利用者数1000万人を突破した『家族アルバム みてね』。パパ・ママが撮った子どもの写真や動画を招待した家族にだけ共有ができる。ユーザーから愛される秘密は、ユーザーインタビューにあった?! その実施のコツをデザイナーであるナカムラユカリさんに解説いただいた。
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はじめまして、『みてね』のチームでデザイナーをしているナカムラと申します。
本日は、『みてね』として大切にしてきた「ユーザーインタビュー」についてお話したいと思います。デザイナーである私自身、よく実施してきたのですが、失敗も踏まえて、ポイントをお話できればと思います。
とくに今回は、よく陥りがちな落とし穴として「3つのケース」をご紹介していきます。
まず、1つ目に陥りやすい落とし穴が「仮説に寄せちゃう」です。ついついやってしまいがちなところ。
当然、ユーザーインタビューには目的があり、仮説を検証するために行います。ただ、仮説ありきでわかりやすい「イエス」か「ノー」の判断をしてしまったり、手っ取り早く結論を出してしまったり。
ただ、それでは、インタビューが形式的なもの、答えから逆算したものになってしまいます。できれば、仮説にとらわれすぎず、たくさん知見を得られるようにしたい。
その「仮説に寄せすぎちゃう」をどう防ぐか。大きく2つの解決策があると思っています。
解決策(1)クイックラップアップ
ユーザーインタビューを終えた直後にラップアップ、振り返りをするようにしています。参加したメンバーたちで「気になったところ」「気づいたところ」「意見」など、多くの視点を出し合っていく。そうすることで、一人の視点では気づかけなかったところ、見落としていたところに気付けるため、必ずやるようにしています。
解決策(2)録画+書き起こしを見直す
インタビューはきちんと録画+書き起こしを見直していく。あまり時間がなく、スキップしたり、「メモ」で終わらせてしまいがち。ただ、それではきちんとした分析ができないので、しっかり見直すようにしています。
無意識に「仮説に関係あるところ」を拾ってしまったり、大切なところを切り捨ててしまったりしてしまいがち。せっかく手間暇をかけてインタビューを実施するなら、より有意義なものにするために、仮説に囚われすぎないことが大切だと思います。
次の落とし穴は、インタビューでの結果を「鵜呑みにする」です。
たとえば、「5人中4人が●●●と言っていたから採用!」といったケースですね。その気持ち、とてもよく分かります。ただ、ちょっと踏みとどまってみましょう。
インタビューした人たちが「たまたまそう思った」だけかもしれません。
では、どう解決していくのか。3つの解決策をご紹介します。
解決策1:発言背景を探ってまとめる。
発言をそのまま鵜呑みにしないためには、その背景を探っていきましょう。この時、先ほどの録画+書き起こしが役立ちます。
インタビュー終了後、主にこの7つの視点で、録画+書き起こしを見直します。
・その発言のとき、何をしようとしていたか?
・目線はどこにあったか?
・どういう言葉を使っていたか?
・何を想定しているのか?
・何と比較しているのか?
・人となりの自己認識はどのようなものか?
・何を失うことを恐れているのか?
後半にある「人となりの自己認識」を踏まえるもポイント。たとえば、その人の性格が客観的にどういうものか、また、自分でどのようにキャラクタライズしてるか。加えて、海外ユーザーの場合は、その国の文化のことも含めて吟味していきます。
なお、人は「何かを得るポジティブな欲求」よりも「何かを失うネガティブな欲求」のほうが強い、と言われています。なので、一番最後の「何を失うことを恐れているのか?」も押さえていきます。
たとえば、「楽に簡単に使いたい」という要望があっても、その「楽に・簡単に」の定義や隠された本音はわかりません。だからこそ、本当に失いたくないものは何か、見極めていく必要があります。
解決策2:矛盾ポイントをみつける
続いて「鵜呑みにしない」ための解決策2は、「矛盾ポイントを見つける」です。
たとえば、ある機能について質問した時、インタビュー前半は「良い機能ですね」とポジティブな反応だったものの、後半にトーンダウンをしたり。その場では「そう言ったほうが正しいと思ってもらえそう」「わかっている人、賢い人だと思われそう」と、無意識に良いと言ってしまうこともあります。矛盾ポイントを探っていくと、その人さえ気づいていなかった本音が隠れているかもしれません。
解決策3:定量データと合わせる
もうひとつ、インタビューの内容だけではなく、定量データを見ていくことも発言を鵜呑みにしないコツ。たとえば、ユーザーの行動データ、購買データと照らしていく。そうすることで、説得力のある数字で「◯名中◯名がこう動いている」と、根拠を示しやすくなるはずです。
最後の落とし穴ですが、「まとめがただの議事録」です。とくにデザイナーになりたての頃、議事録を任されたのですが、私自身もよくやってしまっていました。
なぜ、ただの議事録にしてしまっていたのか。
単純に「まとめ方」を知らなかった、というのもありますが、「自分の先入観が入ったらダメなもの」と思っていました。ただ、事実をありのまま書き起こすことが大切だとは限りません。そして、ただの議事録からは「見えない視点」が必ずあります。
この「ただの議事録」をどう防いでいくか。3つの解決策をお伝えします。
解決策1:誰に何を伝えるためのまとめ?
誰に、何を、伝えるためのまとめか、ここをはっきりさせた上でまとめましょう。どういった前提から伝えるのか、結論と、その根拠はわかりやすいか。どう活かしていけるのか。意識をしていくだけでも、まとめのクオリティがアップする部分だと思います。
解決策2:パターンを見出して分類する
また、どの機能に対する、どういった時間軸に対して言っているのか。複数のユーザーが似たことを言っていたのか、異なることを言ったのか。まとめる時には、パターンを見出し、わかりやすく分類しましょう。
解決策3:世の中に広まっているテンプレートを使う
インタビュー結果をただの議事録にしないために、世の中に広まっているテンプレートを使うこともおすすめ。たとえば、ペルソナ、エンパシーマップ、カスタマージャーニーマップなど、メジャーなものであれば、何でもいいと思います。 型にすることで、受け取り手もわかりやすくなるはずです。
最後に、なぜ、私たちがユーザーインタビューを大切しているのか、お話しできればと思います。まず前提として『みてね』のデザイナーたちは「ユーザーの声を聞く」ことを日常的にやっています。それがDNAに刻まれているのでは?(笑)と思うくらいですね。
ユーザーインタビューに限らず、定量データ、アプリのレビュー、身近な知り合い、社員ユーザーの声、さまざまなところからキャッチアップしていく。
とくに何かプロジェクトが始まる時は「リアルな声」を持っておく。そうすることで、機能の追加にしても、関連サービスのリリースにしても、その方向性でいいのか、判断のための重要な材料となります。また、子どもはどんどん成長し、また新しい子どもが産まれてくる。世の中のトレンドも変わっていく。そのユーザーを取り巻く状況を把握するためにも欠かせないのが、ユーザーインタビューだと思います。
ただ、ユーザーインタビューは万能ではありません。もし「インタビューはしているが、成果につながらない」という時は、分析が上手くいっていない可能性も。もしかしたら、ユーザーインタビューではなく、定量的な測定をしたほうがいいかもしれません。
あくまでもユーザーインタビューは一つの判断材料。あらゆる方面から「ユーザーの声」に耳を傾け、きちんと使ってもらえるものにしていく。ぜひここを意識していくといいかと思います。
取材 / 文 = 白石勝也
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