2019.10.25
BuzzFeedからLINEへ、ライター嘉島唯の選択|いつでも「書くこと」を捨てられる強さを。

BuzzFeedからLINEへ、ライター嘉島唯の選択|いつでも「書くこと」を捨てられる強さを。

『BuzzFeed Japan』での執筆をメインに、書き手として存在感を発揮してきた嘉島唯さん。聞けば、2019年10月より『LINE NEWS』の一員になったという(※)。彼女は「プレイヤーとして頭打ち感があった」と語る。「書ける人」から「より広く届けられる人」へ。嘉島唯さんの選択、ターニングポイントに立ち会った。

(※)『BuzzFeed Japan』での記事執筆も継続して行う。

テキストは、届け方の一つでしかない

嘉島唯さん。

彼女を知ったきっかけは、2017年に掲載されたこの文章だ。

iPhoneを「店頭で売っていた」OLの末路|BuzzFeed
https://www.buzzfeed.com/jp/yuikashima/iphone-foolish-girl

写真

記事URLは「iphone-foolish-girl」。

彼女が綴ったのは「自分」をすり減らしながら働いた20代前半の日々。瑞々しい客観描写、もがきながら前へと踏み出そうとする等身大のノンフィクション。その物語に強く共感した。これは私の、私たちの物語でもある、と。

ただ、彼女自身の自己評価は控えめだ。

「あの文章は“こういう書き方があるよ”と上司から教えてもらって、何度もアドバイスをもらい、書き直したものです。素材があり、どんな伝え方をすればいいか。面白いのは、プロダクトや取材者であって、文章は手段でしかありません。」

テキストは、あくまでも手段のひとつ。そう言い切る彼女は「書き手として頭打ち感があった」とも語る。そして次なるキャリアとして選んだのが『LINE』だ。

メディアからプラットフォーム側へ。そこにあった思いとはーー。


[プロフィール]嘉島唯|新卒で大手通信会社に営業として入社、iPhoneの代理店営業、店頭での販売なども経験。『Gizmodo』『HuffPost』を経て、『BuzzFeed Japan』でライター/レポーターとして活躍。2019年10月1日に『LINE』に入社し『LINE NEWS』編集部に所属する。「異世界転生した感覚。すごい面白い」と入社の感想を語る。

書き手としての「頭打ち感」

『BuzzFeed Japan』の中でも「個」が立った記事の印象が強い嘉島唯さん。その他、cakes(ケイクス)での連載、フォロワー3.8万人を誇るnote…傍から見ればライターとして確かな地位を築いてきたように見える。彼女はなぜ『LINE』、そして『LINE NEWS』を転職先に選んだのか。

記事やコンテンツの新しい見せ方を開発していきたい、この思いが強くありました。

メディアはすごく楽しいし、大好きで。ただ、ずっと記事を書いては出し、書いては出し…ずっと続けていくだけなのか、と。プレイヤーとしてどんどん頭打ちになり、手札が無くなっていく感覚もありました。

『BuzzFeed Japan』はCMSの自由度が高く、伝え方もいろいろな実験ができます。ただ、やればやるほど、もっと違うやり方があるのではないか。幅があるんじゃないか、と。そこを探れるのが『LINE NEWS』だと勝手に思ったんですよね。

もうひとつ、すごく興味があったのが、プラットフォーマーはどんなロジックでコンテンツを選ぶのか。世の中の多く人たちはいま何に興味を持っているのか。

公共性を重視するプラットフォーマーの俯瞰した視点を吸収したい。それを書く側として記事に落とし込めたら最強になれるかも!と思いました。

必要とあらば、いつでも「書くこと」を捨てる

「WEBにおいて、テキストでのみ伝えることにあまり価値はない」きっぱりと語ってくれた嘉島さん。「書く」にとらわれない、こだわらない。

私の強みは、いつでも「文章を書くこと」を捨てられることかもしれません。たとえば、画像や動画で伝えられることのほうが圧倒的に多いわけですよね。

そもそもファイルの重さでも、テキストファイルが一番軽い。それはそのまま「情報量」だと思うんです。

テキストは不完全なんですよね。ただ、だからこそ、読み手の解釈次第で「70キロバイト」が「5メガ」になることもあって。そこをどう作っていくのか、探求していくことにはすごく意味があると思っています。それに「あいつは文章が書けない」と思われるのも嫌で。たまには「書けるぞ」という部分は出したい(笑)

たぶん、時代感に併せて、みんながしっくりくるコンテンツの見せ方、届け方まで提案できるプレイヤーになりたいんだと思います。

ライター経験約3年の嘉島さん。最近ではiPhoneに加え、Googleの『Pixel 4』レビュー記事なども拡散された。アーティストの取材記事を担当するなど、意図的に「幅」を広げる。ユニークなのが、一度の取材で「ニッチな層向け」と「一般の人たち向け」など読者によって2つの原稿を作り変えるなど個人的に実験していること。探求の手を緩めない。

「ネイルした手」で、iPhoneの実機レビュー

嘉島さんが担当し、毎回バズを起こしているのが、新しいiPhoneの先行レビュー。何ができるのか端的でわかりやすく、ワクワクさせてくれる。伝える情報をどう絞っているのか。何に気をつけているのか。

Apple製品でいえば、好きすぎて「ここを突こう」というのが“見える”んですよね。『鬼滅の刃』という漫画でいうところの「隙の糸」みたいな(笑)

あとは文字数は少なくして1分でわかるようにするとか…正直、それくらいなんです。

iPhone 11、驚異のカメラが想像以上にヤバかった…プロも驚く3眼の真髄|BuzzFeedNews

写真

あと、もうひとつ。

とくに「女子が楽しそうな感じ」は大切にしています。テック系の記事って女の人はあまり書かないんですよね。ITジャーナリストの方も男性が多いですし。

女子が楽しくなる機能を伝えたり、普段生活をしていてシチュエーションが思い浮かぶ感じにしたいなと思っています。たとえば、ネイルをした手でiPhoneを持ってレビューする。女の人からしたら、そっちの方がワクワクするから。これは私にしかできないんじゃないかと思っています。

『BuzzFeed Japan』を退職する時、後輩に唯一したアドバイスも「いつでもネイルはしておけ」でした。いつ撮影するかわからないから。それだけ言い残して辞めました(笑)

主役はiPhoneだからネイルは地味に…なんて絶対にダメ。やっぱり見る人が楽しい気分にならないと、読者も読みたくならないって思っちゃうんですよね。

書くことは嫌い。だけど、書かずにいられない

そして最後に伺えたのが、彼女にとっての「書く」ということ、そのものについて。

noteにも書いたのですが、ずっと「自分のため」に書いている。その感覚は強いかなと思います。誰かのために…というのはおこがましいというか。

以前、金原ひとみさんをインタビューさせていただいた時、「育休を取っている時、筆を置いたら鬱になった」と話されていた。「完全にそれだわ」と思ったんです。金原さんも「書きたい」「書きたくない」とかじゃない。

<参考> 結婚しても、出産を経ても「普通に死にたい」。じゃあ、なぜ今も生きつづけるんですか? 金原ひとみに聞く『BuzzFeed Japan』

私も筆は遅いし、文章だって別にうまくないし、書くのも嫌いだけど、そうしちゃう感じなんですよね。休みの日も何かしら書いているし。心が動いたとき、iPhoneに日記を書いたり。

ただ、世の中に出す時には「大丈夫か。お前は自分に酔っていないか」という部分は問いかけるようにしています。自己陶酔していると「どう伝わるか」が見えなくなってしまうから。

自分だけで書くとその感覚がわからなくなってしまうので、よく人に相談します。「ここの文章に懸念がある」とか「客観的に見てどう思うか」とか。誰にも見せずに出すということはあり得ない。自分を信用してなさすぎだと思いますが、編集者さんからも赤をもらえないと「この人はサボってる」とさえ思う(笑)

あとは「自分をよく見せたい」という気持ちがあると、途端につまらない文章になってしまいますよね。書く上でいろいろと調べていくと「私はこんなに詳しいぞ」って見せたくなってしまったりして。

その他にも「私はこれだけ苦労しているぞ」とか「こんな有名人を取材したぞ」とか、情報として全くいらない。直接的ではないけれど、文言に滲み出てしまう。そういうのは読み手にバレちゃうので気をつけています。

記事によりますが、「知っているけどあえて書かない」ことが多くて。情報量をまんべんなく載せるのもひとつの手段だと思いますが、それだとのっぺりしてしまう。何がおもしろいのかわからなくなります。

読んでくれた人が自分で補完し、はじめて自分のものになる。完成する。そういう記事があってもいいんじゃないかと思います。


取材 / 文 = 白石勝也


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