2年近くエンジニアの離職者を出していないフィードフォース社の働き方の肝は「残業ゼロの業務設計」と「チームで責任を持つこと」だった。
採用難が続くと言われるエンジニア職だが、いかに長く働いてもらうのかもWEB企業が抱える課題のひとつ。
今回お話を伺ったのは、国内シェア1位のデータフィード運用ASPサービス《DF PLUS》や、ソーシャルログイン活用支援ASPサービス《ソーシャルPLUS》を手掛けるフィードフォース社。20名のエンジニアを抱えながら、過去2年近く離職者を出していないという。
「残業ゼロを前提とした業務設計と技術的向上心の高いメンバーが集まった結果」と語る同社技術チームに所属するマネージャーとエンジニアたちが考える、エンジニアにとって健全かつ成長を促す組織とは。
「創業初期の技術責任者がエクストリームプログラミング(アジャイル型のソフトウェア開発手法)を導入していました。その影響から定時の1時間前から終業の準備をはじめ、30分前に日報記入、定時ちょうどに全員退社という文化が根付いていました」(杉内氏)
フィードフォースに8年在籍する杉内氏がそう語るように、同社の「働き方」文化にはその背景があった。
「もちろん、常にその体制を実現できていたわけではありません。「定時退社」という言葉だけが独り歩きしてしまった時期があったり。開発が込み入ったタイミングや一時的なエンジニア不足、インフラ面での緊急対応、ビジネス面との関わり合いで、残業が発生することはあります。しかし、「望ましい働き方を模索すること」を会社の文化としたことで、メンバー内で「何を目指しているのか」という共通認識を生み出し、定着させることができたと思います」(鈴木氏)
数多くの施策を用意するのではなく、創業当初から「フィードフォースとはこんな働き方をする企業だ」という文化形成が行なわれてきたのだ。
フィードフォースが、残業を限りなく少なくし、エンジニアの離職を防いでいる秘訣。ポイントとなるのは「残業ゼロを基本とした業務設計」と「チームで責任を持つ」ことだった。
「エンジニア一人あたりの残業時間は月10時間以内。フィードフォースは全社的に労働集約型の組織であることを否定しています。歪が生まれるスケジュールで動くことはほぼありません。自分たちでサービスを開発・運用することで、残業ゼロを前提とした余裕を持った業務設計が可能となっています。
残業の捉え方は様々だと思いますが、エンジニア個々人のキャリアを考えると業務外の勉強も重要。そういった自由な活動は、会社のサービス成長にとってもメリットですよね。単純に残業ゼロを成し遂げたいというよりも、時間的な余裕を確保し、いろんなことに時間を投資できる環境を整えようという考えです」(鈴木氏)
今回インタビューさせてもらった4名はみな、SIerやWEB制作会社からの転職組。前職と比較すると、現在の働き方はどう感じているのか。
「残業が続くと体調を崩したり、効率やモチベーションも下がりがちになります。フィードフォースでは残業時間が減った分、安定して仕事に臨めますし、業務内では賄えないスキルアップや情報の取得、社内外で行なわれる勉強会参加に時間を掛けられるのは、エンジニアとして非常に重要だと思います」(玉田氏)
「私は自社サービスを開発・運用したいと思ってフィードフォースに入社しましたが、エンジニア間だけでなく、ビジネス部門との意思疎通がよくとれているんです。風通しがいいからお互い意見も言い合える。変に不満が溜まったりせず、開発に集中できています」(木村氏)
フィードフォースの技術チームはプロダクトに紐付いた開発チームとプロダクトを横断するフロント・インフラエンジニアで構成されている。残業ゼロの業務設計を行なうフィードフォースでは、仕事はどのように振られているのか。
「仕事を誰が担当するかについては、チームに任せられています。というのも「仕事はチームで進めるもの」という意識が根付いているんですね。ですので、1人で仕事を進めるというよりも、2人以上でそれぞれ協調しながら開発を行なうケースがほとんどです」(杉内氏)
「責任を個人ではなく、チームに持たせる感じです。1人が詰まってしまうと、その人がずっと仕事を抱えたまま残らなきゃいけない、みたいなことを未然に防止する効果もあります。結局、継続的なプロダクトの成長とエンジニアとしての成長、そしてビジネス面での成功のためにはバランスが必要で、それを実現させるには責任を分散させるべきだと考えたんです」(鈴木氏)
事業規模の拡大とともにメンバーが増加し、オフィスの拡張も検討しているというフィードフォース社。ユニークな制度を整備して環境を整えるのではなく、文化形成とメンバーの理解によって残業をなくすことで、成長スパイラルに乗せているのが印象的だった。
採用もカルチャーフィットと多様性を重要視し、既存サービスを柱に新しいサービスに挑む好サイクルにも入っているという。彼らが実践するワークスタイルに今後も注目していきたい。
文 = 松尾彰大
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