プレゼントにも日常使いにも、漢方を身近にしてくれる漢方D2Cブランド『DAYLILY(デイリリー)』。とくに洗練されたデザインで女性たちに人気だ。発起人である小林百絵さんに「デザインに込めた思い」を伺った。
全2本立てでお届けします!
[1]電通2年目、私が退職届を出した日。台湾を旅して見つけた「ヘルシーな生き方」
[2]漢方D2C『DAYLILY』のデザインに込められた思い。漢方を、もっと愛されるものに。
ーとくに『DAYLILY』はパッケージをはじめ、とてもすてきなデザインで統一されていますよね。そこにはどんな思いが?
「漢方のライフスタイルブランドをやろう」ということを心に決めて今のデザイン、世界観に至りました。じつは初期段階、コンセプトからデザイナーである河ノ 剛史さん(現CDO)に相談していたんです。
やるからにはちゃんとマスに届けたい。どうすれば広い層の人が手に取ってくれて、長く愛されるのか。ここはすごく議論したし、話し合いました。
ー河ノ さんにはじめから相談されていた理由はあるのでしょうか?
まずは「バイブスが合いそうだな」というのが大きかったのですが…(笑)それ以外の理由でいうと、ただ「綺麗」とか「かわいい」だけじゃなく、ちゃんと「買いたい」と思えるデザイン。なおかつ、飽きられない文化やライフスタイルになれるようなデザインを一緒につくれそうだと思ったからです。
綺麗なデザインをつくれるデザイナーさんはたくさんいるんですが、単純に「きれいだな~」という印象だけで終わってしまうことも多いと感じていて。私と、共同創業者Eriの両極端とも言える「好み」を上手に中和して、生活の中に置きたくなるような「ぬけ感」のようなものを出してくれる。そんな人を探して、一番に思い浮かんだのが河ノだったんです。
ーボツ案もあったのでしょうか?
たとえば、『DAYLILY』のブランドカラーはオレンジにしていますが、当初は「パステルカラー」の案もありました。
ただ、どうしても違和感がありました。パステルって「女性モノのブランドらしさ」はあるのかもしれないけど、あくまで一部分ですよね。「かっこいい、クールな雰囲気が好きな人達に届くのか」「服の好みが変わるように、年齢を重ねた時にパステルカラーはどう映るのか」など議論しました。
河ノさんは私たちの意見を聞きながら、時に予想できない方向にも「飛ばしながら」案をたくさん出してくれて。みんなで1つずつ咀嚼し、デザインに落とし込んでいきました。
ー先ほどあった「漢方のライフスタイルブランドをつくる」って今までにない挑戦ですよね。
そうなんですよね。とくに「ライフスタイルブランド」って言語化できない「心地よさ」や「細かいニュアンス」を、どう表現するかがポイントだろうとは思っていました。
まずは私とEriちゃん、河ノさん、3人がその「ニュアンス」を共有しておいたほうがいいよね、と。だから3人でとにかく色んな街に出かけて、お店を見て回ったんです。色んなブランド、アイテムを見て「これは好き」「これは違う」と言葉にしていきました。
ー「心地よさ」や「好き」を言語化していくのは、むずかしそうにも感じてしまいます…。
たぶんインプットの「量」も大切なんですよね。私がよくやっていたのは『dマガジン』で女性誌、男性誌、旅行、ゴルフ、車の情報誌も、たくさんみること。それで「自分は何をいいと感じるか」できるだけ言葉にするようにしていたのかもしれません。テレビも見るし、ラジオも聞くし、Podcastも聞くし、流行りの場所にも行く。何でも自分に最適化されている今だからこそ、あえて雑食になる。それでバランスが取れるのかなと思っています。
ーパッケージもすてきですが、店舗でいうと、あまり近すぎない、でもちゃんと話を聞いてくれる距離感の接客が印象的でした。
何をするにも「気持ちよさ」は大事にしている部分かもしれません。たとえば、お客さんとの関係を考えた時に「“お客様”と呼ばれ、過剰に丁寧に扱われること」は、もうあんまり求められていないんじゃないかなと思います。
私は、スタッフもお客さんもパートナーも、あまり差を作りたくなくて。「みんな私たちのシスター」ぐらいの関係でありたい(笑)
買い物ってやっぱり単純な「買う」「売る」の関係性じゃないんですよね。服なら、その人がよく似合うから、おすすめする。漢方もその人に合うから、おすすめしよう。これが誠実だし、気持ちいいですよね。
余談ですが、初めてスポーツウェアブランドの『lululemon』で試着をしたんです。店員さんが「私はルカって言います、お名前を伺ってもいいですか?」と聞かれて。私もカンタンに自己紹介して自然とおしゃべりができた。まずは私を知ろうとしてくれて、似合うものを選んでくれようとしてくれた。試着中も「モエさん、どうですか?」と声がけまで(笑)もちろん、この距離感がニガテな人もいると思うのでケースバイケースですが、相手のことを知って初めておすすめできる。『DAYLILY』でも同じような体験を目指したいですね。
ー最後に、『DAYLILY』をこれからどんなブランドにしたいなどありますか?
ちょっと話がそれちゃうのですが、年末に紅白をみていたとき、同世代のバンドにすごく嫉妬したんです(笑)自分たちのスタイルで作った曲を届けて、響いている。濃く記憶に残る。ちゃんとマスにも届いていて、聞いた人を元気にしたり、勇気を与えたりしている。すごくかっこいいなって。私たちはブランドで同じようなことがやりたいんだと思います。
みんなの才能と力を絞り出して必死に『DAYLILY』を作っているので、まずは1つひとつ丁寧に私達が思う「気持ちよさ」を届けていく。そして、一人でも多くの人の「日常」に溶け込んでいけたら。
みんなで大切に育ててきたブランドや商品を一過性のブームで終わるもの、消費されるものにしたくないんですよね。たぶん、効率だけを考えるならもっと色々できると思うんです。だけど「この商品、いつまで残んだろう」と思われるようなブランドにしたくない。買ってくれたお客さんも悲しいと思うから。
漢方をすべての女性に寄り添える身近な存在にしたくて。そのためにもリアルな店舗はこれからも作っていきたいですね。「フラッと寄ってみました」でもいいし「今日は気分がいいからちょっと寄ってみようかな」でもなんでもいい。日本に漢方っていうライフスタイルが根付いたら最高ですし、そこに『DAYLILY』が寄り添っていられたらもっと最高ですね。
>>>[1]電通2年目、私が退職届を出した日。台湾を旅して見つけた「ヘルシーな生き方」
編集 = 白石勝也
写真 = 黒川安莉
取材 / 文 = 平野潤
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