2014.02.03
現役エンジニアに贈る、これからの生存戦略|大場光一郎氏のキャリア論@エンジニア転職MTG

現役エンジニアに贈る、これからの生存戦略|大場光一郎氏のキャリア論@エンジニア転職MTG

1月25日にエン・ジャパン主催で開催されたエンジニアMTG。クラウドワークス・CTO 大場光一郎氏が、自らのキャリアを基に講演を行なった。ソフトハウスからCTC、グリーを経てクラウドワークスにCTOとして参画した彼が、自身のキャリアから後進のエンジニアに伝えたいメッセージとは。

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クラウドワークスCTOがエンジニアに伝えたいこと

1月25日にエン・ジャパン主催で開催されたエンジニアMTG。1月にクラウドワークスにジョインした大場光一郎氏が、自らのキャリアを基に講演を行なった。今回、その内容の一部をCAREER REPORTとしてお伝えしようと思う。ソフトハウスからCTC、グリーを経てクラウドワークスにCTOとして参画した彼が、自身のキャリアから後進のエンジニアに伝えたいメッセージとは。

▽記事ハイライト

・「インターネットがみんなのものに。非ネット企業のテクノロジー企業化」
・「業務効率改善から事業の中心へ。ITエンジニアリングが主役として輝く時代の到来」
・「僕たちは未知なものに立ち向かっていかなくてはいけない」
・「〇〇エンジニアは危ない」by著名Rubyist
・「正直は割に合う」

インターネットの一般化・非ネット企業のテクノロジー企業化

まず、「インターネット」という大きな枠を考えてみましょう。ご承知の通り、スマートフォンの爆発的な普及によって、インターネットがより多くの人々の生活の一部になっています。総務省の2013年通信利用動向調査によると、世帯の約50%がスマートフォンを持っているという結果が出ています。特筆すべきは、PCを持ってなかった人にもリーチしてきていることでしょう。

また、これまでビジネスにおいてITを活発に利用していなかった業界や企業なども変わり始めています。好例が日本交通のアプリですね。
(※― エンジニアが語る開発秘話。老舗タクシー会社《日本交通》は、なぜ90万DLのアプリを自社開発できたか?

他にも、「単なるネットの本屋」から大きく成長を遂げているAmazon。非ネット企業のテクノロジー企業化がより一層進むかもしれません。

脇役だったのは過去の定説。ITエンジニアリングが主役の時代。

エンジニアを取り巻く環境にも目を向けてみましょう。

私はソフトハウスからCTC、グリーを経て、いまクラウドワークスにいます。規模の大小・自社開発か請負か、この2軸で考えると、WEB/IT業界を一通り見てきました。



この2軸を基に考えてみましょう。まずは「請負(受託)か自社か」という点です。

業界の遍歴も振り返っておくと、一昔前まで、エンジニアの主な活躍場所は受託開発の現場に限られていましたよね。

しかし業界の拡大とともに、エンジニアの活躍場所も大きく変わってきました。これからは、あらゆる事業の中心にインターネットがあり、エンジニアの活躍の場も広がることは間違いないです。

次は規模について。

リクルートワークス研究所の調査報告によると、より一層正社員数は減少し、フリーランス・個人事業主が増えています。これは全業種での予測ですので、WEB/IT業界に関して言えば、この傾向はより顕著に現れるかもしれません。

また、億単位でユーザーを抱えるサービスを少人数で開発運営する企業も出現してきました。例えば、InstagramやWhatsApp。たった数十人で億単位のユーザーを獲得し、サービスを維持拡大しています。

「ここからどんなことが言えるか」ということなんですが、いまはもうITエンジニアリングが主役の時代なんですね。脇役だったのは業務効率改善といったバックオフィス系がエンジニアリングの主戦場だった時代のお話です。エンジニアリングによって作られたサービスが企業・事業の中心になっています。さらに、インターネット・クラウド技術の進歩で、個人の力で影響を与える範囲が拡大し続けている。エンジニアの可能性はどんどん高まっています。

ここで、Amazonのジェフ・ベゾスの言葉を引用しましょう。



つまり僕たちエンジニアは、これから「未知なものに立ち向かっていかなくてはいけない」ということだと思います。

この話は決して自社開発を行なう企業に属すエンジニアに限った話ではないと思っています。SIerもこの流れになってくるのではないでしょうか。エンジニアも自身で事業開発を手がけられるようになるキャリアプランも視野に入れる必要がある時代になっていると感じます。



“手を動かし続ける”エンジニアとして生き抜くために。

以前から、エンジニアの「35歳定年説」を耳にする方も多いかと思いますが、年齢に関係なく、「自らがロールモデルを創っていかなければいけない」という思いを私自身持っています。

よく、「大規模か小規模か、受託か自社開発か、どんな企業に入るべきか?」という質問を受けるのですが、間違いなく言えることは「エンジニアに求められる能力は、企業のステージによって大きく変わる」ということですね。

なにより、自分にあった企業を見つける事が大事になります。実のところ、携わった事業の成功・失敗は自分のキャリアとあまり関係がありません。最も重要な事は、その中で何を成し遂げたのか、ということ。



こんな職務経歴書をよく拝見しますが、その人自身が何を成し遂げたのか、全くわかりませんよね。重要なのは、会社の外から見て説明できるようにすること。社内の仕事でもきちんと評価される。自分の魅せ方をより意識するエンジニアであるべきなのではないかと思います。

次に、技術に関して。以前はベンダーが押し付けてきた技術を習得せざるを得ない状況が多分にありました。しかしいまは、技術の発信がコミュニティ主体なので、本当に有用な技術しか流行らなくなっています。

よく、どんな技術を取得するべきですか?という質問を受けるので、人より少し先に技術を獲得するためのアドバイスをすると、コンサルや現場を離れた人が「おもちゃ」というような技術を選ぶことをオススメします。実はJavaもRubyもそうでした。最初に登場した時は、ベテランからよく「おもちゃ」と馬鹿にされて、仕事では使えないとされました。曰く「遅いから使い物にならない」「メモリを食い過ぎるから効率が悪い」というようにです。しかし今日ではそういったダメだった部分がコンピューティングパワーの向上やクラウド技術の成熟、もちろんその技術自体の改善も含めて問題ではなくなり、デメリットが相対的小さくなって広く使われるようになりました。その技術のコアになる価値がコンピュータの性能とは違うところにある場合、将来的には広がる可能性があるのです。



自分の志向にあった技術とそのコミュニティに入ってみることで、自身のキャリアにも大きな影響を与えてくれると思います。

しかし、「〇〇エンジニア」と、自らを規定してしまうのは危険です。“著名Rubyist”なんて紹介をされる人間が言うことではないですが(笑)技術は必ず移り変わります。その前提をきちんと認識した上でエンジニアとして成長していく事が大事だと思います。

一方で、息の長い低レイヤーのプロフェッショナルになる道もあるかと思います。使われていればニーズは必ずあるので。

「正直は割に合う」

最後にまとめに入りたいと思いますが、エンジニアとして「一生をかけて取り組める課題」を発見することが大切だなと思っています。

これは、クラウドワークスの技術顧問でもある瀧内さんの言葉なんですが、自分で課題を発見できるエンジニアが強いというのは本当に感じていて、言われたことだけやるのではなく、問題意識を常に持っていることが自身のキャリアにも大きな影響を及ぼすと思います。対象は、技術であっても組織的なものであっても構わないと思います。

私はもうサラリーマンエンジニア人生20年近くになりますけど、最近しみじみ思うのは、エクストリーム・プログラミングの考案者であるケント・ベックが言ってた話で、「正直は割に合う」ということなんです。

業界や技術の話をしてきましたが、やっぱり業界狭いので誠実に、正直に成果を積み上げていくのが重要かなと(笑)

まとめです。

 ・エンジニアリングそのものが事業を創る世界では35歳を過ぎてもコードを書くことで事業にコミットできる。エンジニアにとって幸せな時代の到来。
 ・その中で生き残るには戦略的に技術を選んで、外から見える成果を残す必要。
 ・どんな企業にもステージがある。自分が活躍できるステージを見つける。


ありがとうございました。

(おわり)

(講演資料:SpeakerDeckはこちら


編集 = 松尾彰大


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