2022.11.30
いかにしてエアークローゼットは「前例なきビジネス」で上場を果たしたか。代表 天沼聰が貫いた実行主義

いかにしてエアークローゼットは「前例なきビジネス」で上場を果たしたか。代表 天沼聰が貫いた実行主義

会員数80万人を突破し、2022年7月の上場後も順調に成長を続けるエアークローゼット。サブスクという言葉もなかった2014年に創業。定額制ファッションレンタルの業態を牽引してきた。いかに前例なきビジネスモデルを構築し、上場を果たしたか。代表取締役社長 兼 CEO 天沼聰さんが貫く「実行主義」に迫る。

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>>> [1]エアークローゼット 天沼聰が明かすコロナ禍のハードシングス

届けたいのは、感動体験

2023年6月期業績で、YoY+26%の売上高42.7億円(営業利益1.1億円)を見込むエアークローゼット。月額会費による安定した事業基盤を築き、順調な成長を続ける。はじめにこのタイミングでの上場に至った背景から伺えた。

コロナ禍によって大きなダメージを受けたアパレル業界において、IPOをする意義は非常に大きいと考えました。この業態において最も信頼されるプラットフォームを目指していきたい。市場や社会からの信頼を得て、持続可能性を高めていくために決断しました。

創業時は、ビジネスモデルとしてほとんど前例はありませんでした。経営陣たちと事業計画を考えるなかで話し合っていたのが、持続可能な会社であることを証明できる状態にしたいということ。私たちがビジネスモデル自体を構築していく。

経営観点で強いていえば、上場前は投資フェーズとしてコストやキャパシティを自分たちでコントロールできる状態にし、物流基盤などビジネスモデルの構築に重きを置いてきた部分は一定あると思います。そして今後は収益フェーズとして、サービスの品質アップ、提供できるお客様の層をさらに広げていきたい考えです。

ただ、それらはあくまでも手段に過ぎません。『airCloset』をご利用いただくことで何がしたいのか。それはお客様に「感動体験」を提供していくことに他なりません。新たなブランド、ファッションアイテムと出会い、より生活を充実したものにしてもらいたい。そのためのサービスの改善を全方位的に図り続けていく。ここはこれからも変わることのない思い。

山登りに例えるなら、お客様の時間価値を高める、ワクワクするライフスタイルを作る、多くのお洋服に出会っていただく、そういった「山頂のゴール」は変わらない。ただ、その山頂に至るまでのルートはさまざまですよね。

例えば、創業当時はお客様ご自身でお洋服を探すしか選択肢がなかったのですが、今ではスタイリストに任せられるようになり、浸透し、価値として認めていただけるようになってきました。「感動体験のあり方」は無数にあるなか、PDCAサイクルを回しながら、そこを模索してきたとも言えます。

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天沼さん自身は「感動体験」はどのようものとして捉えているのだろうか。

例えば、わかりやすく安くなればいいのか、早く届けばいいのか、それが感動体験か?と言われれば、そうではないと思います。お客様が待ってくださる時間でさえ、ワクワクする感動体験になり得るはず。もちろん「機能的価値」は重要ですが、そればかり目を奪われると提供したい価値が曇ってしまう。そういった意味で、エアークローゼットでは「機能的価値」「情緒的価値」「社会的価値」を3つのVALUEとして置いています。本質でいえば、お客様として「使えていなかった時間が使えたか」「使いたくなかった時間が減らせたか」こそが価値。お客様の時間価値の向上を追求し、多くの人たちのライフスタイルの豊かさにつなげていく。なのでその答えも一つではないと思います。こういった思いが中心にあり、どういう感動体験を届けられれば、会社として「良いね」と言えるか。すべての軸はここにあると言えます。

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『airCloset』サービスの特徴について語ってくれた天沼さん。「新規で月額会員になってくださるお客様の約10%が、過去に会員で一度退会された方というのも特徴です。つまり戻ってきてくださるケースも多い。契約期間に縛りがなく、言ってしまえば「退会しやすい」設計ともいえます。ある意味、やめやすく、また戻ってきやすい設計はお客様にも一定ご理解いただき、使っていただいているように思います。ここでの体験が生活に必要であれば、いつでも使っていただいていい。不要であれば一旦お休みいただける。サービスとしてどんどん改善しているので、新しい機能やサービスが追加され、以前の退会理由が解消されるケースも多い。毎シーズン、数万着ものお洋服が増えていきますので、それを楽しみに戻ってくださる部分もあると思います」

「データ」と「仮説と目的」へのこだわり

続いて伺えたのが、エアークローゼットの組織に根付くカルチャーについて。彼らが徹底してきたのは「データ活用」そして、「仮説と目的」を明確化した上でのプロジェクト進行だ。

創業時から組織として重視してきた部分は、データ活用だと思います。その施策は定量化、数値化できるか。多くの判断、改善がデータを基に行なえるよう、仕組み化を行なってきました。

ただ、膨大なデータがあるが故に、切り口、組み合わせが無数にあり、いくらでも見ようとすれば見れてしまうわけですよね。すると「データを見ること」が目的になってしまう。データから何かを見つけようとすると、本当に非効率です。そうならないためにも目的を明確化し、仮説を持ってプロジェクト化していくことは徹底してきました。

それらのプロジェクトがあらゆる部署で常に複数走っている状態だという。

プロダクトにせよ、セールスにせよ、マーケティングにせよ、採用にせよ、PRにせよ、常に複数のプロジェクトベースで動いています。いずれにしてもプロジェクトの集大成、結果は数値として置けるものにしていて。さらにどうITを活用するか、コストと効果のバランスがどうか、精緻に見ていく。裏を返せば、結果が数値として置けないものはプロジェクトとしてやらないようにしてきました。

こうして目標が設定できれば、あとは可能性を洗い出し、自分たちが良いと考える打ち手を実行し、効果検証していくだけ。ポイントは、どれだけ実行前に仮説を明確に立てられているか。どの数字が、どう変わるのか、全てのプロジェクトで定義するようにしていく。その数字が変われば仮説が正しかったとわかり、数字を動かしたドライバーやアクションがわかる。それらを仕組み化していくといった連続でした。

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「実行してみなければわからない」を当たり前に続けていく

天沼さんを含め、戦略コンサルタントのバックグラウンドを持つ3名で創業したエアークローゼット。データ活用、仮説思考、仕組み化…コンサル時代の経験が活きたと語る天沼さんだが、最も重要なことは「実行力」だと語る。

目的に向け、達成までのルートを敷く。事業を組み立て、仕組み化していく。ファッションで提供できる価値を定義し、より効率的な手段を選択していく。これらはコンサルタントとしてやってきた経験が活きたと思いますし、私たちの強みだと思います。

たまに「コンサル出身の起業家は、ロジックで納得をしないと前に進めない」と捉えられることもありますが、必ずしもそうとは言えないのかもしれません。少なくとも私たちは「最終的には実行してみないとわからない」と考えてきました。リーダーがロジックで納得していようが、していまいが、正直やってみないとわからない。ここが本質ですよね。

じつはコンサル時代からロジックの納得感によって「実行する/しない」が決まることに対して違和感を持っていて。もちろんロジックでまとめていくことは非常に大切ですし、好きですが、必ずしも「正解」を出せるわけではない。正解を見つけていくために、とにかく実行せざる得ないわけですよね。実行し、検証していく。検証したからには学びがあり、その学びを仕組み化して次につなげる。コンサルタントが意識するのは、実行後に何が起きたのか整理し、仕組み化していくこと。その間に必ず高速PDCAが求められる。だからこそ、やはり本質は「実行力」にあるのだと思います。

(おわり)


>>> [1]エアークローゼット 天沼聰が明かすコロナ禍のハードシングス


取材 / 文 = 白石勝也


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