2020.02.26
アドバイスは、がまん! 大切な人から相談されたとき、覚えておきたいこと

アドバイスは、がまん! 大切な人から相談されたとき、覚えておきたいこと

悩みを相談された時、どうリアクションしたらいい? そもそも気軽に相談してもらうためには?オンラインカウンセリングサービス「cotree」を立ち上げ、自身もカウンセラーとして数々の「悩み」に耳を傾けてきた櫻本真理さんに聞きました。同僚や部下、家族や恋人など...あなたは身近な人の相談に乗れていますか?

全2本立てでお届けします!
[1]よきリーダーでありたい。そんな願いを一つでも叶えるために。
[2]大切な人から相談されたとき、覚えておきたいこと

私って、相談に乗れてないのかも?

“ちゃんと相談に乗れたのだろうか?”

ときどき、そんな疑問が頭に浮かぶ。

たとえば、部下との1on1で、悩みを打ち明けられたとき。話を聞いて、アドバイスをしたつもりでも、相手の表情はなんだかスッキリしない。「そうですね...」という部下の言葉に、自分の不甲斐なさを感じました。

仕事だけでなく、プライベートでもそう。仕事のこと、恋愛のこと、家族のこと...身の回りの人が抱える「悩み」に対して、もっと上手く相談にのれるようになれたら。力になれたら。

そんなことをモヤモヤと思っていたとき、Twitterのタイムラインでこんなツイートが目に止まりました。

投稿主は、オンラインカウンセリングサービス「cotree」を立ち上げた、櫻本真理さん。自身もカウンセラーとして、悩める人々の声に向き合い続けてきた人物です。2020年1月には、新会社コーチェットを設立し、部下との関係に悩むリーダーのためのコーチング習得サービス「CoachEd(コーチェット)」をリリースしています。

いわば、櫻本さんは「人と向き合うプロフェッショナル」。

そんな彼女が普段、相談に乗るときに大切にしていることを尋ねました。

+++【プロフィール】櫻本真理(さくらもとまり)さん。京都大学教育学部卒業後、モルガン・スタンレー証券、ゴールドマン・サックス証券にて勤務。証券アナリストとして2009年日経アナリストランキングその他素材部門20位、2010年同10位にランクイン。同社退社後複数のスタートアップやプロジェクトに携わり、2014年5月に株式会社cotree、2020年1月に株式会社コーチェットを設立。産業カウンセラー、エグゼクティブコーチ、システムコーチ。

全身全霊で聴く。

ー櫻本さんのツイートとても刺さって。きょうはぜひ、普段櫻本さんが部下や身近な人の相談にのる上で心がけていることを伺いたいです。

それはとてもうれしいです。ありがとうございます。じつは私がツイートした内容って、コーチングやカウンセリングのベースとなる考え方で。普段私自身も心がけながら、相談に乗るようにしているんです。

まず、大前提は「相手に関心を向けて聞くこと」です。パソコンやスマホをいじったり、あくびをしたり、そういう態度をしないこと。当たり前かもしれないけれど、案外できていない人も多い。

ーたしかに、とくに仕事で忙しいとき、仕事をしながら話を聞いてしまうことがありました...。

耳だけ、言葉だけじゃなくって、うなずいたり、表情を豊かにしたり。全身で「あなたに対して関心を持っていますよ」という態度で相手と向き合う。

今取材してくださっているのも、私にとってはそういう場なんですよ。コーチング的な場というか、相手に感心を向けて、問いかけをして、しっかり聞いてくださっているじゃないですか。

「あ、聞いてくれているな」と思うから、気持ちよくお話ができるわけですよね。まずは受け止めているよという姿勢を心がけるだけで、相手にとっての印象はだいぶ変わると思います。

+++

相手の「気持ち」を聴けていますか?

ー 相手の話を聴く姿勢、見直したいなと思いました。ツイートでは、「共感が大切」と書かれているのですが、どんなふうに聴いたらいいのでしょうか...?

おすすめは、相手の「気持ち」にフォーカスをして聴くことですね。

たとえば、相手が「悲しくて...」という言葉を発したとき、「悲しいんですね」って言葉を返す。これをカウンセリングでは、「照らし返し」といいます。

「そうか、怖かったんだね」とか、「不安なんだね」とか。「こういうふうに感じたんだね」と、気持ちを受け止める。そうすると、相手も「あ、共感してもらったな」と、感じ取りやすいです。

―なるほど~!「気持ち」聴けてなかったです...「なんで?」「それってどういうことなの?」って聞いちゃってました...。

やりがちですよね(笑)私もそうなってしまうときがあるので、よく分かります。

でも、こういった質問って、ただ事実を確認しているだけで。聞かれた側からすると、「問い詰められている」ような感じがしてしまう。まずは、相手の気持ちを吐き出してもらって、受け止めることが大事。

とくにビジネスの世界ではあまり感情に意識を向けられる機会がないけれど、もっと人の感情に目を向けられる人が増えたら、悩む人は減っていくと思うんですよね。人って感情の生き物だから。頭でどんなにわかっていても行動ができないことって、あるじゃないですか。部下が落ち込んでいるのに、やるべきことやロジックだけで詰めていくと、どこかで感情が爆発するときがくる。

ロジックの前に、まず感情を受けとめておいてあげる。気持ちを出し切って、からっぽになって、フラットになった状態じゃないと、ロジックは入ってこない。まず、ガス抜きをしてあげる。

こちらから、「どういう気持ちだったの?」って聞いてみるのもいいと思います。

+++

「10年後の自分だったら、なんてアドバイスをするだろう?」

ー 「気持ちを聴く」は目からウロコでした。そもそも、なにか「アドバイスしなきゃ」って勝手に思い込んじゃっていたのかもしれません...。

アドバイスをするよりも、本人から答えを引き出してあげたほうがいいですね。そのほうが、本人も納得感を持ちやすいし、次のアクションにつながることが多いです。

具体的には、本人が見えていないことに焦点を当ててあげることが大事。

とくに落ち込んでいるときって、視野が狭くなりがちなんですよ。「今」「苦しいこと」しか見えていないケースが多い。だから、未来の視点や第三者の視点を持てるような問いかけをするといいですね。

たとえば、

「10年後の自分だったら今の自分に何てアドバイスをする?」

「その悩みは、ほかの人でも起こっていることなの?」

「その悩みは、あなたにとってはどんな意味があるの?」

「憧れのあの人だったらどう考えるだろう?」

など。とにかくいろんな方向から悩みに光をあててあげる。

他にも、こんな質問もよくしますね。

「そこから、学んだことはなんだった?」

「逆にその人とのかかわりの中で、いい面って何かなかったの?」

一つのことって、絶対に複数の側面を持っているはずなんですよ。苦しい面があったら、裏側にきっと、よかったこともあったはずなんですよね。そうすると、「あ、確かに、悪いことばかりじゃなかったな」とか、「感謝しなきゃな」という気持ちになれたりします。

+++

相談に乗れない日があっても。

ー お話を伺っていて、すごく反省しました...。私全然できていなかったなって。

いえいえ、とくに仕事だと時間制限もあるし、行くべき方向もあるので、じっくり部下やメンバーの話に耳を傾けている時間がとれなかったりしますよね。私も、相談にのれないなというときがあります。

ビジネスの日常の中ではじっくり話を聴ける時ばかりではないので。コーチングで本人に気づいてもらうのを待てない時もある。そんな時はティーチングを増やさざるを得ないこともあると思います。

ただ自分のコミュニケーションを振り返る癖があるといいのかもしれないですね。「ちょっと、今、プレッシャーかけすぎちゃったかな」とか、「少し話を聞けばよかったかな」とか、「アドバイスのタイミングがもっとこうだったらよかったかな」って思い返していく。振り返りの積み重ねで、すこしずつうまく相談にのれることが増えていくと思います。

より良いコミュニケーションをしたいという姿勢は、相手にも伝わります。「相手を大切に思っているし、よりよく関わりたいと思っている」という姿勢が何よりも大切だと思います。

+++

>>>前編|よきリーダーでありたい。そんな願いを一つでも叶えるために。櫻本真理さんの、リーダー育成に込めた思い


編集後記

「今朝、彼氏とケンカしてきまして…」

取材の終盤、気づけば私は胸のうちに秘めた悩みをこぼしてしまっていました。櫻本さんのやわらかな雰囲気に、思わず相談したくなっていたのかもしれません。

「10年後の自分だったら、なんてアドバイスする?」

「彼はどんな気持ちだったんだろう?」

あらゆる角度から投げかけられる質問に、言葉が詰まる。でも、櫻本さんはやさしくうなずいて、一緒に考えてくれる安心感がありました。沈黙すら心地よい。沈んでいた心がだんだん晴れていく。

そうか、相談にのってもらうってこういうことなのか....!

目からウロコが落ちてしまった私。家族、恋人、友人...大切な人が悩みを相談してくれたとき、

同じように向き合えるようになりたいと思いました。


文 = 林玲菜
取材 / 編集 = 野村愛


関連記事

特集記事

リモートワーク時代の戦い方

新型コロナウイルスの影響によって進むリモートワーク。とくにテック企業でいち早く導入され、日々アップデートされている。リモートワークが当たり前となるなかで、いかに働き方を変え、さらに組織として戦っていくか。各社の取り組み、工夫、リモートワークのやり方などに迫ります。

AFTER 2020

時代は平成から令和へ。そして訪れる「2020年以降」の世界。2020年からの「10年」をいかに生きていくか。より具体的に起こすべきアクションのヒントを探る連載企画です。お話を伺うのは、常に時代・社会の変化を捉え、スタートアップと共に"一歩先”を見据えて歩まれてきた投資家のみなさんや、未来を切り拓く有志者のみなさん。それぞれが抱く「これから10年間で現実的に起こり得ること」と「新しい生き方」の思索に

お問い合わせ
取材のご依頼やサイトに関する
お問い合わせはこちらから