2022.03.14
マネジメント・人間関係の悩みに、コーチングの考え方が生きる!? ベイジ 枌谷力&こばかなの視点|後編

マネジメント・人間関係の悩みに、コーチングの考え方が生きる!? ベイジ 枌谷力&こばかなの視点|後編

ベイジの枌谷力さん、THE COACH こばかなさんによる、お悩み相談・コーチング×マネジメントの考え方をお届け。「権限委譲がヘタ」「27歳で課長…自信がない」「仕事ができない上司に心が疲れ果てた…」イベント参加者から寄せられたリアルな悩みに2人はどう答えた!? 後編をお届けします!

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2022年1月26日に開催されたオンラインイベント『マネジメント×コーチング「現代のマネジメントに生きるコーチングの考え方』(THE COACH主催)より、書き起こし形式、前後編の2本立てでお届けします。前編はこちら

【登壇者】

株式会社ベイジ代表/クラスメソッド株式会社CDO 枌谷 力

株式会社ベイジ代表/クラスメソッド株式会社CDO 枌谷 力
BtoBサイトの制作と業務システムのUIデザインに強い会社ベイジ代表。およびクラスメソッドCDO(Chief Design Officer)。新卒でNTTデータに入社し、営業職に配属。28歳で実務未経験でデザイナーに転職し、制作会社を2社経験したあと、35歳でフリーランスとして独立。その後2010年にベイジを起業。デザイン、Web、マーケティング、コンテンツ、SNS、採用、組織マネジメント等、幅広いテーマで活動。登壇&執筆多数。経営者として登壇や寄稿をすることが多いが、本職はデザイナーであり続けたいと思っている。

THE COACH 代表取締役 小林 かな(こばかな)

THE COACH 代表取締役 小林 かな(こばかな)
デザイナーとして株式会社DeNAに入社後、株式会社THE GUILD、フリーランスを経て株式会社THE COACHを創業。キャリアとエグゼクティブを中心にコーチングの実績400人以上。国際コーチング連盟認定コーチ(ACC)。THE COACH Academy開講以来、講師として150名以上のトレーニングを担当。Twitterやnoteでコーチングについて発信しており、SNS合計フォロワー数6万人以上(2021年3月時点)。


目次
・仕事ができない上司・同僚に、心が疲れ果ててしまっています。
・モチベーションのない社員にどう指摘する?
・「フリーライダー」とどう接するべき?
・目の前の業務を回す事でいっぱいいっぱいに…
・「ありたい自分」と「組織から期待される自分」にギャップ…

仕事ができない上司・同僚に、心が疲れ果ててしまっています。

(5)質問失礼いたします。傲慢な悩みだと思われるかもしれませんが、仕事ができない上司や同僚にストレスが溜まり続け、心が疲れ果ててしまっています。相手に改善を求めたいのですが、その伝え方に関してご助言を頂けたら嬉しいです。相手を傷つけたり、人間関係を壊したくありません。最近、アサーションという言葉を知りました。相手を尊重しつつ、自分の考えを率直に伝えるということで、まさに私が今身に付けなければいけないスキルだと思いました。この「アサーション」という概念に関しても、お二人のお考えをお聞きできれば嬉しいです。何卒宜しくお願いいたします。

アサーション=コミュニケーションスキルのことで、 相手に対して自己主張を押し付けすぎず、逆に主張を我慢することもなく、 自分と相手の両者を尊重しながら意図を伝えるためのコミュニケーションを指します。

枌谷:
これもまた難易度の高い質問ですね。私、この立場だったら、今日2回目ですが、転職しちゃうかもしれません。ただ、まじめにお答えすると、あまりストレートな回答にならないかもしれませんが、基本的には他人を変えるのは無理だという前提に立っているので、書かれているように仕組みを変える考え方に賛成です。

一方で、こっちが考えていること、不満を伝えないでいると、それはそれで相手がこちらのことを理解してもらえていない状態がずっと続く。ですので、「上司に相談する選択肢を除外しています」とありますが、相手が傷つくかもしれませんが、全てストレートに「自分にはこう見えています」と認知の状態を伝えるのはやったほうがいい気がします。

それを伝える時、私が推察するに、きっと上司に対する憎悪の感情が湧いた状態だと思いますが、「仕事ができない人」という目で見てしまうと、イライラしてしまうし、攻撃する口ぶりになってしまう。ですので、相手を「こういう特徴を持つプロダクトである」「こういうスペック・仕様なのか」と捉えてみる。すると、その人にはその人なりの良さであったり、あるシチュエーションにおいて良いところがあったりもする。そういった「余地」があることを前提に、できるだけ客観的、冷静に「いま、自分は困っています」「このままいくと自分の心が壊れてしまう」「やめざるを得なくなってしまうのですが、どうすればいいですか」と主張した方がいいと思います。これが最後に書いてあるアサーション、「相手を傷つけず、でも、自分の主張はちゃんとする」みたいなことかと思います。

こばかな:
そうですね。私もこの文面から心労というか、相当悩まれてきたんだろうなと感じました。まずはもう本当にお疲れさまですと伝えたいです。かなり長い間、向き合ったんだろうなと。

「アサーション」は、自己主張を押し付けすぎず、かつ、我慢もし過ぎない。両者を尊重しながら、建設的に意見を伝え合うコミュニケーションスタイルのことですよね。どんなケースでも使える考え方だと思うので、この質問者さんがその言葉にピンと来ている、ということは、まずはそこにトライしてみることにすごく価値があると思いました。

もちろん、それで解決するとは限りませんが、コミュニケーションのスタイルから切り替え、自分自身にどういう変化があるのか、経験してみるのがいいと思います。そうすれば、この会社ではダメだったとしても、次の会社で生かせる経験になる可能性もあり、発見につながることもあるのかもしれません。

枌谷:
良くないことのようですが、私は社員と話す時、人によって言うことを結構変えるんですね。たとえば、言葉に無頓着で相手を傷つけることが多い人には、「人を傷つけることを言わないように配慮しましょう」「人間関係を壊すようなことを安易にするのはやめましょう」と言うべき。ですが、この質問者さんのように、人を傷つけたり、人間関係を壊すことはしたくない思いが強い人には、逆に「時には人を傷つけたり、人間関係が変わることも恐れずに主張したほうがいい」と言った方がバランスが取れる気はして。質問者さんは人を傷つけたり、人間関係を壊したりするタイプの方じゃない気がするんです。なぜなら、そういう方はこんな質問はしないはずだから。だからアサーションという言葉もありますが、逆に、傷つけることを恐れずに言いたいことを言っちゃってもいいんじゃないか。その瞬間、上司が不機嫌になったり、嫌な感じになっても、それが半年後、一年後に良い関係になることもあるので、思い切って言ってみる選択肢もあるのかなと思います。

こばかな:
それもすごくよくわかりますね。私もこの質問者さんと似たタイプなんですよね。あんまり思ってることが言えない。ですが、そういう自分に対して思うのは「ちょっと言い過ぎるくらいのモードでちょうどいい」ということ。質問者さんが言い過ぎたと思っても、それが言い過ぎになることはないんだろうなと。想像でしかありませんが、勇気を出して大丈夫だと思いました。いやぁ…応援したいですね、こちらも。

枌谷:
ほんとそうですね。頑張ってほしいですね。今後どうなったかまた聞かせていただきたいです。

モチベーションのない社員にどう指摘する?

(6)6年目のデザイン会社を経営しています。若い人でなくて、30代中盤のリモートでかつ中途でモチベーションがなく、コミュニケーションがとりづらく、共創してより良いものをつくる姿勢がない人に対してどのように指摘やフィードバックをすれば良いかわからなくなっています。こうやってさらに上を目指してほしい。こうしてほしい、あーして欲しい。などは言うことを諦めその人にあった仕事だけを依頼するようになりました。組織にそのような人が1人しかいない場合。経営者としてはどのような行動をとるべきでしょうか?またコーチングはこのような時に有効ですか?自分とまわりのモチベーションを下げてしまい、非常に高コストで負担を感じています。

枌谷:
これは経営者目線で言うと「採用をやり直しましょう」とまた身も蓋もない話になってしまうのですが。こういう状態にならないよう、自分の会社の場合、採用を慎重にやってきた部分はあるかもしれません。この状態から復活することはすごく難しい。無理ではないと思いますが、難易度は高いですよね。採用するよりもずっと。

こばかな:
コーチングのコミュニケーションが有効だとするならば、そのモチベーションが感じられない社員の方も「何かを得たいからその会社にいる」わけですよね。いったいそれが何なのか、改めて引き出してみることは有効かもしれません。

たとえば、「成長したい」なのか「お金のため」なのか。そのモチベーションにフィットする仕事のあり方だったり、アサインのやり方を少し変えたら、その人が劇的に変わる可能性もなくはない。その人自身の個人のビジョン、ミッションと会社として向かっていく方向が、どうにかクロスしないか。そこを引き出すのはコーチング的なアプローチで可能かもしれません。

あとは、これも身も蓋もない話ですが、もしこの方がいろいろやっても本当に変わらないのであれば、自分にとっても、相手にとっても、お互い大切と思えない関係性ですよね。その方にとっても、別の場所で、もっと活躍する部分はたくさんあると思うし。そう思うと、自分たちにとってすごく大切なメンバーたちのことをまず第一に考える。そう頭を切り替えるのもアリかと思います。それほど大切じゃないメンバーのためにみんなに負担がかかり、モチベーションが下がるのは、本当に誰も幸せにならないですよね。なので、その人に任せられる仕事があると文面にはあるので割り切ってしまってもいいのかも…と思いました。

枌谷:
この経営されている方と、モチベーションがなく見える方とでどのくらいコミュニケーションをとってきたかわかりませんが、もしあまりとっていないのに「モチベーションがなくて、コミュニケーションがとりづらい」「共創してものをつくる姿勢が無い」と捉えているのだとすると、そう見えているだけで、本当は違うのかもしれません。1on1でじっくり「自分からそう見えているけど、本当にしたいことは何か、なぜそうなのか」ちゃんと聞いてみるのもいいかもしれません。

お互いに自己開示した上で、分かり合えなかったら最後の選択になるでしょうけど、まだそこまでやれてないんだったら、胸の内を話す場所をまずつくるといいように思います。

こばかな:
すごくわかりますね。ちょっと背景がわからないですが、「自分が誰かに対して思うこと」「誰かから思われていること」は、「事実」と「解釈」に分けた時、ほとんどが「解釈」ですよね。この文章でも「事実」と「解釈」を分けた時、事実はこの「30代中盤のリモートの中途の人」だと思いますけど、「モチベーションがない」「コミュニケーションがとりづらい」は、この質問者さんのある意味「解釈」。相手からすると「モチベーションがないこともないよ」という話かもしれない。なので、解釈を含んでいて、フラットな状態になれていない、もしそういったところがあれば、枌谷さんがおっしゃっていただいたように向き合う時間をとってみるのもアリかなと思います。

「フリーライダー」とどう接するべき?

(7)チームマネージャーをしています。チームの生産性向上を目指して、「学習」や「フィードバック」を重視し、「目の前の業務以外のことも自分事化していく姿」を理想の姿勢として、日々チームマネジメントをしています。そうなると、どうしてもフリーライダー(肩代わりしてくれる積極的なメンバーに業務を任せてしまいがちな人)が出てきてしまいます。チームの生産性を上げるという観点から、このフリーライダーの方とどう接していくのが良いのでしょうか。

枌谷:
そうですね。これは、ご質問者さんの意図として「フリーライダーは良くない」が基本的な考えですよね。もしそうであるなら、評価制度で制約を与える、がいいと私は思いますね。

フリーライダーの行動特性、コンピテンシーというのでしょうか。そこをちゃんと評価指標の中に入れ、「こういう行動をする人は評価が下がります」「こういう行動ができる人は評価がちゃんと上がります」と明確にする。「フリーライダーやるな」ではなく、「会社はこういう評価基準」ですと。「どう選択するかはあなた次第」ですとする。そうすることによって「フリーライダーだけど他のことで貢献できるよ」となれば、そこを評価する制度にしたらいいですよね。そうすることでフリーライダー化を防ぐ。フリーライダーを認めない組織と明確に宣言して、評価に加えるのが一番いいかなと思ったりします。

こばかな:
ちなみに、フリーライダーが絶対ダメということでもない?

枌谷:
そうですね。従業員が30人くらいになって思ったのは、みんな一色にはならないということ。同じ特性に染めることはできない。たとえば、一般論だと「受身の人はよくない」「リーダーシップがない人は良くない」と言いますが、「リーダーシップに欠けるけど優しい」「この人と喋ると場が和む」という潤滑油的な存在な人もいたりしますよね。フリーライダーでも、その人の良さが別にあれば、そこを評価してあげていい気はしますけどね。

こばかな:
確かにそうですね。私も基本的には枌谷さんと同じことを思いました。フリーライダー的な人が多いのであれば、フリーライダーに有利な組織構造になっている可能性もある。それは仕組みで解決していくのが基本の姿勢としてありますよね。極端に言えば、社会的な構造と一緒で「万引き」に罰則がなければみんな万引きする、みたいな。あとは「その人にしかできないこと」を考えてみるのも良いかなと思いました。それがその人の良さだと思いますし、たとえば、「経営者はむしろ暇であれ」みたいなことをよく聞きますよね。余白があった方がいいポジションさえあるくらいなので。

でも、おそらくご質問いただいていることは「その人のせいで、いろんな業務が逼迫してるよ」といったお話だと思うので、仕組みで解決できると良さそう。

枌谷:
大企業だと、フリーライダーという言葉が適切かわかりませんが、面倒な仕事を投げ合いというか、ボールをうまく他人に押し付けた方がラクに仕事ができるみたいな文化って、まだまだありますよね。そういう会社は組織風土から変えないと「その方がメリットがある」となってしまっていますよね。

「評価制度を変える」って現場の方からすると難易度が高いかもしれませんが、チームのマネージャークラスだと、会社の評価とは別に「うちのチームの評価基準」を作っちゃってもいいのかもしれません。「チームの評価基準と会社の評価基準、両方で私は見ますよ」という運営もアリな気もちょっとします。

こばかな:
なるほど。それぞれのチームによって働き方、そもそも役割が全然違ったりもするのでアリかもしれないですね。あとは、フリーライドしづらい状態、みんなでタスクの確認をしたり、そういうちょっと、小さなところから始めるといいかもしれない。

枌谷:
そうですね。あと、チーム内での行動指針とか、バリューみたいなのをつくったりとかですよね。

こばかな:
それはすごく良さそうですね。

枌谷:
ちょっとした経営ゲームみたいな感じで、ある意味楽しいかもしれないですね。

目の前の業務を回す事でいっぱいいっぱいに…

(8)業務が回っておらず、どうしても自分がプレーヤーとして現場に出ることが多くなってしまいます。この状況だと、自分がマネジメントに時間を割けない、メンバーが育たないことは重々理解しているのですが、目の前の業務を回す事でいっぱいいっぱいになってしまいます。このような状況で(創業当時やリソース不足の時など)何か工夫されている事などありますでしょうか?

枌谷:
私もずっとプレイングマネージャー型、今も完全なマネージャーじゃないので、すごい気持ちがわかります。やはりクライアントがいて納期があるので、そっちの方が緊急度が高くなって。結局、マネジメントというか、中長期で大切だけど緊急性が低いことにあまり時間が使えない。だからすごく難しいし、本当は専業にした方が良いと思っています。ただ、プレイングマネージャーなりの工夫としてできるとすれば、自分がやっていることをなるべくその場限りのフローな仕事にしないこと。仕組化、フォーマット化、テンプレート化する。少しずつ自分が作った仕組みがみんなに広がるカタチが取れてくるので、これを積み重ねて、徐々にマネジメントの土台ができた気がします。ちょっと時間かかりますが、地道に根気よくやるみたいな感じなのかなと思いました。

こばかな:
実際に枌谷さんはそういう形でお仕事されたりするんですか?

枌谷:
そうですね。たとえば、いま使ってる営業資料などは私がもともとのフォーマットを作ったものですね。自分自身も「ルーチンワークを繰り返したくない」ってあるじゃないですか。Webサイトづくり、サイトマップを作るための表など毎回作りたくない。もうこんなのテンプレ化して、文字だけ入れ替えればいいやと。同じように自分の仕事を仕組化することが、まずマネジメントのスタート地点みたいな感じかもしれません。

こばかな:
エンジニアリング的な発想というか、本当にそうですね。これは本当にすごくよくある悩みだと思って。私は、個人の話として捉えるか、会社の問題として捉えるかで、少し回答が変わると思います。

まず個人の話として、たとえば「いくら効率化して時間を空けたとしても、忙しくなってしまう」みたいな性格だった場合、冒頭にあった「誰かを信じて任せてみる」をやってみる。私自身、デザイン組織に勤めていた経験はありますが、クライアントワークの仕事を中心としており、部下を持った経験もほとんどありませんでした。そういった意味でも、THE COACHで経営者になってからが一番「任せてみる」の勉強ができていますね。意外とそのほうがうまくいく経験をどんどん積ませてもらったのは大きいです。それこそ自分のことをあまり優秀だと思っていないタイプなので、自分単体をリソースとして見るのではなくチーム全体のリソースと考えた時に、誰が何をやるべきか。そう考えると「自分がやるべきじゃない」みたいなことがむしろ見えてきた。その経験を小さく積んでいくと任せられる勘所がついてくると思います。

もし、会社の問題として捉えるなら、たとえば、「常に忙しく、全てのプロジェクトが炎上してる」みたいな超ブラック企業みたいな場合。仮にクライアントワークだとすると、受注する数と、請け負える数と、その組織のバランスが単純に合ってない。シンプルな経営的な課題ですよね。ちょっとしかないガソリンでめっちゃ走ろうとしてるみたいな。そういう空気になりがちな会社なら「炎上してるからどうにかしてくれ」とマネージャーや経営者に話をしたほうがいいと思います。

枌谷:
さっきの「任せる」の話(前編1問目の相談)で「任せることの怖さ」もありましたが、こばかなさんも勝手に同じかも…と思ったのが、プレイヤー側にいた人って「人に任せると自分のやりがいがなくなっちゃうかも」みたいな気持ち、無いですか?

こばかな:
それはありますね。

枌谷:
ありますよね。僕も、もともとデザイナーなので、自分が作ったものを褒められたり、評価されたりした方が嬉しい、そう思ってこの仕事を選んでいて。そんな性質が長かったのですが、ここ3~4年かな。任せた子が成長していたり、うまくやれたりしているのをみると自分ができたことより嬉しく感じるようになってきました。プレイヤーの人って「マネジメントって面白くないのかも」「やりがいなくなるかも」と感じるかもしれませんが、根気よくやってみると楽しみを見出せる時が来る。すると楽しんで権限移譲できる日も来るはず。そこは自分の経験で思ったりはします。

こばかな:
いい話ですね。確かに私もデザイナー上がりなので、ある程度「手を動かして、見た目を作ること」はできるんですよね。ただ、自分が手を動かしてしまいたくなる時、一度立ち止まって考えるのが「今の自分が楽しいと感じるポイントは、手を動かして目の前の“モノ”を作ることか?それとも、組織や事業を作ることか?ということ。それでいうと後者が楽しいポイントなんですよね。同じものづくりだと捉えられているので、その矢印が変わったり、少し抽象化されたなぁ、みたいな気持ち。デザイナーと、経営をしているところは、根本的にはあんまりやっていることは変わらないかなと思ったりしますね。

枌谷:
こばかなさんは今、プレイングされているんですか?

こばかな:
一部していますね。ただ、コーチングの実践とか、基本的にはもう自分では仕事としてはやっていないです。むしろ私よりもすごいコーチがたくさんいるので、みんながやった方がいいと思うタイプ。

枌谷:
理想的ですね。

「ありたい自分」と「組織から期待される自分」にギャップ…

(9)私はひとを大切にするマネージャーでありたいと思っていて、周りの人たちとの気の置けない関係をとても大切にしています。私も過剰に配慮しすぎることよりもまずはシンプルに指示や意見を言いますし、部下からも率直にOKやNGと言ってもらえる関係でありたいのです。が、組織の幹部からは私のマネジメントのスタイルは「弱い」「まどろっこしい」と評されます。人としてこうありたいと思うオーセンティックな自分のまま、組織から期待されるマネージャーの姿も表していくのは難易度が高すぎる…。私に活路はあるでしょうか!?

枌谷:
これも関係性がわからないので、経営層、幹部のほうがよくないと思っちゃうかもしれないですね。ただ、この文章をストレートにそのまま読んだ雰囲気で言うと、質問者さんは「マネージャーはこうあるべき」に囚われすぎてるのかなと思いました。

「まずはシンプルに指示や意見を言いますし、部下からも率直にOKやNGと言ってもらえる関係でありたい」「周囲との気のおけない関係をとても大切にしている」など、この方のマネージャーとしてのあるべき論があるようにも感じました。ですが、仕事は「マネージャーとしてあるべき姿」を実現することではなく、その時抱えている課題、問題を解決することが重要ですよね。その解決に対してそのマネジメント論が合わなければ、変えなきゃいけない。

マネジメント層から「弱い」とか「まどろっこしい」と言われちゃうのは、その組織が抱えている問題に対し、この方の理想とするマネージメントスタイルが適していないのかもしれません。ですが、「マネジメントはこうあるべき」を頑なに持ってしまってるので、ミスマッチが起きている可能性も。「みんながそもそも求めてるのは何なんだろう」に一度合わせてみる。ここをやれば別の活路があるようにも思いました。

こばかな:
私も活路は全然あると思っていて。まず私は、相談者さんのモットーみたいなのはすごい好きだと思ったんですよね。人間らしいというか、リーダーシップのあり方は本当に素敵だなと。この組織だと合っていないとしても、質問者さんそのままでもフィットする組織、会社は世の中にいっぱいあるんじゃないかなと。

そもそも期待されるリーダーシップ像、マネジメント像は何か。弱いと言われてしまうということは、グイグイ引っ張っていく系が求められているのでしょうか。

おそらく期待されているのは、そういったマネージャーとしての姿勢ではなく、成果の方かな?と思うので、成果を生み出すための最善のあり方が何か。自分らしさを発揮できる範囲で、考えてみてもいいのかなと思いました。

「マネジメントのあり方」を考えるのではなく、抽象度を一歩高めて「どうやったら成果が出るか」。こういった問いでマネジメントのスタイルを手段として考えてみる。ですので、求められているリーダー像になるか、自分らしいリーダーシップの発揮の仕方をするか、二者択一ではない。「自分らしく成果が出るマネジメントって何だろう?」という問いで考えてみるのも面白いと思ったりしました。

枌谷:
確かに一般的に成果が出ていれば、マネジメントスタイルのことをどうこうってあんまり言わないですよね、実際は。「そのやり方で成果が出るなら、ぜひやってください」となるので、なかなか難しいですが、成果で示すのはいいですね。

こばかな:
そうですね。活路があると思うので、がんばっていただきたいですね。

質問は以上となります。枌谷さん、もし本日の感想などあればお願いします。

枌谷:
私も2022年は会社にコーチングを導入しようと考えていたり、ちょうど関心を持っているところでお声がけいただき、大変嬉しく思います。すごく多くの方に参加いただき、コーチングやマネジメントについての関心度の高さを感じました。そのことを実感でき、私もちょっとまた見方が変わったところがあります。割とドライな返し方もあったのかもしれませんが、もし気になることがあれば、ぜひTwitterなどでも気軽に質問いただければと思います。

こばかな:
ありがとうございます。最後に私からも一言だけ言わせていただくと、皆さんからいただいている質問の熱量が本当にすごく高いなと感じました。今日ご紹介できたものは本当に一部でした。人の悩みは尽きることはないですよね。いかにそれらと向き合うか。結局ここが大事だと思います。なので、そういった部分でコーチングは生涯使えるスキルだと捉えており、何かしらご興味を持っていただけたら、もうちょっと調べてみたり、THE COACHの記事なども読んでいただけるとうれしく思っています。最後まで聞いていただき、本当にありがとうございました。

(おわり)


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編集 = CAREER HACK


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