2020年1月にリリースされた『CoachEd(コーチェット)』は、「はじめてリーダーを任された人たち」にそっとよりそうサービスだ。なぜ企業で働くリーダーたちの心は疲れやすいのか。会社組織には何が必要なのか。櫻本さんが新サービスに込めた思いと共にじっくりお話を伺った。
全2本立てでお届けします!
[1]よきリーダーでありたい。そんな願いを一つでも叶えるために。
[2]大切な人から相談されたとき、覚えておきたいこと
チャンスと変化の多いテック業界。20代からどんどん仕事を任される。
もしも…急に「リーダーになって」とあなたが言われたら、どうするだろう。
先日までの私(筆者)ならたぶん「ムリです」と問答無用で断っていた。毎日自分のことで精一杯。誰かの面倒なんて見てられない。リーダーになれるほど、強くも、偉くもない。部下の成長に責任を追う、そんなプレッシャーにきっと耐えられない。
ただ、今回、櫻本真理さんの『CoachEd(コーチェット)』に込められた想いを取材した今なら。
「ちょっと頑張ってみます」の一言が出てくるかもしれない。
『CoachEd(コーチェット)』は毎週1回、12週間にわたるリーダー育成プログラム。
リーダーは「気づきを与える」存在。体感し、学び、練習さえすれば、部下たちの良き伴走者になれるはずだ。
「コーチングをカウンセラーやコーチの専売特許にしたくないんです。リーダーや先生、親など影響力のある人が、もっと人間理解を深めて、気づきを与えるような問いかけができたら。やる気を引き出してあげたり、視野を広げてあげられたら。もっと生きやすい社会になるはずです」
やさしく語ってくれた櫻本さん。
リーダーはいきなり任されてなれるものじゃない。彼女との対話から見えてきたのは「マネジメント」に携わるあらゆる人にとって大切な「リーダーに育っていくプロセス」だった。
『CoachEd(コーチェット)』とは?
毎週1回、12週間にわたるプログラム。1人のリーダーに1人の専属のトレーナーがつく。とくにリーダー自らがコーチングを受けて成長しながら、チームを育てる力を身につけるためのコーチングを学べるのが特徴。「人に寄り添ってもらい成長する感覚」を自らが体験しながら、部下へのコーチングを実践。PDCAをまわしていくことで、メンバーを育てられるリーダーに成長していく。
ー まず『CoachEd(コーチェット)』を作る前に、課題だと感じていたことがあれば教えて下さい。
団体でも、企業でも、組織において「リーダー」や「マネージャー」ってとても大切な役割なのに、十分なサポートを得られず苦労しているケースが多いんですよね。
とくに、『cotree(コトリー)』で展開しているリーダー向けコーチングサービスを運営する中で、リーダーの中には「部下との関係性に課題を抱えている方がとても多い」と気づいたんです。多くの人が「うまく部下を育てられない、権限移譲ができない」と同じような課題で悩んでいました。
よくよく聞いていくと、事業は作れるけど、人に関してはそもそも何を勉強するべきかわからない。必要なスキルを自分で学ぶ時間もない。特に小さなチームや組織ではリーダーにマネージャーとしての役割を求められることが多くありますし、リーダーの対人関係構築力は事業に直結する重要なスキルです。
もちろん大企業であれば、管理職研修などで学べる機会はあるかもしれない。ただ、ベンチャーやスタートアップ、中小企業だと、その機会が本当に少ないんです。会社からは役割だけ与えられ、「なんとか乗り切ってほしい」と丸投げされてしまうことも多くあります。ここを解決したいと考えるようになりました。
ー とくに経験の浅いリーダーたちが苦しく感じるのはどういったことなのでしょうか?
「人との関わり方」だと思います。リーダーに必要なスキルって、人と関係性をつくり、みんなで1つのことを成し遂げられるように導くこと。つまり「人と関わる力」こそがとても大切になります。
でも、そもそもプレーヤーの仕事とリーダーの仕事は全くの別物なのに、いきなり「リーダー」という役割が与えられてしまう。たとえば、ひとりのエンジニアとしてすごく優秀な人で、個人として高度なスキルを持っていたとしても、急に「チームをまとめてくれ」と言われたら、難しいと思うんです。
多くの場合リーダーになるまでの間はプレーヤーとして「課題解決能力」ばかりが求められていて、ヒューマンスキルを身につける機会はなく、リーダーになった瞬間に「部下を育てろ」と言われたりする。いや、それを言われることすらなく、「チームで成果を出せ」とか言われて放置ということもある。
「人との関わり方」を専門的に教えてくれる場所もほとんどなく、自然と身につけていくもの、と捉えられがちですよね。手探りで進めるしかない、というのが現実だと思います。
その結果、「部下がモチベーション高く動いてくれない」「部下が潰れてしまった」と。さらには「自分には向いていなかった」「なんで自分にはできないんだろう」とリーダーは自分を責めてしまったり、「人には期待しちゃいけない」「信用しちゃいけない」などと壁を作ってしまったりする。この負のループはあまりにも悲しいことですよね。
ー 先の「負のループ」ですが、どう解決していこうと?
本や研修でヒューマンスキルに関する「知識」を手に入れることはできますが、そのまま実践で活かせるケースは本当に少ないんですよね。何度もやってみて、失敗しながらじゃないと身につかないのがコミュニケーション。
なので、じつは「知識」と同時に「体験」と「実践」が大切になります。仮説を立てて、実践してみて、振り返って修正しながら、少しずつより良いコミュニケーションができるようになっていく。
こう考えると、その場限りの研修だとスキルを身につけるには足りなくて。仮説通りにいかなかった時、ずっとサポートしてくれる人がいたらいいですよね。リーダーが現場からの学びを持ち帰って学びに変えられる環境。ここが『CoachEd(コーチェット)』の提供している価値です。
ー 『CoachEd (コーチェット)』で得られる「体験」と「実践」は、実際どういったものでしょうか?
一人ひとりのリーダーに「トレーナー」がつきます。リーダーが目指すあり方、関わり方に近づいていくために2人で一緒に走っていく感覚です。コーチングを受けながら、自分の課題を設定して、それに日々一緒に向き合っていきます。
どんなことがあれば自分のモチベーションが上がったり下がったりするのか。自分は何を大切にしているか。目標、課題、リーダー像。なりたいリーダー像に近づくために、今日は何ができたか振り返る。
こういった「自らの体験」こそが、部下と向き合う上で基盤になっていきます。自己基盤を整えた上でコーチングという関わり方を学ぶことで、より効果的なリーダーシップを発揮していくことができるはずです。
ー 確かに自ら体験する、実践する。相談する。その繰り返しは有効だと感じます。…ただ、なかなか部下が変わってくれない、パフォーマンスを発揮しない…と苦しむケースも想像できます。
そうですよね。当然、すぐには成果につなげることはむずかしいですよね。だからこそトレーナーと一緒にやっていくんです。
それから、スキルの他にもじつはリーダーにとって必要なことが、もう1つあって。前提として、リーダーは「この人について行きたい」と思われる「人間性」が求められます。
どんなリーダーについて行きたいか。なにも高尚で、ずば抜けた存在である必要はないですが、たとえば、「自分」という幹があるか、精神的に安定しているか。いつも怒っている上司、いつも焦っている上司だと「この人についていきたい」とは思えないですよね。
― その「人間性」はどう身につけていくものだと思いますか?
まずは自分を客観視するところからだと思います。じつは、人は思っている以上に「自分のことを知らない」もの。先ほどの「怒り」や「焦り」も、なぜそうなっているのか。自分を知ることは、自分のあるべき姿をイメージし、そこに向かって進めるよう自己コントロールができるようになる一歩ですよね。
多くの人は「自分のことは自分が一番分かっている」と、自分と向き合う機会を持ちません。『CoachEd (コーチェット)』のプログラムでいうと、「自分自身を知る」というプロセスを入れることで、リーダーが自己基盤を整えるサポートをしています。自分を知ることで初めて、自分をコントロールできるようになる。他者のことも相対的に理解できるようになる。そうして初めて関係性をマネジメントできるようになります。
自分の「怒り」「不安」「焦り」などのポイントを知り、コントロールしていく。むしろテクニックは二の次で、この「自分を知るプロセス」こそが肝心。BeingあってのDoingなので、まずはBeingから整えていくといいと思います。
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