2017.10.24
大公開!BASEライブ開発の裏側とは?25歳のPM、神宮司誠仁が「優しい世界をつくりたい」と語る理由

大公開!BASEライブ開発の裏側とは?25歳のPM、神宮司誠仁が「優しい世界をつくりたい」と語る理由

BASEが動画ライブ×Eコマース機能『BASEライブ』をリリース! メルカリチャンネルやLiveShopなど、ぞくぞくとライブコマースが立ち上がる今はまさに戦国時代。『BASEライブ』の勝算とは? そこにあったのは店舗とファンの間に生まれる「絆」を重視する独自スタンスだった―。

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店舗とファンの「絆」を第一に。『BASE』プロダクトマネージャー 神宮司誠仁の考え

いま、動画のライブ配信と、ネットショッピングを組み合わせた「ライブコマース」がアツい。

『メルカリチャンネル』(メルカリ)、『SHOPROOM』(SHOWROOM)、『LiveShop!』(Candee)、『Laffy』(DeNA)など各社が参入。

さらに俳優でもある山田孝之を取締役に迎え、トランスコスモスがライブコマースサービス「me&stars」を発表。最近だと東大発ベンチャーFlattが手がけた『PinQul』の参入にも注目が集まった。

話題の尽きないライブコマース。今まさに市場が立ち上がろうとしている。注目は各サービスがどういった戦略をとっていくのか?ということだ。

たとえば、先駆けともいえる『LiveShop!』は「ゆうこす」こと菅本裕子さんなど影響力のあるインフルエンサーを多く起用。TV番組のような作り込みで若い女性たちのファンを取り込む。

そういったなか、編集部が今回取り上げたのが『BASE』だ。

後発ともいえる2017年9月のタイミングで『BASEライブ』をリリース。BASEにショップを開設している店舗オーナー、それぞれがライブ配信していくことで購買行動につなげていく。配信は専用アプリから。番組の作り込みや構成もショップサイドに委ねられている。

特徴のひとつが、必ずしも「インフルエンサーの起用」に頼っていない点。企画開発を担った同社のプロダクトマネージャー、神宮司誠仁さん(25)はこう語る。

「BASEが大事にしているのは、1つ1つのショップなんです」

彼が『BASEライブ』に込めた思い。そこから見えてきたのは、類似サービスが乱立するなかでもブレない軸。自分たちが築きたい世界を思い描き、実現しようとひたむきに取り組む姿がそこにはあった―。


神宮司さん < プロフィール >
神宮司誠仁/プロダクトマネージャー

1992年生まれ、東京都出身。高校時代からインターネットに興味を持ちコードを書き始める。10代の時に連続起業家の家入一真氏によるモノづくり集団Livertyで「おつかい」をするWebサービスを開始。その後、複数のIT企業でサービスの企画アシスタント業務を経験しながらリリース前の「BASE」の開発を手伝い、2013年12月にBASE社にジョイン。フロントエンジニアとして「BASE」に関わり、2015年にはショッピングメディア「BASE Mag.」の立ち上げを担当。現在、ショッピングアプリ「BASE」のプロダクトマネージャーとして、アプリの機能やコンテンツの企画を統括している。

※本記事において「ライブコマース」は、番組をライブ配信しながらインフルエンサーやショップオーナーが商品を売るというものを指しています。ユーザーは他にも、ライブ配信者に対してコメントしたり、いいね!などのアクションが可能。

40万店舗、それぞれの「物語」を伝えていくためのライブ

ーライブコマースサービスが続々と登場していますよね。ズバリ…BASEの勝算は?

それでいうとあまり同じ土俵で戦うという考え方はしていないのかもしれません。勝負していく土俵が少し違うというか。なので「負ける」ということは、ほぼ無いと思っています。

「BASE」でモノを買ってくれるユーザーさんは何に心を動かされているか。それは作り手の思い。なぜそれを作っているかという「物語」に共感いただき、買っていただけているという前提があります。

むしろ「BASE」には「物語」しかない。フリマアプリのような大量の二次流通品もなく、大手メーカーが大量生産しているような商品もありません。

いま、「BASE」って中小企業や個人事業主など、自分たちで商品を作って売っているショップさんが日本全国で40万くらいあるんですよね。オリジナルのファッションブランドだったり、野菜の生産者さんだったり。

少し前まで大量生産、大量消費の時代だと言われていましたが、何かを買おうとした時、選択肢があたり前のように増えていて。ぼくらは心地のよいもの、好きなもの、思い入れが持てるもの、オリジナルなモノを自由に選び、手に取れる時代を生きている。そういった時代感と「BASE」がフィットしていると言ってもいいのかもしれません。

BASE ネットショップが無料で簡単につくれるサービス「BASE」。
CEOの鶴岡さんが手がけた。現在、40万以上の店舗が出店中。 https://thebase.in/

インフルエンサーにも、そうではない方にも「平等」なプラットフォームでありたい

ー他のライブコマースだと、インフルエンサーを起用しているところを多く見かけますが…?


ぼくらの考え方としては、インフルエンサーさんであっても、そうではなくても、「自分でショップを持つ方」にどんどんライブ機能を使ってほしいと考えています。「BASE」は、どのショップに対しても「平等」なプラットフォームでありたい。

ご本人がつくったものを、ご本人が売ってくれる、これが理想のカタチ。ご本人とまったく関係のない商品、思い入れのないモノを紹介して売っていくのは、ぼくらが思い描く理想のサービスではないと思っています。それだとTVCMと変わらなくなっちゃいますよね。もちろん、それを否定しているわけではありません。

当然、インフルエンサーなど影響力のある方々が全面に出て商品を売ったほうが、たくさん商品が売れると思うんです。ユーザーはそのインフルエンサーさんのことを信頼しているからモノを買う。それはひとつの戦略ですし、ユーザーから求められていることでもありますよね。

ただ、「BASE」が大事にしたいのは、1つ1つのショップ。そういったショップが配信したライブを視聴した人がファンになること。その関係が中長期的に続くこと。これが実現したいことなんです。ライブを見ることで、よりそのショップを好きになったり、購買に繋がったりしてほしい。

なので、「BASE」という場においては単に「インフルエンサーさんが紹介した」という文脈は必ずしも機能しない。短期的には販売数が増えるかもしれませんが、ショップにファンがつかない。逆に「ほしい」という動機が、弱く薄れやすくなってしまうのではないかと考えています。


― どのようにその「考え方」や「スタンス」をサービスに落としこんでいったのでしょうか?


新しいインターフェースが登場してきた時、ユーザーはその機能を通して、本当にやりたいことってなんだろう。なぜそれを使うのだろう。どういう「欲望」がその裏にあるのか、突き詰めて考えるようにしています。

自分でもFacebookやInstagramのライブが出てきた当初からずっと使ってはいたんですよ。友達と何気ない会話を配信したりして。あの独特な世界観がいいなと思っていたのですが、うまく言語化ができていなかった。

ただ、使っていったり、他のサービスをみていったりするなかで、動画ライブは特性上、SNSよりも深く、リアルタイムにコミュニケーションが取れるものだとわかってきた。いまライブコマースが来ているのもリアルな「生の情報」をユーザーが求めているからだと思うんです。

この「生の情報」は「BASE」というプラットフォームは非常に相性がいい。これまではショップ側が商品画像をアップロードし、テキストを書き、SNS等で情報を発信して、そこからお客様が買ってくれるかどうか待つしか術がありませんでした。ライブではそういったコミュニケーションのタイムラグみたいなものを無くしていけるんじゃないか。こういったプロセスで今回のリリースにつながりました。

「思いやり」や「思い入れ」こそが、人々の生活のインフラにあってほしい

神宮司さん

ー平等なプラットフォームでありたい。なんというか「BASE」の根本思想に触れた気がします。共感や思い入れ、思いやりでモノの売り買いがされ、支え合っていく社会の礎というか。


それはあるかもしれませんね。そもそも「BASE」ができたきっかけも、代表である鶴岡のお母さんが営む大分の洋品店からはじまっている。「お母さんでも簡単にネットショップができるように」と作り出したのがきっかけなので。

当時ってネットショップを開設するまでの手続きがとても手間で、ほかにもWeb技術が必要だったり、費用が高かったりと一般の方には登録さえ難しかったりして。そもそもインターネットって誰でも使える「平等」なところが良さだと思うんです。誰にとっても優しい場所であってほしい。


ー神宮司さんご自身が、そんな風に考えられる背景とは?


ぼく自身、インターネットに救われたという経験があるからかもしれません。じつは高校を卒業して、いろいろあってすぐに家を出て。そんなとき、後に鶴岡と一緒に「BASE」を立ち上げた家入(一真)さんと某企業主催のイベントで出会うことができた。2012年はじめくらいだったかな。なのでじつは家入さんは「BASE」がリリースされる前からの知り合いなんですよね。

大学も行かず、家出同然だったぼくを、六本木のシェアオフィスにいさせてくれたり、家入さんが作った「リバ邸」というシェアハウスに住ませてもらったり、居場所をもらいました。鶴岡とも家入さんが「CAMPFIRE」をやっていた六本木のシェアオフィスで知り合って、リバ邸でも一緒に住んでいて、インターネットの未来について夜な夜な語り合ったりして(笑)いい思い出ですね。


―BASEに加わったのはいつだったのでしょうか?


手伝い始めたのは2013年12月ですね。それまで自分のサービスをやっていたのですが、鶴岡にカスタマーサポートからフロントエンドの開発まで本格的に手伝ってほしいと誘われて。鶴岡にはお金がない時期に毎日牛丼をおごってもらったりしていたので、ちゃんと恩を返そうと思って(笑)。当初はアルバイトで手伝いはじめたのですが、その数年後正式に入社しました。いまでは…自分が支えているのか、支えられているのか、もうわからない(笑)。BASE社ってそういういつでも互いに助け合えるところが好きで…気づけばずっといますね。

チームみんなで「優しい世界」を作っていきたい

神宮司さん

― お話を伺っていると共に働く仲間たちと、同じ方向を向いている感じがします。


関係性でいえば、ドライなところはドライですけどね(笑)ただ、たしかに実現していきたい世界観は共有しているんだと思います。今回の『BASEライブ』の開発に関しても、はじめて開発合宿をやってみたんですよね。


― 開発合宿!その狙いは?


もちろん開発スピードを早めたかった、質をあげたかったというのが第一にありました。あとはメンバーそれぞれが考えている「ライブ機能」にバラつきがあったんです。「ライブ機能をつくろう」となった時、どうなってしまうのか?という不安のほうが先にあった。そんな課題を解決するために、一気にカタチにするところまで持っていって、共通の認識をつくったほうがいいと考えました。


― じゃあ「楽しく親睦を深める」というより、ガチめな開発合宿だった?


そうですね。泊まった旅館も、当然Wi-Fiなども完備されているところ。開発合宿をバックアップしてくれる場所で。「ライブ機能の開発」に集中するために泊まりました。

1泊2日だったのですが、1日目の夕方過ぎくらいから急にみんなノッてきて。そこからは寝ずに明け方までやりきりました。

合宿前って…正直デザインラフくらいしかなかったんです。それが動画配信できるところまでたった1日で作りあげて。開発メンバーたちの優秀さには本当に頭がさがります。みんなアドレナリンがずっと出っぱなし。そのあとは全員が燃えカスのようになり、ぼく含めてみんなで爆睡してましたね(笑)

もうひとつ、やっぱりみんなで1つのものを作ると一体感は出ますよね。みんなで集合して、お風呂に入って、ご飯を食べて。

合宿前までけっこうメンバーたちとの会話は仕事のことが中心でした。お互いのことをあまり知らなかったんだなと気がつけたというか。趣味だったり、家族のことだったり。こういった何気ない会話から、メンバーがどういう思いで「BASE」に関わってるか、なんとなくわかった気がするんです。

それを理解した上で「こんな世界を目指していこう」「こんな機能になる」と根気強く言い続けていく。それがチームに広まり、別チームにも広まり、「ライブいいね」「あのショップと相性が良さそうだね」と声をかけてもらえるようになっていった。浸透してきた実感があって、すごく嬉しかったですね。

みんな違う人間だけれど、それぞれの思い入れがある。実現したい世界がある。その上で一体となってつくれたのがすごく良かったと思います。


― 今回は「BASEライブ」メインのお話でしたが、じつはプロダクトにとって大切な「何を実現するためにやるのか」「どんなチームでやるのか」という根っこに触れられた気がします。参考になるお話、ありがとうございました!今後の展開も楽しみにしています。


(おわり)


文 = まっさん


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