。それが独りよがりにならないよう、お客さんと接点を探していく感じですよね。

STORES公式Twitterにてアップされる「お商売やっててうれしかった瞬間」のイラスト。実際のオーナーさんの「声」がイラストと共にシェアされている。

やってきたこと、考えてきたことを、求めている人がいて、商品を買ってくれる。ニッチでも、世界のどこかには似た人がいて、ネットを通じてマッチングしやすくなっています。

「自分がこだわりをもって夢中になれること」がちゃんと発見される。そこに救われている、という人がたくさんいます。そういった意味でも、自分の「内側」にあるものに、まずは目を向けてみてもいいのだと思います。


撮影協力:Good Morning Building 『アンペア (ampere)


取材 / 文 = 白石勝也


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