2019年7月、レシピサービス「クラシル」を運営するdelyに参画した坪田朋さん。坪田さんが実践してきたのは、方向性を示し、ルールを見える化、ロードマップを描き、チームを導く土台づくりだったーー。
※2019年11月13日に開催された【Product Manager Conference 2019】よりレポート記事をお届けします。
【プロフィール】坪田朋
livedoor、DeNAなどで多くの新規事業立ち上げやUIUXデザイン領域を専門とするデザイン組織の立ち上げを手掛ける。現在は、デザイン インキュベーション スタジオ「Basecamp」を立ち上げてスタートアップの事業創出を支援。2019年7月からBasecampをdely子会社化、同時にdely株式会社のCXOに就任。
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まず坪田さんが語ったのは、プロダクトマネージャーの役割について。
「プロダクトマネージャーは総合格闘技ですよね。短期的な数字や目標ばかりに追われないチーム作りはもちろん、デザインも、現地調査もやる。プロダクトをよりよいものにするためなら何でもやる」
言い換えるなら乗り越え、突破していこうとする行為、すべてを指すのかもしれない。
「あらゆる壁を壊し、突破してこそプロダクトマネジメントだと考えています」
プロダクトの開発の前にはいつも「職種」「ヒエラルキー」「社内外のステークホルダー」など、常にさまざまな障壁と向き合うことになるPM。より具体的な例として、坪田さんはdelyに加わって取り組んできたことについて語ってくれた。
2019年7月にdelyに入社した坪田さん。
レシピ動画サービス『クラシル』を運営しているdelyは、アプリダウンロード数が2000万を突破し、サービス認知度も伸びており、まさに今が成長フェーズ。坪田さんが優先して取り組んだのは、課題の可視化だった。
現場で働くPMの現状を把握していくと下記のような声があったという。
・そもそも目の前の課題に追われ、中期的な取り組みに時間が取れない
・重要度は高いが、優先度は低いタスクが実行できていない
・PMに意思決定の権限がなく、ステークホルダーが多く動きが遅い
こういったなかで、坪田さんが取り組んだのは、ロードマップの作成。半年〜1年で何を開発するべきかを可視化していった。
「当然、サービスにおける日々の改善と、新規アクティブユーザーの獲得、その両輪を同時に回し続けなければいけません。だからこそ、短期での数字や目標に追われないような仕組みづくりが重要だと考え、注力していきました。たとえば、“重要度は高いが優先度の低いタスク”はそのための作業時間をブロックするなど細かな対応で、実行を後押ししていきました」
もう1つ取り組んだのは、チーム間での「100点」の基準を統一することだ。
「得てして、チームメンバーが増えれば増えるほどに、サービスの品質基準のズレが生まれてしまうものです。僕の100点と他のメンバーの100点、そして新規メンバーの100点、その基準がズレてしまえば目標達成は困難になってしまいます」
だからこそ、なにが100点か、共通認識を持つ努力が欠かせない。
「クラシルの場合は、週1,2回のペースでプロダクトレビューを実施しています。ユーザーと同じ環境で、手で触って評価をしている。これを突破しないとリリースできないというルールを作りました」
このときに重要なのが、フィードバックだ。
「それ、100点じゃないよねと言葉で言うのは簡単です。でも、そこで終わってしまっては良くない。なぜそれがダメなのか、言語化をしていく。あえて言語化することで、どこが100点なのか、メンバーたち自身が決めていけるようになる。それが大事だと思います」
続けて坪田さんが語ってくれのは、リソース不足という避けては通れない「壁」について。
「プロダクトの品質と、開発のスピードを同時に上げていこうとするとどうしてもリソースの問題に直面します。僕の仕事は1秒でも早く作る体制を作ること。当然、リソース不足の解消も私のミッションとして捉えました」
いいものを早く作りたいと考えれば、リソースをいかに確保するか、採用を含め、PMとしてのミッションになる。
「採用全般はPMの仕事なのか?というツッコミもあるとは思いますが、delyは100人前後の会社。自分たちでやる、という意思決定をしています」
そのために取り組んだのはリファラルをメインとした地道な採用活動だ。
「まず会社説明の資料やエンジニア募集のスライドを作成しました。ちなみにこのスライドは公開から現在まで、すでに5万1000回以上閲覧されています。このスライドを出してから、けっこうな反響が集まり、4人ほど採用が決まりました」
「じつはその作成プロセスも、社内で共有し、可視化しながら進めました。あらためて、なぜうちに来てほしいのか、メンバー全員が説明できるようにしています。今はそうした現在のメンバーを通じてリファラル採用で応募が来ている状態ですね」
最後に語ってくれたのが、課題発見・改善のサイクルを根付かせるための取り組みだ。
「たとえば、ユーザーの声は、メンバー全員ができる限りフローな状態でチームの日々Slackに流していくようにしました。いつでもSlack上で課題を拾い集められるようにしておく。これはアイデアとしてではなく、あくまでも課題を発見できるようにするためです。
正直、改善のアイデアって比較的カンタンに出るんですよね。他のサービスを使ってみたり、身の回りの観察をしたりしていると。
ただ、アイデアよりも、むしろ「問いの適切さ」の方が重要です。そして大きな課題=壁を向き合い、壁を乗り越える執着が求められる。そこに向き合っていくことがPMの仕事だと定義しているし、僕も大事にしているところです」
※今回お話されたテーマについては「突破するプロダクトマネジメント - クラシル開発チームで実践した事まとめ」と題して、ご自身のnoteにも追記されています。
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