博報堂アイ・スタジオの「HACKist」という活動から、WEB制作会社、クリエイター・エンジニアの新しい可能性を探る本企画。HACKistの最終的なゴールを「クライアントに買ってもらえる状況を作ること」と語るメンバーに、これまでの活動成果やシゴトにつながった事例を伺った。
▼博報堂アイ・スタジオ「HACKist」取材レポート第1弾
いま、WEB制作会社に求められる「変化を起こす活動」|博報堂アイ・スタジオ『HACKist』[前編]
WEB制作会社、そこで活躍するクリエイター・エンジニアの新しい可能性を探る本企画。今回注目したのは博報堂アイ・スタジオが行なう『HACKist』という社内自主プロジェクトだ。メンバーであるインタラクティブクリエイティブディレクターの望月重太朗さん、テクニカルディレクターの一階武史さんへのインタビュー第2弾。
いちクリエイター・エンジニアとして感じる、危機感と好奇心から始まったというこのプロジェクト。HACKistの最終的なゴールを「クライアントに買ってもらえる状況を作ること」と語るメンバーに、これまでの活動成果やシゴトにつながった事例を伺った。
― 自主的な活動であるHACKistでは、ゴールなり、目標の設定などはされているのでしょうか?
望月:
目標値としてはHACKistのファン数、つまりFacebookページへのいいね数と、HACKistで生まれた作品を起点としたクライアント業務受注です。その為にメンバー間で週次の進捗をきちんと共有して、自主的に新しい技術や自分の興味のベクトルを探っています。ただ、こだわっているのはきちんと“モノ”に仕上げること。メンバーにはよく、アイデアベースや知識の習得だけでなく、“モノ”をつくるところまでこだわろうと言っています。
また、いま考えているのは、HACKistの活動をゲリラ的なものから、もう少しオフィシャルなものにすること。会社に大きく干渉されたくはないですが(笑)活動自体をもう一段階ステップアップさせるイメージです。対外的な見られ方も含めて。
何故かというと、僕らはデジタルの領域の中で仕事をしていて、あくまでもクライアントさんがいて、WEB制作会社や、そこで働く僕らがあるワケです。これは変わらないことだと思ってるんですね。
だからこそ、HACKistでの活動の最終目標は、僕らが生み出している様々な実験的な技術やプロダクトを使って、ちゃんとクライアントさんに買ってもらうという状況を作ること。ただ作りたいものを作って出して身内で喜ぶ、それだけだと自己満足で終わってしまいます。それはちょっと違うかなと。
理想を言えば、僕たちの取り組みがある種、クライアントに提案するサービス・プロダクトの『プロトタイプ』となり、安心してそして期待してもらった上でクライアントに買ってもらえる状況です。
― それでは、具体的にHACKistの活動がクライアントワークに生かされている事例があるのでしょうか?
望月:
嬉しい事にいくつかあります。例えば、NFC・node.js・画像認証の技術を使ったインタラクティブコンテンツ。ウェディングプランニングの会社さんと共同で企画し、NFCを仕込んだメッセージコースターを作成しました。
通常のコースターとしても利用できるよう、デザインも凝ったものにし、スマートフォンなどのNFC対応端末を通して、新郎新婦からの動画や写真、メッセージを取得できるようにしました。また、NFC対応端末を持たない方やPC利用を想定して、コースターのデザインを画像認識のキーとして利用できる仕込みをして、WEBカメラなどを通して、コンテンツを閲覧する機能もプロダクトに仕込みました。
一階:
NFCを使ったものだと、Androidアプリが「自動販売機」というリアルな媒介を通してインストール体験ができるプロモーションに採用されたものもあります。
ここで使った技術はHacikstで開発した「IMAGINA CHIP」という、積み木感覚で文字に触れながら英語を学べる知育玩具キットアプリの経験が生きたものなんです。MashupAwards8で「可能性∞賞」を、Android Application Award2013ではNFC賞を頂いただけた実績もあり、実際のクライアントワークにつながりました。
WEB制作会社のエンジニアも、企画会議から呼ばれることも増えてきています。ただ決まった仕様だけを作るエンジニアが、活躍・成長できる時代ではないのかもしれませんね。エンジニア発信で、新しい技術を企画に落とし、プロトタイプや事例を示しながら提案できる。そんな状況を創れるとモチベーションも高まりますし、WEB制作会社でエンジニアとして働く自分の成長可能性をぐっと押し広げられると思います。
― 着実に成果につながっているんですね!それでは最後に、今後のHACKistの展開や目指していくベクトルを教えてください。
望月:
クライアントに買ってもらえるような、アイデアやプロダクトをHACKist経由で作っていくことは、まだまだ必要です。そのためにも、これからは自分たちの『強み』を作っていくことも考えています。「この分野・この技術を使ったプロモーションなら博報堂アイ・スタジオに」と認識してもらえるレベルのもので。
あと、これまで2年弱活動を続けてきて、HACKistで生まれたプロダクトが貯まってきているんですね。個人的には、これまで作ってきたものを一度整理して、お披露目したいなと。例えばギャラリーを借りて、個展・発表会のようなカタチで開催できたら嬉しいですね。
来年3月には、アメリカ・オースティンで行なわれるSXSW(サウスバイサウスウェスト)に参加することを検討してます。広告といえばまず、カンヌの名前が挙がると思いますが、SXSWで最先端のテクノロジーや表現を生で体験したい。自分たちの興味や世の中の関心など、アンテナを多方面に張って、今後もモノを作っていければと思います。
― 貴重なお話ありがとうございました!今後のご活躍も期待しています。ありがとうございました!
(おわり)
[取材] 梁取義宣 [文] 松尾彰大
編集 = 松尾彰大
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