2019年、東京、大阪に店舗もオープンした漢方D2Cスタートアップ『DAYLILY(デイリリー)』。「自分の体や心と向き合う、整えるという考え方を広めたい」共同創業者である小林百絵さんにお話を伺った。
全2本立てでお届けします!
[1]電通2年目、私が退職届を出した日。台湾を旅して見つけた「ヘルシーな生き方」
[2]漢方D2C『DAYLILY』のデザインに込められた思い。漢方を、もっと愛されるものに。
雪がちらつく寒い日。
『DAYLILY』の店舗を取材で訪れると、店員さんと話す女性客の姿があった。
「貧血気味で…」「毎月お腹がいたくてつらいんですよね」
店員さんがていねいに対話し、商品について紹介する姿が印象的だった。
そして取材で訪れた私たちにも、店内で淹れたばかりの薬膳茶、ほんのり甘い漢方ドリンクを試飲させてくれた。体の芯がぽかぽかと温まり、気持ちまでほぐれていくようだった。
いま、とくに女性たちから人気を集めている漢方D2C『DAYLILY』。
発起人の小林さんはブランドについてこう語る。
「特に女性って、体の構造上、体調や心に波がおきやすいと思うんです。ライフステージも移り変わりやすい。妊娠、出産、子育て…すべてのライフステージに寄り添えるブランドになれればと思っています」
そのブランドスタンスに迫った。
【プロフィール】小林百絵(27)|『DAYLILY』共同創業者CEO
慶應義塾大学、メディアデザイン研究科修士課程修了。電通へ入社した後、共同創業者の王怡婷さん(Eri)、河ノ剛史さんとともに『DAYLILY』を立ち上げた。2018年3月には台北に第1号店をオープン。
ーそもそもですが、『DAYLILY』はどういった経緯でスタートしたのでしょうか?
台湾出身のEriと2人ではじめたのですが、きっかけは彼女から「台湾の人と漢方の付き合い方」を聞いてすごくおもしろいと思ったことでした。
Eriはもともと大学院のゼミの後輩なんですが、ご両親が台湾で漢方薬局屋さんを営んでいて。
実際に台湾に足を運んで感じたのは「人と漢方の近さ」でした。
漢方薬局はコンビニみたいに日常にあって。不調な時も元気な時も立ち寄って、お店の人とおしゃべりしていく存在。
食生活でも「風邪をひきそう」と思ったら漢方のスープを飲みに行ったり。コンビニにも薬膳ドリンクやお菓子がたくさん置いてあったり。
自分の体と向き合って、その時に必要な漢方を摂る。体を整えることがひとつのルーティンのようになっていてすごくステキだなって。台湾の人たちの「体との向き合い方」を知って、純粋に羨ましいという気持ちもありました。
ーなぜ「うらやましい」と感じたのでしょうか?
すごく自然に、自分の健康と向き合っている。その考え方がいいなって。
自分の生活を振り返ってみると…たとえば調子が悪くなったら、薬を飲むという考え方しかありませんでした。頭が痛くなったら、痛み止めを飲む。でもそれって根本的には何も解決してなくて、対処療法なんだよな、って。
もともと新卒1社目は大手広告代理店で働いていて、仕事自体はおもしろかったんです。クライアント企業の新規事業をお手伝いする少し変わった面白い部署で、毎日とても楽しかった。
ただその頃はちょうど、労務問題が取り沙汰されていたタイミングで。「どういう生活がヘルシーなんだろう。気持ちよく働くってどういうことなんだろう」と、考えるきっかけでもありました。
体はもちろんだけど、心が元気じゃないと「健康」ではない。特に何かを作る仕事、新しいものをやっていくみたいな時に、ヘルシーな心が無いと難しいですよね。
そんな時思い出したのが、Eriが教えてくれた漢方。やっぱり気になるな、やってみたいな、いや、やらなきゃ…と。そこからすぐEriに「ブランドをやりたい」と連絡したことが『DAYLILY』のはじまりです。
ーとくに『DAYLILY』が大切にしていることでいうと?
まずは漢方なので「体温をあげる」ことはもちろんですが、「気分をあげる」お手伝いも『DAYLILY』ができることだと思っていて。
たとえば、朝仕事に行く前に薬膳茶をいれれば「朝から体にいいことしちゃったな」「今日もがんばるか~」と思えるかもしれない。
「摂ること」って本当に自分のためだけの行為で、誰かに見てもらって承認欲求を得るものではないんですよね。
自己肯定感というのが正しいかは分からないのですが、自分で自分のご機嫌をとったり。気分をあげたり。お守りのような感じで、ちょっとでも気持ちよく過ごすためのお手伝いが出来るのが、『DAYLILY』のいいところなんじゃないかなと。
自分の心や体と向き合うことが当たり前になって、そのひとつのルーティンに『DAYLILY』を位置づけてもらえたら。作って良かった、届いているなと感じられるので、私はすごく嬉しいです。
>>>[2]漢方D2C『DAYLILY』のデザインに込められた思い。漢方を、もっと愛されるものに。
編集 = 白石勝也
写真 = 黒川安莉
取材 / 文 = 平野潤
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