2020.02.21
コードを書く、デザインもする。自分でプロトタイプをつくれるPMに。AppBrew 松井友里の原点

コードを書く、デザインもする。自分でプロトタイプをつくれるPMに。AppBrew 松井友里の原点

2020年2月、450万DLを突破したコスメクチコミアプリ『LIPS』運営するスタートアップ「AppBrew」。立ち上げメンバーの一人が松井友里さん。彼女は、もともと開発とデザインを自ら経験。組織拡大と共にPMへ。いかにPMとして成長をしてきたのか、お話を伺った。

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全2本立てでお届けします!
[1]ひとりで何でもやりたいマンだった私へ。LIPS 松井友里のPM奮闘記
[2]コードを書く、デザインもする。自分でプロトタイプをつくれるPMに。AppBrew 松井友里の原点

自分でもコードが書けるPMに

ーそもそもPMには、どういった経緯でなったのでしょうか?

もともと『AppBrew』は代表である深澤と、私、当時いたもう一人の共同創業者、3人で立ち上げた会社なんです。

私自身はそれまでプログラミング経験はほとんどなかったのですが、「プロトタイプは自分たちでつくるべき」と思っていて。Y Combinatorの創業者であるポール・グレアムに大きく影響を受けているのですが、彼が自身のエッセイで「優れた同一人物がデザインと実装を担当することでこそ、ずば抜けて優れたプロダクトを作ることができる」といった旨のことを書いていたんです。

ソフトウェアで勝てるスタートアップは、きっとそういった人の集まりなんだろうなって。個人的に、今でもそれを目指しているんですよね。

なので、私が理想とする組織は、PMが仕様を事細かに固めてエンジニアは実装に徹するのではなく、全メンバーがエンジニアでもありデザイナーでもありPMでもあるようなチームです。

+++【プロフィール】松井 友里(まつい・ゆり)| 株式会社AppBrew 取締役。1994年生まれ。2013年度東京大学入学。7歳から高校卒業までニューヨークで過ごす。学生時代にクラウドファンディングで得た資金で世界を巡ってスタートアップを取材するなど精力的に活動し、2016年2月に代表の深澤と株式会社AppBrewを共同創業。LIPSのPMを経て、現在は同社で新規事業のプロダクト開発を担当。2018年8月、Forbes JAPANが選ぶ「30 UNDER 30 JAPAN」に選出。

プロダクトをつくってはピボット。実践で得たスキル

ープログラミングやデザインのスキルはどのように身につけたのでしょうか?

創業してから『LIPS』をリリースする1年間で、いくつものプロダクトをつくってはピボットを繰り返していました。機械学習によるチャット支援、LINEボットなど、ホントにいろんなサービスをつくっていて。そのような経験からプログラミングのスキルも身につけることができました。

デザインスキルも同様でプロトタイプをつくる中で自然と身について。Illustratorでいえば、少し触ったことがあるくらい。当時デザインに関してはほとんど初心者だったのですが、手探りで調べつつプロトタイプのデザインを作りました。その過程の中で自然と実践的なスキルも身についたと思っています。

マーケティングも深澤と私と、あとはインターン生とでやっていました。はじめは草の根活動の一環でFacebookグループで投稿したりもして。あれは効率が悪かったなぁ(笑)

とくに転機になったのが、あるYouTuberさんに『LIPS』をプロモーションしてもらったこと。それがすごくヒットしたんです。想像以上に流入があり、その頃から、特にYouTubeのプロモーションにフォーカスし、継続投資する判断をしました。

その頃はデザイン、開発、プロモーション、CS対応も自分たちでやっていた。プロダクトの開発、グロースに関する業務を一通り経験することができました。

初の「リデザイン」プロジェクト、甘かった工数見積

ーそこからPMへとシフトしたんですね。PMになってからの失敗があれば教えて下さい。

プロダクトのリデザインをしたときですね。その頃、採用を始めたばかりで。チームとしての仕組みも出来上がっていませんでした。

初めて外部のデザイナーさんにお願いすることになり、コミュニケーションのハブとなるPMとしての機能が必要になるタイミングで、大きな失敗をしました。 

というのも、その時に代表である深澤が設定した期限は「2週間」だったんですけど、私のほうもそれに納得し、一切工数見積などせず、決めてしまった。全くプロジェクトの進め方がわかっていませんでした。

案の定、2週間経過した時点で半分も実装が終わっていなくて…。デザイナーさんを無駄に急がせてしまったんですよね。

私自身、PMとしてエンジニアと協力し、工数を見積もった上でスケジュールを引くべきでした。そうすれば、デザイナーさんにも余裕を持ってもらえて、きっともっといいものができたはず。悔しかったですね。

+++

「情報共有の仕組み化」を

ー失敗の原因はどこにあったと思いますか?

それまでは、個々人が機能単位で集まって開発している体制だったので、大人数が一つのプロジェクトに携わる経験が初めてだったんです。

なので、プロジェクト全体のスケジュールを引くとか、互いのタスクを全員が把握し合う仕組みがありませんでした。

そこでやるようにしたのが、毎週1回プロダクトチームの定例ミーティング。ZenHubを使って優先度をみんなで議論・把握する場を設けました。また、仕組みとして毎週アプリのアップデートをリリースする体制にしました。

もうひとつ、そのタイミングで作業環境をチーム向けに一気に改善しました。それまで作った本人しか理解できないような状態だったデザインファイルを、チームで編集可能なものにデザイナーさんに一から作り直してもらったりして。コードもリファクタリングして持続性のあるものにしています。

「自分の目」で確かめたことが全て

ー松井さんはアプリのグロースを担ってきたわけですが、プロダクトマーケットフィットについて「ここで勝負しよう」と決め手となるポイントがあれば教えてください。

売上が立ち、事業として成り立つにはどんな数字が必要かを見積もります。その数字自体は事業によって違うと思いますけど。

例えば、メディアビジネスならどんなクライアントさんが顧客になり得て、どのくらいPVがあればどのくらいの売上になるか、ある程度リサーチすれば試算できるもの。それをベースにどのくらいの数字を達成したら事業として成り立つか、判断します。

同じアプリビジネスでも、ニュースアプリとコスメアプリではクライアントさんも、売り方も、ユーザーの行動も変わってきます。事業によってそこはさまざまですよね。

ー最後に、PMにとって一番大切だと思うことがあれば教えて下さい。

誰かが言ったことを鵜呑みにするのではなく、自分の目でちゃんと確かめること。ここはずっと大事にしているところかもしれません。

じつは『LIPS』を立ち上げる前、世界のベンチャー企業を取材して回ったことがあって。その体験のおかげで、データや数字にも厳しくなった気がします。

私が深澤に「〇〇がイケてるらしいよ」と軽く話をしても、彼からは「◯◯の数字でいうとどうだろう?」と返ってくる(笑)彼は誰に対してもそういうスタンスなので、たまにヒヤっとしますが、情報を鵜呑みにしない姿勢は、私も引き続き持ち続けたいです。

>>>[1]ひとりで何でもやりたいマンだった私へ。LIPS 松井友里のPM奮闘記


文 = 田尻亨太
取材 = 黒川安莉


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