カンヌ広告祭など名だたる広告賞を受賞してきたクリエイティブ集団「イメージソース」。その新人デザイナーが秋田佳子さんだ。実は彼女、デザイナーという顔のほかに、クラブやライブハウスで映像を流すVJとしての顔も。個人でも「表現」の場を広げる、そんな新しい時代の創作活動のカタチに迫った!
▼イメージソース代表 小池博史氏のインタビューはこちら!
イメージソース小池博史に訊く「明日のクリエイティブ」|生活に息づくデザインの発想
「毎日の暮らしを見つめよう」イメージソースが日常の“ちょっと不便”をデザインで解決するワケ
WEB・IT・ゲームなどの業界で働く女性クリエイターを応援!今回、HACK GIRL企画でご紹介するのは、カンヌ国際広告祭などでも数多くの受賞歴を誇るクリエイティブ集団『イメージソース』デザイナーの秋田佳子さんだ。
実は彼女、イメージソース入社3年目の新人デザイナーという顔だけではなく、クラブやライブハウスなどで音楽に合わせて映像を流すVJとしての顔をもつ。また、友人や知人のつながりから、CDジャケット、そしてWEBサイトなどのデザインも手掛けているというから驚きだ。美大に通っていた当時から継続してパーソナルな創作活動を続けている。
そんな彼女のパーソナルな活動は、めぐりめぐって会社での仕事にも良い影響を!?
最近では、VJの活動で知り合った渋谷パルコにあるソーシャル放送局『2.5D』の担当者をイメージソース代表の小池氏に紹介。それがきっかけで、トークイベントが開催された…といった事例も生まれたそうだ。
仕事でも、個人でも、全力投球!そんな女子クリエイターの表現スタイルは、近未来の“創作活動の新しいルール”なのかも?
― 秋田さんは、クラブやライブハウスでVJとして個人でも活動されているんですよね!やはりクリエイターとして「表現の幅を拡げなきゃ!」みたいな気持ちがあるのでしょうか?
いえ、ただ「音楽と映像が好きで、それだけ」っていう感じで(笑)。もともと大学の時に音楽が好きな友達に初めてクラブに連れて行かれて。そこで「あの映像流している人って、カッコイイ!」って思ったことがきっかけですね。
その後に「週末にパーティーあるけど、VJやってみる?」と美大の先輩から声をかけてもらったんです。やってみたらドハマりしまして、大学生活の後半は、週末になるとほぼどこかのクラブで映像を流している…という生活になりました。でも、それがすっごく楽しかったので、イメージソースに入社した今でも続いている、といった感じです。
― なるほど。「スキルを磨こう!」と意気込んでやったワケじゃなく。もっと、自然な流れから始められたんですね。そういった「アート」や「クリエイティブ」には幼い頃から親しんでいたんですか?
うーん、どうなんでしょうね(笑)。別にきちんと勉強していたわけではないですが、両親の趣味が「絵」だったことは影響しているのかな…。小さい頃からよく展覧会に連れていかれたり、親の画材を勝手に使って遊んだり。作品みたいなものも作っていたような、そうでもないような…。
でも、言われてみると、何かをつくったり、表現したりすることは、ずっと好きだったのかもしれません。
VJの活動も同じで、音楽が好きで絵にしてみたい!そういった表現みたいなことをしていないと、逆に苦しくなってしまう自分もいたりします。
― 秋田さんにとっては「表現をすること」が、日常と地続きというか「至って普通のこと」なのかな、という印象を受けました。
表現してないと生きていけない!なんていったら言い過ぎかも知れませんが、イメージはそんな感じかもしれません(笑)。それがあるから、心のバランスが取れているのかも。
…私、地元がすっごい田舎なんですけど、空が広かったり、田んぼがバーッと一面にあったり、そういうところを自転車で走りまわったり…あの風景の感じは、自分の描く絵やグラフィックアートの裏テーマになっていたりもして。すごく抽象的な絵だし、実力があるわけではないからカッコいいことを言える立場でもないんですけど(笑)
絵にしても別に小さいころから勉強したわけじゃなくて…なにしろ小中高の部活は「剣道」と「空手」ですから(笑)。親から「家でも絵は描けるから運動しなさい」と言われていたんですよ。
― ちなみに、個人でやっているVJの活動は、会社でも活きたりするんでしょうか?
最近だと、VJ活動で知り合った渋谷パルコのイベントスペース『2.5D』の担当の方を、当社の代表の小池に紹介して。それがきっかけになって、トークイベントが開かれたっていうこともありました。こんな風に人と人との繋がりが生まれることは、個人で動いてみることの良いところかも知れません。
― 確かに、クリエイターの個人活動は人脈や実績づくりに役立つって言いますもんね。イメージソースさんに入社された時も、大学時代のVJ活動が評価された?
えーっと…正直、よくわかりません(笑)。聞いたこともないかも…。ただ、そういう面もあるのかな。大学時代に好きでやっていたVJ活動がきっかけで、「今度だす音源のジャケットデザインを頼める?」って声をかけてもらったり。好きなDJさんをツイッターでフォローしたら「VJやってるよね?」って知ってもらったり。それがきっかけでいろいろな活動をお手伝いさせてもらえることも多かったですね。イメージソースの求人に応募した時にも、そんないろいろなところでつくった作品をポートフォリオに入れてました。けど、ホントのところはわからないですね(笑)。
― なるほど(笑)。具体的に個人での活動で得たノウハウが会社の実務で活きた!という場面ってありますか?
“まるっきり活かせる”みたいなことは少ないかも知れませんね。会社だと、まだ修行中の身ということもあり、先輩に教えてもらいながら、ちゃんとつくることが大事だったりします。たとえば、ボタンの配置でも、どうしたらぴったりハマるのか?やっぱりこれだよね、というのを何とか見つけていく感じですね。
でも、個人の活動だと、わりと自分の好きなようにやらせてもらえるので。いろいろな実験からインスピレーションが得られるのは良いことかなと。VJでいえば、音と映像をリンクさせていくんですけど、「キンキンとした高い音は線で表現しよう」とか「ドンドンという低い四つ打ちは円で迫力を出して」みたいな。
― そういう色やカタチを捉える発想はどんなデザインにも活きそうですよね。たとえば、仕事でも、もしかしたら「その人らしさ」になったり。
まだそこまで考えられていないですが、そうなれたらいいですね(笑)
― これまでのお話で、秋田さんの創作活動は、すごくフラットだし、すごく自由だなぁと感じました。
イメージソースの代表である小池の影響もあるかも知れません。「個人の活動と会社とが繋がって何かできたら良いよね」という想いを持ってサポートや応援をしてくれるので。
先輩のなかには、個人でほとんどプロレベルの音楽活動をしている方もいますし、モデルをやっていて「ちょっと撮影に行ってきます」という人もいたりします(笑)。
そういった面はわりと自由なので、インタラクティブなデザインを勉強するために芸術祭に行かせてもらえたり、インスピレーションを得るためふらっと本屋に行くことも大丈夫だったり。そういう伸び伸びした環境があると思います。
― まぁ普通の会社だったら有り得ないですよね(笑)。とはいえ、クリエイティブな会社のなかでも、かなり自由な風土なのかな、という印象です。
これは勝手な印象なんですけど…わりと「会社での仕事だから」とか「個人の趣味だから」とか、そういった境界って、あまり意識していないのかもしれません。
私も、いつかはVJにしても、グラフィックにしても、個人でつながった人たちとカッコいい仕事ができたら良いなと思っていて。みんなが30代になって変わらず、何かを発信していたら、一緒に仕事をしてみたい。音楽も、映像も、デザインも、それぞれが好きなことを諦めずつくり続けて、つながり続けられていたらステキだなと思います。
― 個人の活動や会社での仕事という枠を取り払い、みんながつながって面白いことが生まれる。そう思うとワクワクできますよね。
ですね!イメージソースの場合だと、社内でもそんな風にワクワクして仕事をしている人が多いので。こないだも、VR(Virtual Reality)が体験できるヘッドセット『Oculus』が送られてきて。みんなでデモを見ながら「わーすごい!」とか言ってて(笑)。これで何ができるんだろう?とか。そんな風にしてどんどんワクワクする方向に、足を止めずに進んでいきたいと思ってます!
― 会社のことは会社のこと、個人の実験は個人で、といったやり方は古くなっていくのかも知れませんね。クリエイターが活動の幅を広げていく上で参考になるかと思います!本日はありがとうございました!
[取材]白石勝也 [文]黒川恵太
編集 = 白石勝也
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