今や多くの企業や店舗が利用している『LINE公式アカウント』。売上、ユーザー体験、課題の解消…一体何を優先してプロダクトをマネジメントするか、天秤にかけても答えは無い。ジレンマと向き合う、PMの意思決定についてLINE 二木祥平さんが語ってくれた。
※2019年11月12日に開催された【Product Manager Conference 2019】よりレポート記事をお届けします。
※当日使用したプレゼン資料はコチラで公開しています。
LINEのPMとは”カメレオン”のように複数の人格を持つ職種であり、フェーズによっても人格の配分を変えなければならないという。
スキルベースで分解すると一見複雑に見えるPMの仕事だが、本質はシンプルでプロダクトを成功に導くことが唯一のミッションであり、そのためにプロダクトの方針を「決める」ことと、決めたことを「届ける」ことが最も重要であると語る。
また、LINEで活躍しているPMの特徴としては以下の3つが挙げられた。
1.自分に足りない部分を補完できるようなチームが作れる人
2.ソトとウチの妄想力が高い人
3.Detailまで突き詰められる人
『LINE公式アカウント(*)』は、国内の認証済みアカウントだけでも17万(**)アカウント以上がアクティブに利用されており、大企業から中小企業・店舗まで、規模や業種を問わず幅広く活用され、企業とユーザーのコミュニケーションに無くてはならない存在へと成長を続けている。
(*)企業や店舗のLINEアカウントを開設できるサービス。
(**)2019年4〜6月の期間中にメッセージ配信またはユーザーへの返信を行った認証済みアカウント数の合計。
その裏には解決困難と思えるような「ジレンマ」と向き合ってきたPMの存在がある。
たとえば、実際に以下のようなやり取りがあるとPMである二木祥平さんが明かしてくれた。
UX担当者:トークルームでのLINE公式アカウントの通知を減らしたい。
経営陣:売上のために配信するメッセージを増やしたい。
タイムライン担当:ユーザーの快適さのため、広告の表示ランキングを下げたい。
営業部:売上のために表示ランキングは下げたくない。
当然、相対する各部署の意見を天秤にかけても答えは出てこない。何かを選択すれば、何かが犠牲になる。今回は「お金」と「ユーザー満足度」のどちらを取るかというジレンマを例に取り上げた。
このようなジレンマをどう解消するか。これこそPMの大きな役割だと二木さんは語る。複雑なジレンマと向き合う中で、やってはいけない「3つの意思決定」について解説してくれた。
「『LINE公式アカウント』に限らず、PMは自身の考えに加えて、さまざまな部署の意見もヒアリングしながら方針を決めていきます。PMが機能不全になったときに、やってはダメな3つのアクションがあります」
「この3つアクションから生まれるのは妥協の産物(プロダクト)」と二木さんは解説。加えて、複合的な情報を持っているPMだからこそ決定責任があると話す。
それでは『LINE公式アカウント』では、どのように意思決定をしているのか。
こう二木さんは解説する。
たとえば、「企業にメッセージを送らせたい営業」と「UXを損ないたくない企画」がいるとき、それぞれのWhyを深掘るとこうなる。
一見すると対立するように見える意見も「ユーザーにメッセージの価値を感じてもらいたい」という視点に立てば両者とも同じこと目的として言っているのだ。
二木さんが「ジレンマ」について言及したのが、古典力学で有名なイギリスの物理学者アイザック・ニュートンの発言だ。
「そもそも問題は本当に二律背反なのでしょうか。基本的に解消できないジレンマというのはありません。ましてや同じ社内。大抵はWhyを1, 2回繰り返せば同じ目的に行き着きます。」と二木さんは語る。
そして、そのジレンマを解消可能な形でビジョンに言語化しておくのが重要だと話す。
現在のLINE公式アカウントやスマートチャンネルと呼ばれるサービスはジレンマの先に生まれ、その中で考え抜いたからこそ、ユニークな機能が備わっているという。
プロダクトマネージャーの仕事はジレンマの連続。それらを解決していく仕事を、二木さんは「クリエイティブな仕事」と評す。
「ジレンマは必ず解決できるんだというスタンス、そして権限を持って、部署を横断した課題解決は、PMにしか出来ないクリエイティブな仕事です。どうかジレンマに敗北しないでほしい」
二木さんは常に自身にもこの4つを問いかける。
ジレンマをクリエイティブに。この考え方、取り組み方こそプロダクトを成功へと導くヒントになるはずだ。
取材 / 文 = うすいよしき
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