NewsPicks × グッドパッチ × クライス&カンパニー、それぞれのリーダーたちが語る「PM採用・育成のリアル」の【後編】をお届けします。PMに何を求め、何に悩み、どのような育成戦略を立てているのだろうか。
※2019年11月12日に開催された【Product Manager Conference 2019】における「企業が求めるプロダクトマネージャーとその人材戦略」セッションレポートをお届けします。
【登壇者プロフィール】
・NewsPicks取締役CTO 杉浦正明
日立ソリューションズを経て、シンプレクスに入社。 大手証券会社向けプロジェクトのマネージャーを歴任した後に、高速為替取引システムの開発リーダーとしてアーキテクチャ設計を担う。 その後、トークノートに取締役CTOとして参画し、サービスの拡大に貢献。 2014年にユーザベースに入社、2016年より現職。
・株式会社グッドパッチ代表取締役CEO 土屋尚史
btrax, Inc.にてスタートアップの海外進出支援などを経験し、2011年9月に株式会社グッドパッチを設立。自社で開発しているプロトタイピングツール「Prott」はグッドデザイン賞を受賞。2017年には経済産業省第4次産業革命クリエイティブ研究会の委員を務める。2018年にデザイナーのキャリア支援サービス「ReDesigner」を発表。
・株式会社クライス&カンパニー代表取締役社長 丸山貴宏
1986年滋賀大学経済学部卒業後、リクルート入社。7年間人事担当採用責 任者として新卒、中途、留学生、外国人など多岐にわたる採用を担当し、同 社の急成長を人材採用の側面から支える。退職後、株式会社クライス&カン パニーを設立。リクルートで実践した「企業力を超える採用」の実現のため、 1000社を超える顧客にそのノウハウを提供、さまざまな分野の支援を実現。また個人へのキャリアコンサルティングは1万名を超え、「個人の本気に火をつ ける」面談には定評がある。
【モデレータープロフィール】
株式会社クライス&カンパニー顧問 及川卓也
早稲田大学理工学部を卒業後、日本DECに入社。営業サポート、ソフトウェア開発、研究開発に従事し、1997年よりMicrosoftでWindows製品の開発に携わる。2006年~GoogleでサーチのプロダクトマネジメントやChromeのエンジニアリングマネジメントなどに従事。2015年、『Qiita』などを運営するIncrementsに転職。17年独立。2019年1月、テクノロジーにより企業や社会の変革を支援するTably株式会社を設立。
※後編では、オーディエンスからの質問に回答する形式でセッションが展開された。
PM=ミニCEOとのことですが、PMと事業責任者はどのように区別されますか?
杉浦:
NewsPicksに限った話かもしれませんが、PMは「ユーザーの満足度」にフォーカスし、事業責任者は「ビジネスモデルの構築」にフォーカスしています。社内での位置関係としては並列。会社全体として、フラットになっています。
土屋:
グッドパッチでの区別でいうと、事業責任者はプロジェクトオーナー(PO)という感じですかね。なので「PO」の下に「PM」という感じかなと思うんですけど。
丸山:
人材市場の観点から言うと、PMの求人は増えているのですが、意外と「事業責任者的な要素を含む求人」とは区別されていて。あくまで「ITを活用したプロダクトの責任者」といった求人が圧倒的ですね。
どのスキルに強みを持ったPMが足りていないと感じているか?
杉浦:
会社によって異なると思うのですが、NewsPicksで言うと「直感力」だと思います。直感というと感覚的にも捉えられるのですが、場数を踏むと磨かれるもので。とくに「直感的にユーザーが何をすれば満足するのか」がわかる人が、まだまだ少ないと感じます。
じつは私自身にも足りていない。ユーザーが本質的に満足するものをいかに作るか。補完したいですね。
土屋:
グッドパッチだと…抽象的で申し訳ないんですが、「なんとかする力」ですね(笑)
いろんな部署と調整したり、現場に降りて営業したり。どういう状況でも、最後の砦としてなんとかする。
ほとんどの場合、スキルは何かしら足りていないもの。完璧な人間なんていないですから。だとしたら、足りないところをキャッチアップし、状況を打破するために最善を尽くすのみ。突破力と言い換えてもいいかもしれません。
PMというのは最終的には統合スキルですから「総合格闘技で勝つ」というイメージ。やっぱり自分で解決できない時に、他から持ってくる力というのはすごく重要ですよね。
丸山:
「突破力」って、どう見極めていますか?
杉浦:
非常に難しい質問ですが、まずはわかりやすく「実績」だと思います。サイズの大小ではなく、なにかしら自分の想いの込めたプロダクトを作ったことがあるか。やりきったことがあるか。それが「突破した証明」になるのかなと思いますね。
土屋:
基本的には見極められないという前提ではあるんですが、私の経験則からお話しますと、きれいな経歴を持つ中途人材よりも新卒で入ってきた人材の方が圧倒的に突破力があるケースが多いと感じています。
丸山:
例えば、中途の場合でも、面接の場で「あなたがこれまでに突破力を発揮したエピソードを教えてください」という質問をするのもいいかもしれないですね。そこから出てきたエピソードからジャッジする。面接官にスキルが求められますが。
土屋:
同時に面接で全ては見極められないという前提もあり…そこは難しいですね。
杉浦:
たとえば、複業や社会人インターンで一緒に働いてみる選択肢もありますよね。私たちは実際にやっているのですが、アリだと思います。特にハイレベルな人材ほど、価値観やスキル面のすり合わせはをやっておくのはおすすめです。
外部からPMを採用すると失敗するケースは感じています。その場合、PM人材を増やすにあたって外部からの採用をどのようにすれば活かせると思いますか?
土屋:
いきなりポジションを与えないってことだと思います。プレッシャーにもなりますし、周囲の期待値が上がってしまう。そこを下げた状態で入社してもらうことが重要だと思います。
最初は、補佐になるところから入れてます。リーダーシップや能力がある方は、勝手にチームの信用が集まってくる。なので、そこのモメンタムが見えてきた時に抜擢していくのが良いと思います。
本当にデキる人ほど、最初のタイトルやポジションにこだわりませんから。「PMや執行役員じゃないと入りません」という人は、選ばない。そのケースで上手く行ったケースを私は見たことないですね。
丸山:
大企業とスタートアップの世界は違いますので、出れる人、出れない人いると思います。なので、ポジションで仕事をする人には向かないというのはよくわかりますよね。私たちも、スタートアップと大企業の違いを伝えて、それが理解できる人をアテンドするようにしていますね。
そして最後に語られたのが「他の職種からPMを目指すためには」というもの。それぞれの視点から、今後PMとして働きたい方々へのメッセージをお届けします。
杉浦:
まずいちばん重要なのは「いかにユーザーの満足度を上げられるか」だと我々は考えています。NewsPicksはサブスクリプションビジネスなので、ユーザの満足度が下がれば解約に直結する。ユーザー満足度にコミットして成果が出せるか。
次に、ユーザー満足度を科学すること。当然、100%できている人はまだほとんどいない。トライアンドエラーを繰り返していく。そしてユーザーをリサーチし、「思い」を深く知っていけるかどうか。
最後に、1人のユーザーではなく、日本のマーケット全体を俯瞰し、科学的に定量的に測れる人。これらを持っていれば、転職し放題だと思います。
ただ、全てがいきなりできるようになるわけではないですよね。まずは得意な部分から、実践を通じてやってみてもいい。
たとえば、エンジニアであれば、まず試しにサービスを作ってみて、ユーザーの反応を見てみたり。データでいえば、統計やリサーチをやってみたりもありだと思います。
土屋:
私も、自分でプロダクトを作るのが一番いいと思います。ただ、あえてポジショントークをさせていただくと…うちの会社に転職すると良いと思います(笑)
グッドパッチは、企業の新規事業やUX改善だったり、ゼロからイチを作る仕事がほとんど。そして、作るPOやPMの右腕として入るケースが多い。しかもクライアント企業のなかのチームに入っていくので、わずか数年でいろんな企業のメンバー、PMと働けます。成長のスピードとしては圧倒的だと思います。
丸山:
転職活動という観点からお伝えすると、まずはPMとして働きたい方が、PMについてあまり理解していないケースも多いんですよね。なので、応募先の人事、エージェントだけと話をするのではなく、できるだけ事前に現場の方ともコミュニケーションをしてほしい。そして「自分はどのように成長をしたいのか」を明確にしていく。転職や異動を成長の機会として捉え、何が得られたら成功なのか、より具体的に向き合ってみると良いと思います。
>>>「各会社でどのようなPMが活躍しているか」に焦点を当てたセッションレポート前編はコチラ
取材 / 文 = うすいよしき
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