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困難は無い。全ては検証 | Gunosy 福島良典

2018-12-13

困難は無い。全ては検証 | Gunosy 福島良典

飛躍的成長を遂げたGunosy、ここまでにどんな困難があったのか? そう切り出すと創業者で、現 取締役 ファウンダーの福島良典さんは「全て検証があっただけ。真の困難は無かった」という。「ただ…これからやってくるかもしれない」と続けてくれた。福島良典さんが見据える少し先の未来、そして常に勝ちパターンを見出し続ける彼の思考に迫った。

Gunosyは、日本で情報キュレーションサービスをいち早くスタートした会社の1つだ。スマートフォンやSNSの普及で情報が溢れ始めた2012年、良質なコンテンツを最適に届け、ユーザーが効率よく情報収集できるように、という背景のもと設立された。
サービスリリースから約6年が経った今、同社が開発・運用するメディアの累計DL数は3,650 万を超える。情報キュレーションサービスの代表格として知られる存在となった。

予測できたら、それはハードシングスではない

経営者たちの「現在に至るまでの困難=ハードシングス」をテーマにした今連載。取材したのは、Gunosy 創業者で、現 取締役 ファウンダーの福島良典さんだ。ただ、冒頭より出鼻をくじかれる形となった。

「ここまで、真のハードシングスと呼べるものはなかったかもしれません」

一体どういうことだろう。

さまざまな壁、困難、そして試練。精神的な負荷も含め、決して平坦ではなかったはず。

「もちろん細かい問題はたくさんありました。ただ、やはり選んだマーケットが正しかった。市場が成長していく過程において“起こりえる問題”を予測し、対処さえしていれば自ずと会社も伸びる。この前提があるので、メンタルが崩れることもありませんでした」

全て予測できる対処可能な問題。それはハードシングスではない。

福島さんは「ただ事実を語っている」という落ちついた口調で語ってくれた。その言葉に誇張や虚勢は微塵も感じられない。

「予測できない事象こそが本当のハードシングス。自分たちの勝ちパターンが崩れた瞬間に訪れるもの。もしかしたらそれは、これからやってくるものかもしれない」

彼が考える「真のハードシングス」とは。勝ちパターンを見出し続ける思考と共に迫った。

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「一時の成功」に踊らされない

2014年から2015年にかけては、Gunosyにとって大きな戦略転換を図った重要な年であった。

飛躍的な成長を振り返る上での、ターニングポイント。キーワードは「マス向け」だ。

「もともと『Gunosy』は「あなたにあったニュース」を提供するというサービス。プロモーションはWEBやSNS広告を中心にユーザー獲得を進めており、かなりの成果をあげていました。理想以上の弾道だったと言っていい」

しかし、スケールを目指してマスに対するプロモーションへと舵を切ることになる。過去も、そして今も、GunosyはDAUを最も重要な指標として追う。当時福島さんが見据えていたのは「いずれDAUが伸び悩むかもしれない近未来」だった。

「これは、僕らにとって必要な戦略転換でした。現実的に、個人にカスタマイズされたニュースの需要は根強かったものの、それほど大きくはなかった。成長のためにはマスユーザーに対し、「世の中の話題」「旬のニュース」を提供するべきではないかという議論になった。天井がやってきて、対処ができなくなる前に、限界値をどれだけ引き上げられるか。新しい畑に飛び込むことを意識していました」

それは、一度見つけた勝ちパターンや成功に囚われず、また崩して立て直す感覚に近かった。

「時代の変化と共に、これまで“有効だった型”が通用しなくなる時がくると考えていました」

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データを軸に、同じ方向を向く

当然、社内には動揺する社員もいたそうだ。それでも、決断は容易だったと振り返る。

「社内からもさまざまな意見が出ました。でも決断自体は簡単で。このまま突き進んでいくのであれば、いずれ伸び率は止まる。それが数年後に来るだろうと言うのが「データ」から予測できていました。

一緒に働いてる社員からすると、コンセプトをガラッと変えることの心理的な不安があったように思います。でも、このまま続けていくより、明らかにマスに張った方がいい。僕らの目指す世界観を丁寧に伝えていきました。より多くのユーザーに喜んでサービスを使ってほしい、と」

テレビCMも、20パターンで「PDCA」

マス向けプロモーションとして、初のテレビCMも実施した。ただ、結果からいえば、初回の成果は散々たるものに。

「初めて打ったテレビCMは、正直、大ゴケしたんですよ。これが結構やばくて。思い切った広告宣伝費の投下だったので、必ずリカバリーしないと会社そのものが終わりなんじゃないか。そのくらいの危機的な状況で、焦りました」

その原因について福島さんはこう振り返る。

「初めてだったので、WEB広告とTVCMは別物だと捉えてしまった。自分たちがWEB広告で培ってきた強み、勝ちパターンを全く当てはめられていませんでした。原因はここに尽きると思います。成果がでないと感じてからは、とにかくテレビCMをハックしようと考えました」

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Gunosyが実践したのは、WEB広告で得た“勝ちパターン”をテレビCMにも応用をしていく方法だ。

「WEB広告と同じように検証しながら改善する方法を考えました。そのために、いくつも型を作って数字の伸びから最適解を探っていきました。具体的には、20パターンのCMを作って、放送エリアや時間帯を限定して小さく試し、効果を測定していく。DL数は、WEB広告とは異なり直接的に計測できる訳ではありません。でも、ある程度はテレビCMの効果だと予測できる。当たりそうな施策をもとにチューニングしていくことで、明らかにCPAが改善されていきました」

データドリブンと言葉にするのは容易いが、全ての意思決定の軸に「データ」を掲げてきた。Gunosyとしての強さがそこにはあった。

「僕らが持っている勝ちパターンに当てはめられると、うちのチームは強い。いくつものCM案をつくってPDCAを回すなんて、最初はできないと思っていましたが…実現できましたね。何千万の予算で1つのCMをつくるが業界の常識なので、代理店さんからは“まじですか。そんなことやる会社はじめてですよ”と驚かれました(笑)」

組織課題

ここまで、テレビCMでの戦略を例に「勝ちパターンの応用」について伺うことができた。それは組織運営においても同じことが言えるのかもしれない。予測不能な困難といえば「人」の問題もあったはずだ。

「マザーズ市場へのIPO直後、エース級のエンジニアが去ってしまうなど組織課題もありました。いろんな事情が重なり、それぞれの判断があった。仲間が去ってしまったことは、ものすごく辛い経験でした。

ただ、当時の意思決定は今振り返っても間違っていなかったと思います。もう一度同じ状況がきたとしても、同じ決断をする。組織設計が追いついていないことは認識していましたが、それでも上場自体は、戦略上あのタイミングが最適だと考えていました」

福島さんはこの組織上の課題も、検証と実行の繰り返しだと捉えていく。

「どちらかといえば、これまでは組織課題の解決に対してはそこまで大きなリソースを割いてきませんでした。当時の経験は組織としてのありかたを考え直すきっかけとなりましたね。組織として成長するために何をすべきか。この問いに対し真剣に向き合っていく。より強い組織をつくるために、必要な機会だったのかもしれません」

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『LayerX』という布石

現在、福島さんはGunosyとAnyPayの合弁会社『LayerX』の代表取締役社長に就任し、ブロックチェーン事業を推進している。その狙いは、マスへのプロモーションに舵を切った時と似ている。

「とにかく日本はブロックチェーンの領域で遅れ過ぎているんですよね。AppleやGoogleの何が凄いのかというと、AppStoreや検索エンジンなど、エコシステムをつくったことです。日本企業はエコシステムに乗っかって、決まったルールの中でビジネスをするのは得意。ですが、ルールをつくる側になれるプレイヤーは中々いない。ブロックチェーンにおいては、エコシステムを作る側に国内企業が入り込めるチャンスはほぼ皆無といえるほど、海外企業との差が開いていると認識しています」

ただ、そこにあるのは「絶望」や「諦め」ではない。

「だからこそ、今、本気で先頭集団についていく気概が必要で。ここで突き放されてしまったら、もう一生ついていけなくなってしまう。その時こそ、真の困難、ハードシングスが来るのかもしれません。そういった意味だとハードシングスなんて無いほうがいい。その波を越えていけるように、我々は既に動き出しています」

成功に囚われず、やるべきことをやっていく。いずれやってくる困難を、困難にしないために勝ちパターンを見出す。このブレないスタンスこそが「福島良典」その人なのかもしれない。



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