2014.04.11
バンドに人生を賭けたことで見えた、チームビルディングの本質|サイカCEO平尾喜昭の生き方[2]

バンドに人生を賭けたことで見えた、チームビルディングの本質|サイカCEO平尾喜昭の生き方[2]

膨大なデータの相関関係を検証できるBtoB向け統計分析ツール『xica adelie』が注目されるサイカ。CEOの平尾喜昭氏は一時期、プロのミュージシャンを本気で目指し、バンド時代は作詞・作曲&ボーカルを担当…という異色の経歴の持ち主。ロックバンドとスタートアップ、そこには意外な共通項があった?

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▼サイカCEO平尾喜昭氏 インタビュー第1弾
音楽に人生を賭けたロック少年が、なぜ統計分析を!?|『xica』CEO平尾喜昭の生き方[1]

バンド活動で培ったことが今に生きている

膨大なデータの相関関係を検証できるBtoB向け統計分析ツール 『xica adelie』を提供するサイカ。「誰でも簡単に使える」をコンセプトにしており、Tech Crunch Tokyo2013スタートアップバトルでマイクロソフト賞を受賞。今年1月には総額1億円の第三者割当増資を実施した。

あまり知られていないが、CEO平尾喜昭氏は異色の経歴の持ち主。大学時代は、頭の右半分を金髪に染めて、左半分は刈り上げ、ライブハウスとスタジオを往復。多くの時間を音楽に費やし、プロミュージシャンを本気で志していた。

「なんとなくプロになれれば…」というレベルではなく、いかに知名度をあげていくか、いかにイベントで集客するか。セルフプロデュースを実践。セミプロといって差し支えない活躍をした。

平尾喜昭氏

バンド時代の平尾喜昭氏

平尾氏は「ミュージシャン自身がマーケティングや組織論、経営論、著作権と、様々な学問をインプットし、場面場面で活用出来なくては闘っていけない」(慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC)HP『SFCスピリッツ』より)と、バンドマン時代を振り返る。

一体「バンド活動」で何を学んだのか。その経験はスタートアップにどう活きたか。起業とバンドの意外な共通項、そしてスタートアップに必要とされる本質に迫った。

全ての楽器を一人で演奏できる必要はない

― 一見すると「バンド」と「スタートアップ」は全くの別モノのように思うのですが、今に活きていることはあるのでしょうか?


平尾喜昭氏

じつはめちゃくちゃたくさんあるんですよ。みんな一回はバンドを組んでみたほうがいいのでは?と思うくらい(笑)。わかりやすいところでいえば、プレゼンで舞台に立つ時、どう話を持っていくか?どう場を盛り上げるか?大げさじゃなくてライブに近い。

よく先輩のバンドに「とにかく反復して覚えて、一度全部忘れて、もう一度覚えて…」を繰り返すことで、自然とパフォーマンスできるようにならないとダメだ、と言われていて。バンドで失敗した体験もたくさんあるので、今はすごい意識しています。

あと、作詞・作曲をやっていたから特に思うんですけど、エンジニアやデザイナーなど「つくる人」への敬意はすごく大切だと思います。まわりから見たら「そんな細かいところにこだわる?」というところが大事だったりもする。その価値の置き方や仕事の進め方は尊重したいんです。

僕はボーカルを担当していたんですけど、ドラムは叩けないし、ベースもできない。当たり前ですけど、一人でドラムを叩きながら、ベースも弾いて歌うバンドはないですよね。みんなが自分のやれることで最大限パフォーマンスを発揮して、ひとつの音楽を作り出す。だから、「一人じゃ何もできない」し、バンドメンバーに背中を預ける感覚はずっとあるんだと思います。

一般的に、起業したいと思った時、どうしても「全部自分で出来たほうがいい」と思ってしまうことも多いじゃないですか。マーケティングも、営業も、何なら開発も…と。もちろん一人で全部ができて成功する人もいますが、よほどの天才ですよね。

セッション・対話が問題を追求していく最強の武器

― チームだからこそつくれる物がある、ということも言えそうですね。


平尾喜昭氏

一番大きいところで言えば、自分ひとりでは問題って追求しきれないんですよね。スタートアップにしても「問題はここかな?」と聞いた時に「ぜんぜん違うでしょ。こっちが問題でしょ」と言ってくれるメンバーがどれだけいるかが勝負で。

SFCの竹中平蔵ゼミで学んだことの一つに、「what's the problem?」問題は何か?常に考えろということがあって。これを一人でやろうとすると、クエッションの深堀りが止まってしまう。『xica adelie』が生まれた背景も、「既存のツールが使えない。重い」というみんなの問題意識が発端だったんです。「なぜ、既存のツールはダメなんだ?」と全員で深堀りしていって、ブレストしていくうちに「ユーザー同士で共有できたほうがいい」と今のサービスに近づいていった。そんな風にしてどんどんアレンジが加わっていくことに価値があると思うんです。


― それも、バンドとの共通項なのでしょうか?


たとえば、歌詞や曲も一つのアイデアでしかないんですよね。そこにみんなのアイデアが掛け合わさり、全く違う表情の曲に仕上がっていく。だから、みんなで問題を深めていって、解決できる何かが生まれていく、そのプロセスは本当に似ていると思います。

それに、みんなで何かを作り出す興奮って忘れられなくなりますよね。「一人じゃ気づけなかった!すごい!」と。こんな風にして考えてもみなかったものが生まれる連鎖をつくる。自分が腹落ちしていなかったり、意見を譲ったり、言われたことだけをやってもダメで。もし、それで結果が出ても喜べないから、みんなでやるってところが鍵だと思っています。

自分のパートにおいて徹底的にプロを目指す

― バンド時代にできていなかったからこそ、今やろうとしていることもありますか?


平尾喜昭氏

たとえば、自分が担当するパートは、徹底的に専門スキルを上げていくとか。売れるバンドは往々にしてメンバーがそれぞれ高い専門性を持っているんですよね。そういった意味で、バンドをやっていた頃は、ボーカルのスキルはそれほど真剣に磨こうとしていなかったかもしれない。作詞・作曲もそうですし、イベントも、広告も、いろいろと欲張ってやろうとしていた。


― バンドと同じく、スタートアップでも高い専門性を持つメンバーが集まれば、組織として強くなりますよね。


サイカは自分でいうのもおかしな話ですが、けっこう面白い経緯で出来たチームなんですよ。

たとえば、慶応が毎年開催しているパーティーの立ち話で、成城石井の創業者である石井良明さんと知り合って。「こういうことがやりたいんですよね」と話したら「おもしろうそうだね」と資金面で協力いただいたり、創業時に役員になっていただいたり。

一方で、もともと一緒にはじめたのは中高の同級生だったり、共同代表の山田は僕が高校時代に通っていた塾の先生だったり(笑)。


― その他のメンバーがジョインした経緯でいうと?


バンド時代からPVやフライヤーを作ってくれていたデザイナー…竹中平蔵ゼミでティーチングアシスタントをやっていた先生…たまたまBarで出会った知人の知人というエンジニアの方…と年齢もバックボーンとかバラバラですし、偏りはないですね。


― どのような基準で仲間を集めているのでしょうか?


当然、事業にとって必要なスキルセットがあってというのは前提ですが、それ以上に「この人が会社にジョインしてくれなくても、何か手伝えることはないか」と思えるかどうか。…それって単純にその人が好きってことなのかもしれません(笑)。僕はCEOで、バンドでいうところのボーカルみたいな立ち位置ですが、どっちかというとみんなに教えてもらって何とかなる下っ端なんです。ただ、「会社を代表する」という役割としての意識はある。だからこそ、大好きな人たちが最高の夢を実現できるきっかけの一つはつくりたいですね。


― ご本人に聞くのは変かもしれませんが…なぜ、平尾さんは、そういった仲間を集めることができるのでしょう?


どうなんでしょう…理由はわからないですけど、事象として言えるのは、昔から危なかっしいから「放っておいたらやばい」と手を差し伸べてくれる方に恵まれている(笑)。

バンド時代から、とにかく何でも体験しないと曲が作れないと思っていて。ちょっと面白そうだと思ったらとりあえずやってしまう。危険ですよね…準備が整ったらやろうという思考回路が壊れているので。だから、よく失敗するんですよ。何度も失敗してしまう。そういう意味でいえば、本気でバンドがやれたことより、本気で失敗できたことのほうが大きいのかもしれませんね。


― そう考えると、バンドだけではなく、スポーツや芸術など何でも本気で取り組んできた経験は、スタートアップというフィールドでも活きてくるのかもしれませんね。本日はありがとうございました!


(おわり)

[取材・文]白石勝也



編集 = 白石勝也


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