2021.12.08
ミクシィ 笠原健治さんが語る「新規事業」の見つけ方。ヒットするコミュニケーションサービスのポイント

ミクシィ 笠原健治さんが語る「新規事業」の見つけ方。ヒットするコミュニケーションサービスのポイント

ユーザー数1000万人を突破した「家族アルバム みてね(以下、みてね) / FamilyAlbum」を手掛けるミクシィ 笠原健治さん。いかに「新規事業」を見つけていくか。そして、ヒットするコミュニケーションサービスのポイントとは?

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※2021年10月26日に開催された【Product Manager Conference 2021】より、株式会社ミクシィ 取締役ファウンダー 笠原 健治さんのセッション「「みてね」のこれまでとプロダクト作り」をピックアップ。書き起こし形式で編集したものをお届けします。


・前編ミクシィ 笠原健治さんが語る「みてね」誕生と成長のウラ側
・後編「ミクシィ 笠原健治さんが語る「新規事業」の見つけ方」

社会変化のタイミングに、新規事業は生まれる

ここからは新しい新規事業の見つけ方、その大枠の話をしていければと思います。

ぶっちゃけ、新規事業が成功するかどうかは最初のコンセプト次第、6~7割くらいがそこだけで決まるような気がしています。ただ、一方でそう簡単には見つからないと思っています。

さまざまな見つけ方があると思いますが、いったん自分として大事だと思うことを2つご紹介します。

まず1つは、新しい技術、新しいプラットフォームの出現、あるいは大きな社会変化はチャンスだと思います。今だとコロナもそうだと思いますが、変化が起きている以上、ピンチですが、最大のチャンスでもある、と。

そもそも新規事業は新しいユーザー体験を提供できるかどうか、ここが1番大事なところです。その体験を自分たちで作り出していくこともできると思うのですが、平時に作り出せることには限界があると思っています。

マクロな環境、外部的に見て大きく変わっていく流れの中から新しいユーザー体験を作り出していく。すると、てこを生かすことができ、大きくインパクトを与えやすいのではないかと思います。

ブレイクし、成熟したサービスの、その次を見る

もう1つは、あるサービスが出現し、成熟化してくることで、次のサービスの存在意義、存在理由が生まれてくることもあるんじゃないか?という部分です。

もしかしたら、mixiがあったことで、LINE、Twitterなど、SNSに慣れた人たちが理解しやすく、スムーズに入れた側面もあったのかもしれません。

もちろん、LINEは携帯キャリアのメール、電話があったからこそスムーズに使えた人たちがいた。mixiも、始まる数年前からブログや2chがあったからこそ、ある意味、情報発信に慣れ始めてきた人たちが入りやすかったのだと思っています。

大きくブレイクしているサービスがあった時、「じゃあ、この先に何が実現できるかな」も考えられるでしょうし、少し前に出現し、大きくブレイクして成熟化したサービスがあれば「今だからこそ生み出せるもの」を生み出すチャンスもあると思います。

共有したいコンテンツ × 共有したい相手

そして「ヒットするコミュニケーションサービス」も、簡単にはできない話ではありますが、因数分解できると思います。

それは「共有したいコンテンツ」×「共有したい相手」です。

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大事なのは、そのどちらか、あるいは、どちらにも新しい発明、新しい価値、新しいユーザー体験が作れるかどうか。

それが充分に魅力的だった場合、あるいは充分に差別化され、ユーザーに刺さった時、コミュニケーションサービスとして大きく跳ねるのだと思います。

「みてね」で言うと「共有したいコンテンツ」は、子どもの写真・動画ですよね。「共有したい相手」は誘った家族です。両方とも狭い概念だとは思うのですが、ただ、家族とだけ共有できるからこそ、安心してアップできるし、誘われた家族も、100%視聴率のユーザーになり、熱心に喜んで見てくれる。だからこそ、あげる方も、ストレスなくあげられる、そういう循環があると思います。

共有したい相手が広いとより総合型のSNSっぽくなり、狭いと分散型のクローズドな空間になっていく。後者のほうが熱量としては生み出しやすい面もあるでしょう。

どちらが良い、悪いといった話ではなく、今後も、そういう意味で、まだまだインターネットのなかに、いろんな形のコミュニケーションサービスが生まれていく可能性があると思っています。

粘りさえあれば、多くの事業はうまくいく

新規事業としてやっていくことが決まったなかで、何を見てサービス改善を行うのか、ここもお話できればと思います。

1番大事だと思うのは、自分だったり、チームメンバーだったり、どこまで粘って向き合うことができるか。その「粘り」さえあれば、大体の事業はうまくいくと思っています。

ただ、「がんばる場所」を間違えると、いくらがんばってもうまくいかないことはあります。

自分の中で大切だと思うことは、まずそのプロダクトを少し俯瞰し、離れた場所から見て、「1番の課題は何か」を見極めることだと思います。いま起きている状況ではなく、1番大事なことは何か、その大事なことにリソースを割き、課題の解決を図っていく。残ったリソースで、周辺をかためていくことがまずは大事だと思っています。

次に「(ひとつの課題に対して)やり過ぎない」ということ。やはり完璧にはできないので、その大事だと思う課題に対し、一定改善したら、次の課題に移っていいと思います。

次の課題へと移っていくなかで、「最初やったことの結果はどうだったのかな」と時々観察します。そしてまた2番目の課題に向き合って解決していったら、3番目に移りつつ、同じく2番目が、その後どうなっているか見極めていく。どんどん移っていくなかで、気づいたらサービス全体が、らせん階段のように良くなっている。こういったプロセスが大事だという風に思っています。

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数値は、当たり前ですが、だいたい上がっているか、下がっているかどっちかです(笑)

とにかく、どこかの数値が上がってることがすごく大事。重要視している指標がなかなか伸びない局面もありますが、何か施策、改善を“揺らしている”と、どこかの指標がポコっと上がることも。大切なのは、その上がった指標をよく観察し、なぜ上がったのか、理解しながらその指標にフォーカスする。より大げさに、そこを盛り上げていく。その結果、大事な指標が連鎖してあがることもある。なんとか揺らしながら、上がっていくところを大事に育て、やっていくのがいいと思います。

その時、先に話した通り、網羅的にユーザー像を押さえている、引出しに入っていることは大事かと思います。断定的にしかわかっていないと、断片的にユーザーから言われたことを、まずやってしまったりすることがあります。ですが、網羅的に掴んでいれば、一定の反作用はあることを理解しながら、その施策を進めていくことができます。

よくあるのが「ヘビーユーザー」と「初心者ユーザー」の声をどう聞くか。ヘビーユーザーの声をあまりに聞きすぎると、初心者ユーザーには難しいサービスになってしまう。ここも俯瞰してユーザー像を掴んでいると防ぎやすい話だと思います。

とはいえ、自分自身がヘビーユーザーであることは大切なこと。すごく判断が難しい案件、決断しづらいことも多々あるわけですが、最後の最後は自身がヘビーユーザーだと決断しやすいと思います。少し失敗したときにも気づきやすい。ヘビーに使う、作ってるプロダクトをすごく愛することは大事な点ではないでしょうか。

好きなことをとことん追求し、幸せなプロダクトづくりを

最後に、そのサービスを作っていく中で、好きなことをとことん追求していけるといいなと思っています。

もちろん、好きなことをプロダクトとしてやっていくこともアリですし、やっているプロダクトをとことん好きになっていくこともアリだと思っていて。

これだけ、たくさんの人が発信したり、作ったりできる時代のなか、勝ち切るために、あるいは付加価値を出し、世の中に感動を届けるためには、やはり好きなことをとことんやっていくしかないんじゃないか、と思います。

過程においても、夢中になりながら、ワクワクしながら作っていくことができたらいいですし、大事だと思っています。作り手が楽しみながら、ワクワクしながら「これがおもしろいんじゃない?」と作ったサービスは、必ず使い手にも伝わるはずです。逆に、楽しまずに作っているものはそこまで伝わりきらない。

「みてね」は少し特殊だったかもしれませんが、家族への、子どもへの愛情をダイレクトに投影できるサービスだったのも非常に良かった点かと思っています。

チームメンバーもそうだと思いますが、私自身も子どもへの愛情、家族の愛情は、底抜けにあります(笑)なので、子どものためでもあり、家族のためでもあるし、そういうサービスを作ることができている。とことん愛情を注ぐことができる。ここが強い部分でもありますし、それが幸せなプロダクトづくりなのかなと思っています。

(おわり)


編集 = 白石勝也


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