社員の7割がエンジニアやデザイナーなどの技術職だというアラタナは、一見採用に不利とも思われる地方・宮崎に居を構えながら、事業拡大とともに順調に採用を続けているという。アラタナ社員にみる地方でしか得られない働き方にも迫った、代表・濵渦伸次さんへのインタビュー第2弾。
▼アラタナ 濵渦伸次さんへのインタビュー第1弾
なぜ地方に(魅力的な)働き口が生まれないのか?《アラタナ》濵渦伸次と考える![前編]
宮崎に本拠を構え、eコマースに特化したテクノロジーとサービスを提供する《アラタナ》。昨秋に大型の資金調達を完了させ、国内屈指のファッションWEBマガジンを手掛けるハニカム社をグループ化するなど、その勢いはとどまることを知らない。
2020年までに「宮崎に1000人の雇用」を生み出すビジョンを掲げる同社は、2015年にIPOを目指し、現在100人程度の社員も増加傾向にあるという。
今回お話を伺ったのは、アラタナを率いる濵渦伸次さん。社員の7割がエンジニアやデザイナーなどの技術職だというアラタナは、地方に居を構えながら、いかに優秀な人材を獲得しているのか?アラタナ社員にみる地方でしか得られない働き方にも迫った、インタビュー第2弾。
― 話題を変えて、アラタナは福岡に一つ開発拠点を持つだけで、その他はすべて、宮崎だけでサービスを開発・運営されていますね。
はい。アラタナには、いわゆる営業支社がないんです。そして、地元の会社からの売上って2%程。98%は県外からの受注です。
― それはすごい。イメージするなら「外貨を獲得して、宮崎に落とす」ような。利益は社員の給料となり、地元における経済的効果も高い。
アラタナは「ハッピートライアングル」 という方針を持って事業を行なっています。このトライアングルは、法人としてのアラタナ・社員・クライアント企業の三者を指しているのですが、誰にとっても『利益=ハッピー』となる、技術、サービス、雇用、新たな価値を創造し続けるということです。その活動を通して、宮崎に活気を与えられればと。
― 現在、社員は100名前後で7割以上はエンジニアやデザイナーだと伺っていますが、地方でいかに採用活動をされているかも気になるところです。WEB・IT業界に属する企業では、やはり“地方”というのが採用活動においてネックになるのでしょうか?
むしろ、地方のほうが事業やビジョンといった“アラタナの色”を出しやすく、順調に採用できています。今は東京のほうがエンジニアが採用できないといった話をよく聞きますね(笑)。
― 採用は地元宮崎に限らず行なっているんですか?
もちろんです。実はU・Iターンで中途入社した割合が結構高くてですね…Uターンだと4割、Iターンは1割程度はあると思います。その多くは、東京などの大都会から帰ってきた人。みんな宮崎が好きなんです(笑)。
そんな、地元に帰りたい、地元で働きたいと思ってる人が多いというのは実感としてかなりあって、そんな思いを持った人にとって、働きたい会社ナンバーワンになっておきたいという思いはあります。
― 地方でエンジニアやクリエイターが働く上で得られるもの、成長の機会ってどんなものがあるんでしょうか?
たしかに東京にはあらゆるものがありますよね。僕も去年1年間、東京に住んでたんですけど、面白い人との出会いはたくさんあるし、ビジネスのチャンスもたくさんありました。でも、出張で十分なんですよ。宮崎-東京間は、飛行機だと1時間半。めちゃくちゃ近いし、場所は問題にならない。
あえて都会と比較するならば、毎日往復2時間、満員電車に乗る時間を勉強やプライベートの充実に充てるだけで全く違う人生になると思います。
宮崎ならではの生き方、働き方という点で言えば、毎朝釣りをしてくるエンジニアもいれば、サーフィンして出社する営業マンもいます。
僕がよく東京のエンジニアたちに言うのが、「地方で成長して、成功したほうがかっこいいじゃん」ということ。場所にとらわれないビジネス領域にいるアラタナだからこそ、宮崎発のメガベンチャーとして、成長していきたいと考えています。
― いま採用にも注力してらっしゃるとのことで、どんな点を重視して見られるんですか?
コミュニケーション力、とまとめると何なんですけど…ちゃんと挨拶できるとか、一緒に笑えるかとか。そこだけかもしれないですね。
― 技術力などは最低限しか見ないと?
当然見るのですが、いいエンジニアはみんな「喋れる」んですよ。ちゃんとコミュニケーションが取れる。僕の知っている優秀なエンジニアはみんな“言語化”できる人たちばかりです。技術力だけあってコミュニケーションがうまく取れないという人はあまりいないんじゃないかと。
これはエンジニアに限ったことではないのですね。デザイナーもバックオフィスも一緒に働きたいと思えるか。
― 言語化できるっていうのは面白い視点ですね。
人見知りな方はもちろんいますが、僕らは採用可否を決めるまでに4-5回は会うんですね。何度も顔を合わせると、お互いリラックスして話せる。
僕は応募者の好きな話をするようにしていて、その時は彼ら眼の色が変わるんですね。エンジニアなら「このライブラリがすごくいいんですね!」とか。デザイナーだと「好きなフォントなんですか?」とか(笑)
そういうコミュニケーションをとると、技術やデザインが好きな人は目を輝かせるんです。やっぱりキラキラ話すヒトは魅力的なんですよね。そこは一番見ているかもしれません。
― 首都圏だけでなく、地方に住むエンジニア・クリエイターの方々にとっても参考になるお話だったと思います。ありがとうございました!
(おわり)
[取材・文] 松尾彰大
編集 = 松尾彰大
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