2019.06.04
大学ダブって崖っぷち…からの逆転! 河原崎ひろむ(させ太郎)の熱中する才能

大学ダブって崖っぷち…からの逆転! 河原崎ひろむ(させ太郎)の熱中する才能

河原崎ひろむ、23歳。東京大学に通うもあっさり留年。そして生活はギリギリに…そこからフリーのデザイナー/エンジニアとなり、スタートアップでPdM(*)へ。稀代の天才? それとも…? スタートアップ界の新星、河原崎ひろむの素顔に迫る。

(*)PdM…Products Manager(プロダクトマネージャー)/ウェブやアプリなどのプロダクトにおける企画開発責任者を指す。

若きPdM、河原崎ひろむって何者?

・Ruby on Rails、JavaScript、React、SQL
・Illustrator、Photoshop、Sketch(UIデザイン)
・データ分析、グロース施策の企画・実行(PdM経験)
・23歳にして『Progate』『REALITY』『TANP』など複数プロダクト開発に携わる

これは、河原崎ひろむさんのスキルセットを簡単に切り取ったもの。

誰でもスマホゲーム実況が楽しめる『Mirrativ(ミラティブ)』。そこに追加されたカラオケ機能『エモカラ』のPdMを彼が担っており、Twitterでもちょっとした話題に。

複数のスタートアップにフリーランスとして携わり、エンジェル投資家としての顔も併せ持つ。

『エモカラ』は5月22日よりMirrativに追加されたスマホカラオケ機能。配信者はアバター機能であるエモモを通じて、好きな楽曲のカラオケ配信ができる。Twitterでは『させ太郎』の中の人としても人気のある河原崎さんだが、「その話題は一切NGでお願いします」と頑な。

今でこそ、いろいろなスタートアップからひっぱりだこな彼だが、当然、いきなり活躍していたわけではない。

「2年くらい前まで、IllustratorとPhotoshopが少し触れるくらい。素人にちょっと毛が生えたレベルだったんですよね」

いたずらで屈託のない笑顔、そしてちょっとはにかむように語ってくれた河原崎さん。彼はいかにスタートアップ界が注目する新星となったのか。

そこには「人の倍、時間を費やしてスキルを磨く」「対価以上の仕事をする」という、シンプル且つ本質的なスタンスがあったーー。

【プロフィール】河原崎ひろむ(Twitterアカウント名:させ太郎)1996年生まれ。2015年に東京大学に入学し、2017年よりフリーランス活動をスタート。オンラインプログラミング学習サービス『Progate』のエンジニアとして働いた後、VTuber専用ライブ配信アプリ『REALITY』のPdM/デザイナーを経験。最近はミラティブの『エモカラ』、ギフト専用通販サイト『TANP』などスタートアップ各社のプロダクト開発に携わっている。エンジェル投資家としても活動中。

留年した僕みたいなダメなヤツも、誰かの役に立てる

もともと複数のスキルを手にしていたわけではなかった、と聞きました。そもそもプロダクトづくりに携わるようになったきっかけとは?


まだ大学を休む前に「誰とも会わずにできるバイト」として紙のチラシや広告づくりをしていたことがあって。それが、ものづくりでお金をもらった原体験かもしれないですね。

今でこそ笑って話せますけど、じつはちょうど留年が決まったタイミングで。かなり精神的に落ち込んでたんですよ。単位を落としたのは自分のせいなんですけど…。親からも「もう知らない。仕送りもしない」と引導を渡された。

ああ、何やってるんだろうって自己嫌悪がすごかったし、「もう誰とも会いたくねぇな」って。ただただ、家でひっそりしていたかった。でも、生活はしなきゃいけない。なので、引きこもってひたすらチラシをつくって、納品していました。

どんなものを作っていたんですか?


家庭教師の生徒募集とか、デパートの広告とかですね。

学生のバイトというと飲食店などでもすぐに見つかりそうですし、楽しそうなイメージもありますが…


いや、もうとにかく「人間」と接したくないと思っていたんですよ。自己肯定感がゼロだったし、かなり腐ってた(笑)もともとIllustratorとPhotoshopが少し触れたし、ちょうどいいやって。

今思うと、そのチラシづくりに、人生、救われたなって。デザインの請負って「経験が浅い」とか関係ない。良いものを作らないとお金にならないし、逆に良いものさえ作れれば稼げるんですよ。

生活がかかっているので、めちゃくちゃ緊張感があって。厳しさと同時に「ちゃんとやれば、お金がもらえる」ということが肌で感じられた。いい時には、1週間で15万円ほど稼いだこともありました。

1週間で15万円も!?すごいですね。


そうですね。量をやりまくる。期待以上のクオリティを目指す。シンプルにコレだけなんですけどね。

もちろん、お金をもらえるのも楽しかったですが、それ以上に「こんな僕でも誰かの役に立てるんだ」というところに救われていたのかもしれません。

たとえば、僕が作った「家庭教師の生徒募集」のチラシがあって。クライアントから「ちゃんと生徒が集まったよ」と感想がもらえた。めちゃくちゃ嬉しくて、今でも忘れられない。

完全に妄想ですが、あのチラシきっかけで家庭教師と出会えた生徒が、成績もアップして、志望校に合格したら…すごいことだよなって。出会いをつくってる。たまらなかったです。

喜ばれる仕事でお金がもらえるってすごく気持ちいいことなんですよね。

その仕事で価値、発揮できてる?

そのチラシづくりは、いまの仕事に通じる部分も?


そうですね。なんだろ、仕事って学ばせてもらう場ではないよなって。

社員として会社に勤めたことのない僕が言うのもおこがましいですが、給料って仕事で発揮した「価値」に対してもらえるものですよね。だからまずは「仕事で価値を発揮できてるか」を追い求めたい。目指すべきは、給料以上の価値を返していくこと。フリーでやっていることもあって、ここは強く思いますね。「どうありたい」とか「何がしたい」とか、自分のことを小難しく考える前に、やるべきことがあるだろうって。

河原崎さんが思う「発揮すべき価値」とは?


シンプルに「サービスを伸ばす」「売上がたつ」「ユーザーのためになる」みたいなことって価値ですよね。それができるかどうか。

そう思うと、「実装だけじゃなく、分析もできた方がいい」「プログラミングやデザインだけじゃなく、ディレクションもできた方がいい」となっていったんでしょうね。そこが自分なりに価値が発揮できる戦い方なのかな、と。

もしかしたら、不安なのかもしれない。ひとつの分野で突出しているわけじゃないし、そこだけで価値を出せる人間じゃないから。だから、今は「わかること」「できること」の範囲を少しでも広げている感じですね。

凡人だからこそ、人の倍、時間を費やす。

…とはいえ、プログラミングも、デザインも、素人に比べたらできますよね。むしろスタートアップの最前線でゴリゴリやってきていて。PdMとしてまわりから信頼を得るためにもわかっていないといけないですし。どうスキルを得ていったか気になります。


僕は、器用でも天才でも何でもないんですよ。だからスキルの習得もシンプルで。人の2倍も3倍も「時間」をつかって勉強する。それしかできません。

たとえば、プログラミングはProgateで学んだのですが、Ruby on Railsと、JavaScriptは4周くらいを7日くらいかけてやったりして(※単純計算でも計70時間)。あとはとにかく「基礎」だけ徹底的にやっていく。

なぜ「基礎」が大切なのでしょうか?


だいたい、つまづいている時って分解していくと「ああ、基礎が正しく理解できていなかったんだな」と気づくことが多いからですね。

じつは受験勉強とも似ていて。東大とかの入試でもそうなんですけど、「微分積分」とか「三角関数」とか、基本がどこまで深くわかっているか。ここが最終的な差になると考えていて。

あとは試験という緊張状態のなかで、どれだけ落ち着いて問題が解けるか。冷静に対処するためにも、場数を踏んでおいたほういい。

そう思うと、根っこで「どれだけ時間をかけて勉強したかで能力は決まるんだ」と思ってるんでしょうね。時間をかけるだけなら僕にもできる。じゃあやるかって。人間の能力ってそこまで大きな差はない、そう信じたいのかもしれません。

+++実践で使える技術をいかに習得したか。質問を投げかけると「Twitterやブログで情報収集をしました。エンジニアを片っ端からフォローし、ブログは全部読んで試す。参考書はほとんど読みません」と返ってきた。また「ほとんどの仕事はTwitter経由だった」ともいう。「『エモカラ』もミラティブの赤川さんからDMをいただいたのがきっかけ。スライド3枚くらいの企画書を渡され、気づいたらプロジェクトがスタートしていた(笑)」と話す。

キャリアとか、職種とか、別に何でもよくない?

エンジニアリングも、デザインも、そしてPdMも…となると「何者ですか?」って聞かれた時、困るパターンですよね…。


そうなんですよね。何でも屋であり、何者でもないというか…。PdMという職種が定義されるようになってきたので、言いやすくはなりましたけど…。

ただ、自分をどう形容するかってあんまり考えたくないし、こだわらなくていいかなって思います。どんなキャリアを歩むか、別に決める必要もないですし。

新卒で就職する道もあるかもしれないし、フリーのまま働くかもしれない。起業するかもしれない。正直、今はどれもピンと来ていない。というか、あまり興味が持てないんですよね。考えてないだけだろ!って言われたら、たぶんそうなんですけど(笑)

もちろん、自分のつくったサービスで世の中を湧かせてみたいという夢はある。それが、大学に行きながらなのか、会社に雇われてなのか、フリーなのか、起業なのかは、決めていません。どこにいて、何者と呼ばようが、良いサービスは作れますもんね。

今も良いサービスをつくっている真っ最中です。僕と一緒に良いサービスを作ってもいいよという方は、Twitterなどで連絡くれると嬉しいですね(笑)。

+++取材の最後に「ツイート、いつも見てます」と話題をふると「ちょっとその話はホントやめてください(笑)」と河原崎さん。「絶対に僕のTwitterは見ないでください。絶対に」と釘を刺された。ぜひこれからの彼に注目したい。もちろんTwitterにも。


編集 = 白石勝也
取材 / 文 = 長谷川純菜


特集記事

リーダーたちの
迷いと決断

経営者たちの「現在に至るまでの困難=ハードシングス」をテーマにした連載特集。HARD THINGS STORY(リーダーたちの迷いと決断)と題し、経営者たちが経験したさまざまな壁、困難、そして試練に迫ります。

ぼくらの新人時代

「新人時代をどう過ごしていましたか?」テック業界の先パイたちに、こんな質問を投げかけてみる特集企画です。知識もスキルも経験も、なにもない新人時代。彼ら、彼女らは”何者でもない自分”とどう向き合い、どんなスタンスで学んできたのか。そこには「ぼくら」にとって重要な学びが詰まっていたーー。

イノベーターたちの「習慣」と「実践」

『7HACKS』は世の中を沸かし、仕掛けつづけるイノベーターたちの「習慣」と「実践」に迫るキャリアハックの特集です。イノベーターたちの知られざる日々の習慣から、読書法、自らに課したマイルール、ライフハック、仕事に対する考え方まで、幅広くご紹介。明日からの仕事への活力が湧いてくる、そんなコトバと共にお届けします。

お問い合わせ
取材のご依頼やサイトに関する
お問い合わせはこちらから