プロダクトマーケティングマネージャー(通称:PMM)という新しい職種が、いまデジタル領域において注目を集めている。PdMとの違いは?具体的な業務は?SmartHRでPMMを務める重松裕三さんの解説をお届けします!
※2020年10月27日に開催された【Product Manager Conference 2020】よりレポート記事をお届けします。
【プロフィール】 株式会社SmartHR プロダクトマーケティングマネージャー 重松 裕三
新卒でpixivに入社。プロダクトマネージャーとしてCtoC ECなど、複数の新規事業立ち上げを手掛ける。 2019年9月にSmartHR入社。プロダクトマネージャーと協働するプロダクトマーケティングマネージャーにポジションを移し、人事情報を活用し組織の力を向上させる新規サービスを企画・開発している。
▼目次
PMMの役割とは?
PMMを置く、メリット・デメリット
PMMの業務:ポジショニング、リリース管理、営業資料作成...
PMMは特にSaaS企業で置かれている
「たらい回し」を経て、PMMを設置
「PMM」になる人はマーケティング経験者が多い
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「PMM」という職種名、まだまだ聞いたことないよという人も多いかなと思います。グローバルではプロダクトマーケティングに関する議論はかなり活発におこなわれているのですが、日本はまだまだ少ない職種です。
そもそも、「PMM」とは何なのか?SmartHRでは、PMMをこのように定義しています。
・どのようなプロダクトが売れるかを考え、そのプロダクトを売る方法を決める。
・ユーザーの潜在ニーズを見つけ出し、そのニーズを満たすようなプロダクトの概念や売る方法を考え、その売り上げに対して責任を持つ。
このような役割をPMが担うことが多いと思います。私自身、前職ではPMとして顧客ヒアリングをしたり、どういったものを作るのか、作るべきなのか、どう届けるかに関して検討していたりしました。
では、どうして「PMM」が存在するのか?
PMとPMMの役割分担はこちらのスライドを見ていただけると少しイメージを掴んでいただけると思います。
上がPM一人の開発チームで、下にあるのがPMMのいる開発チームです。いわゆる、PMとPMMの分業体制になります。
PMMは、カスタマーサクセス、セールス、マーケティングといったビジネスに関わる人を取りまとめる。PMは開発に関わる人たちを取りまとめる。それぞれがステークホルダーの「ハブ」としての役割を担うイメージです。
PMMを置くことによって、PMはコミュニケーションのステークホルダーを減らせます。
特にSaaSを提供する企業にとっては非常に有効です。SaaSの組織作りのお手本とされている「The Model」では、営業効率を最大化するために分業体制が提唱されています。
一方で、分業をしていくと必然的に部署が増えていき、部署横断のコミュニケーションコストは高くなります。
PM一人ですべてを担うのは、非常に大変で時間のかかることです。PMMを置くことによって、負担を大きく軽減できると思います。
続いて、「プロダクトマネジメントトライアングル」を用いて、PMMの役割を考えてみましょう。
PM一人体制の場合、一人でこのトライアングルの空白を領域を埋めていく、あるいは融合領域の衝突を解消していくことがPMの役割とされています。
PMMがいることにより、トライアングルの分担が可能になります。PMは開発者側の立場でプロダクトを作ってそれを顧客に届けていく。PMMはビジネスサイドの立場でプロダクトを顧客に販売しマネタイズする。それぞれの領域で役割分担ができます。
PMとPMMで役割分担ができると、PMの経験のない人、たとえばマーケティングやセールス出身の人がトライアングルの一部を担うケースも増えてくるのではないかと思います。
ちなみに、SmartHRではPMが10名、PMMが7名いて、プロダクト単位で連携しています(※人数は、2020年10月時点)。1つのプロダクトに対してPM1人、PMM1人がつき、開発チームを束ねています。
次に、PMとPMMの分業体制によるメリットとデメリットのお話をしていきたいと思います。
メリットは、専門性を上げられることです。
PM1人体制の場合、リサーチから開発、マーケティング、セールスまで、全てのフェーズを一人で担当するケースが多いですよね。けれど、いずれのフェーズも同時並行で進めなくてはならず、たとえば開発に手が取られて、セールスがおろそかになってしまうことも...。
PMMがいることで、PMは開発に専念しつつ、PMMが同時並行でマーケティングやセールスにコミットできます。
このように専門性を高めてより精度の高い仕事ができるというのが、分業体制のメリットかなと思っています。
デメリットは、ステークホルダーと直接やりとりすることが減り、実態を把握しにくくなることです。
ビジネスサイドの要望をPMがタッチしづらくなったり、開発サイドのことをPMMが把握しづらくなってしまったり。たとえば今まで1人PMでやっていたときは、お客様の情報をカスタマーサクセスから聞くことができたのにそれができなくなってしまう。
そのため、PMとPMMとの間のコミュニケーションが非常に重要です。
SmartHRではSaaSプロダクトを扱っていてステークホルダーが多いため、PMとPMMの分業によりそれぞれがプロダクトサイト・ビジネスサイドの専門性を高めることでより高いクオリティの仕事が可能になります。PMとPMMのコミュニケーションの重要性は増しますが、より精度の高いアウトプットのために必要なことだと考えています。
PMMの具体的な業務についてお話ししたいと思っています。
PMMといっても実際の業務は多岐に渡ります。こちらの図では、7つのステージに分けて、PMMの業務を整理してみました。
今回はざっくり、「プロダクトのローンチ前」と「プロダクトのローンチ後」の大きく2つで見てみましょう。
ローンチ前は、ポジショニング、メッセージング、顧客からのフィードバックの収集、あるいはプロダクトをマーケットに投入する、GTM(Go-To-Market)戦略の策定をおこないます。
ローンチ後は、プロダクトをよりよくするためのリサーチ、改善ポイントの策定を、カスタマーサクセスなどを通して収集していく。そして、プロダクトにフィードバックしていきます。
いま紹介したのは、新規プロダクトのローンチにおけるプロセスのため、既存プロダクトでの場合は異なります。7段階ではなくて6なのか8なのか変化する可能性もあります。あくまで参考までにご覧いただけるとうれしいです。
続いて、どういう場合にPMMを設置するのが望ましいのか紹介します
プロダクトマーケティングアライアンスの調査結果では、PMMの所属企業は73.3%がBtoBの事業を展開している企業とされています。つまり、BtoBにPMMを置く場合が多いです。
取り扱うプロダクトに関しては、SaaSが74%です。
このようにPMMはとりわけSaaSで設置されることが多いといわれております。
一方でGAFAなどにもPMMがいたりしますし、toCを扱うプロダクトにももちろんPMMがいるケースも非常に多く見かけます。
企業のフェーズとしては、中規模のミドルステージからPMMが置かれることが多いです。プロダクトマーケットフィットが進んである程度組織が大きくなってきたタイミングでPMMが設置されるケースが多いようです。これはSmartHRでも同様のことが言えると思っています。
SmartHRでは、2019年の7月頃からPMMが設置されています。きっかけは、新しい機能をリリースでした。
誰が新プロダクトに対して、全体の売り上げに責任を持つのか?
誰が顧客へのメッセージを決めて営業資料に落とし込んでいくのか?
誰が機能開発の優先順位を決めていくのか?
このあたりで、“だれが責任を持っているのかわからない”という状況になっていました。セールス、カスタマーサクセス、プロダクトマネージャーの中間地点にボールが落ちてしまった。いわゆる「たらい回し」の状況が起こってしまったのです。
私たちはこのような教訓から「たらいまわしが2回起こったら、新しいポジションを作ろう」というルールにしています。
最後に、どういった方がPMMに向いているのかお話ししていきます。
こちらもプロダクトマーケティングアライアンスの調査なんですけれど、PMM以前の経験としてはマーケティングが一番多く、次に多いのがPMです。
PMMはビジネス領域に責任を持つので、マーケティングやセールスの経験が糧になりやすいのだと思います。
個人的に向いていると思うのは、顧客と接点を持つことに大きなモチベーションを感じる方です。この人のために何かを作りたい、何を作るべきか考えていきたい。もしくは、売り上げに責任を持ちたいというモチベーションの方に向いていると思います。
私自身もともとPMでしたが、要件定義とか資料策定とか開発に近い領域というよりは、マーケテイングや市場調査など、ビジネス領域が好きで、PMMへの転向を決めました。
たとえば今PMとして働いていて、とりわけビジネス領域に関心が強い方であれば、PMMというポジションは市場に向き合うことに集中できるので非常に面白みを感じられるのではないのかなと思っています。
マーケティングとかカスタマーサクセスのバックグラウンドを持っている方でプロダクトに近いポジションで働いてみたい方が向いていると思います。
講演のスライドはこちら↓
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