2014.03.18
スタートアップ女性デザイナーの生態系とは?―Designer's Meetupイベントレポート

スタートアップ女性デザイナーの生態系とは?―Designer's Meetupイベントレポート

スタートアップの女性デザイナーの働き方、役割、考えていることとは?3/14に開催された『Designer's Meetup』に登壇したiQON(VASILY)、Crocos、STORES.JP(Bracket)、nanapi、Lang-8の計5社の講演をお伝えする。

スタートアップで働く女性ウェブデザイナーの働き方とは?

WEB業界の魅力の一つに、業界内におけるつながりの強さが挙げられる。エンジニアの方は、この文化の存在を肌で感じていることだろう。

しかし女性ウェブデザイナーによる勉強会・イベントは非常に少ないそうだ。さらにスタートアップという枠に限るとほとんどない状況だという。エンジニアと比べデザイナー職に就く人は少ないのだから、当然かも知れないが…。

そんな中、3/14のホワイトデーに恵比寿・VASILYオフィスにて開催されたのが【Designer's Meetup】


Designer's Meetup


今注目のスタートアップで活躍する5人の女性デザイナーが集まり、サービスのデザインから日々の仕事内容、各々のデザイン論など、あまり知られていないスタートアップのデザイナーの実態を赤裸々に語るというイベントだ。

開催告知がなされると、即日予定座席数を上回る申し込みが入ったというから、「注目を集め、求められていたイベント」という事実は間違いないだろう。

集まったのはiQON(VASILY)、CrocosSTORES.JP(Bracket)、nanapiLang-8の女性デザイナーたち。

本レポートでは、登壇した各ウェブデザイナーの語る、スタートアップでの仕事内容や働き方、実践していることをまとめてお届けする。公開されている一部発表資料とあわせてご覧頂きたい。

5人5色の働き方、役割、考えていること

まず登壇したのは、VASILYにてiQONに関わる全てのプロダクトデザインを担当する権美愛さん。会員数75万、月間コーディネート投稿数6万。そしてユーザーレビュー平均4.5を獲得するまでに成長しているiQONを初期から支えてきた人物だ。

「iQON's DESIGN MISSION―新しいファッションメディアであるiQONのデザインで大事にしていること」をテーマにプレゼンテーションを行なった。

権美愛さん

VASILY 権美愛さん

スタートアップのデザイナーらしく、アプリ内のバナーからタイアップコンテンツまで幅広いデザイン領域を手掛けているという権さん。様々な“系統”の女性をターゲットにしたプラットフォームならではの考え方・最適なUI/UXについての考えを紹介してくれた。

「数多くのコンテンツ・ブランドが同居するプロダクトであるため、デザインルールとして、“デザインガイドライン”を作成しています。甘すぎず辛すぎず、コンテンツを邪魔しないシンプルさで“抜け感”を意識し、女性らしい柔らかさを表現した世界観をiQON内で構築しています」

さらに、デザイナーだけで完結せずに、社内のエンジニア・グロースハッカーとともにプロダクトの改善に積極的に取り組んでいるという。

▽発表資料はこちら


「Photoshopに向きあうだけがデザイナーの仕事ではない。日常のあらゆる物事を解決し、毎日を豊かにできるのがデザイナーという職業」という言葉が印象的だったのが、「デザイナーからデザイニストへ」というテーマで講演を行なった、Crocosの市田舞さん。

「知らないうちに新機能がリリースされて、プロダクトのデザインがチグハグになることって、よくありますよね」

市田舞さん

Crocos 市田舞さん

と、デザイナーなら一度はする体験に悩んでいる際に出会ったのが、PAOS代表の中西元男さんが提唱する『デザイニスト』という概念だったという。

「デザイニストは、プロダクトのビジュアルデザインにとどまっていなくて、事業や企業、更には人々の生活や社会全体まで、幅広い領域に対してデザインできる職能と役割を指す考えかたです」

「この言葉と出会ってから、エンジニアとのコミュニケーションもデザインと捉えればいいんだ!と気が付いて。リリース前の情報を自分で収集したり、プロダクトの改善案をデザイナーの立場から提案するという、行動に移せるようになりました」

Crocos社はヤフー社の傘下で、ソーシャルメディアマーケティングツールを手掛ける企業。

スタートアップというと、どうしてもコンシューマ向けのサービスが想起されがちではないだろうか。BtoBサービスを手掛けるスタートアップのデザイナーの仕事内容や考え方を知れる貴重な機会となったはずだ。


参加者の中にはWEB業界以外の女性デザイナーも散見していた中、「Webサービスをデザインするってどういうこと?」というテーマで講演したのが株式会社BracketでSTORES.JPを手掛ける河原香奈子さんだ。

河原香奈子さん

Bracket 河原香奈子さん

「プロダクトのユーザー接点のある箇所・ブランディングに関わるものは、すべてデザインしています。デザイナーとは、サービスのビジョンやコンセプトを可視化し、設計から表現まで最終的なアウトプットに責任を持つ、世界観をつくる人ではないでしょうか」

河原さんが日頃から心がけている4つのポイントが、非常に興味深かったのでご紹介しよう。

・デザインを広く捉える(デザイナーの領分を限定しない)
・世界観を大切にする(サービスの世界観に沿った設計・表現を心がける)
・アウトプットに執着する(ひとりよがりのこだわりでなく、サービスの信頼度を上げるという意志を持つ)
・エンジニアと仲良くする(デザインの意図を伝え、臨機応変に対応する)

また、スタートアップならではの状況下では、「デザイナーは自ら動き、あらゆることをしなければいけない」と語り、一方でリソースは限られてる中で「いま何をすれば一番効果的か?成長が見込める部分に注力する。」という視点を常に持っているという。

デザイナーがスタートアップで働くことに関しては、「WEBサービスのデザイナーの絶対数がまだまだ少ない。だからこそ大きなチャンスがある。大きな裁量を持ち、サービスとともに自身もデザイナーとしても成長できることが魅力。」と、自身の経験を基に聴衆に話していたことが印象的だった。

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世界中で利用されているLang-8にデザイナーとしてジョインした椚亜希子さんは「世界と対話するwebサービスを運営してできるようになったこと、できなくなったこと」というテーマでの講演。

前職は関西のWEB制作会社に勤務していたという椚さんは、スタートアップのデザイナーに求められるスキルセット、働き方の違いに気がついたという。

椚亜希子さん

Lang-8 椚亜希子さん

「スタートアップのデザイナーが携わる範囲や深さは、会社の規模やサービス内容によって大きく異なると感じます。ただ共通して言えることは、基本的なデザインスキルセットに加えて、データ解析やマーケティングなどの横断的なスキルが求められているのではないかと思います」

さらに椚さん自身、ユーザーインタビューやCSなど、業務の幅が広がった実例とともに、Lang-8社にジョインしたことで、できるようになったことをこのように語った。

「最も大きなポイントが、ユーザーとのコミュニケーションを直接とれるようになったこと。受託のWEB製作会社ではなかなか体験できないし、フィードバックをプロダクトの改善に活かせるんです。」

一方で、できなくなったことに、まとまった時間の確保を挙げた。スタートアップといえば、激務のイメージを持つ方も多いかもしれない。確かに幅を広げれば、長い時間働くか、何かの時間を減らすしかないだろう。

「とにかく人と話す時間が増えました。進捗報告のMTGだけでなく、サービスの中長期的なことをメンバーと話す時間が増えたり、このように外部イベントに登壇したり。作業的にPCと向き合っている時間は、短くなったかもしれません。」

単に幅広い業務をデザイナーが兼任するという話だけにとどまらず、WEB製作会社時代との違いについて言及した。WEB制作会社に勤務しているウェブデザイナーの方にとっては大いに参考になるプレゼンテーションだったのではないだろうか。

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大トリを飾ったのがnanapi社の木村真理さん。ローンチから約2ヶ月で大きなデザイン変更を行なったQ&Aアプリ「アンサー」の事例をもとに「ブレないアプリデザインのすすめかた」をユーモアを交えながら語った。

「ビジュアルデザイン・UI・仕様でブレにブレていた」というアンサーチーム。そんな彼女がもっとも重要な要素として挙げたのが、サービスのステートメント(コンセプト)の理解と共有だ。

「あらゆる判断基準として、ステートメントを設定すべきです。もう100回でも、1,000回でも1万回でも(笑)。あらゆるフェーズでステートメントを見直すことで、未然に“ブレ”を防ぐことができる。アプリ制作ならGUILDの深津氏(fladdict)のブログ記事を参考にしてはどうか。」
※参考資料:アプリ製作のための定義ステートメント共有シート

素早いテストと改修を繰り返すことで、メジャーアップデートの結果、投稿数の増加に寄与したという。具体的な話にも踏み込んで語ってくれた。

木村真理さん

nanapi 木村真理さん

「例えばメディア投稿機能のUIを検討した際、同様の機能を実装するデファクトスタンダードにならいました。きれいな文法にとらわれ過ぎると、ユーザーにとってストレスになります。」

「仕様に関しては、質問検索機能の追加を検討したことがあります。でもステートメントと照らしあわせてみると、アンサー内の質問は“フロー情報”。ストックされて検索するくらいなら、更に質問投稿して欲しいんですね。ユーザーにとって“あると便利”はまずいらないハズです。良かれの機能追加がノイズになるかもしれません。」

開発リソースは有限であることをデザイナー自らが意識し、機能追加の見直しをすべきだと語る木村さんは最後にに“ブレ”を未然に防ぐチーム作りを紹介した。

「いまでは10数人が関わるプロジェクトだが、初期は4人メンバーだった。チームは限りなくフラット。エンジニア、デザイナーという立場にこだわらず意見を言い合える状況が重要だと思います。」

スタートアップの新アプリでデザイナーがどんな役割を果たしたのか?という視点からの情報発信は貴重だ。参加者の中には熱心にメモをとったり頷いている様子が印象的だった。

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レポート後編はコチラ
スタートアップ女性デザイナーへの大質問会!―Designer's Meetupイベントレポート

[取材・文] 松尾彰大


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