yutoriといえば、毎回プレスリリースが話題となるスタートアップでもある。代表である片石貴展さんのリアルな思い、手触り感のある「言葉」が突き刺さる。彼はいかに「言葉」と向き合っているのか、お話を伺った。
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digital "street" company, yutori
2018年6月創業。「臆病な秀才の最初のきっかけを創る」ことを掲げ “ストリート” をデジタル上でプロデュースしている。『古着女子』は現在約33万フォロワーを抱え、インスタメディアを超えた国内最大規級の古着コミュニティを形成。また『9090』/『spoon store』/『centimeter』をはじめ、複数のアパレルD2Cブランドをプロデュース。現在インスタ累計フォロワー数は80万人を超える。2020年7月、ZOZOグループ入りを発表。
yutoriはスタートアップのなかでも「プレスリリース」が特徴的です。価値観、思いを共有する「言葉」に力を感じます。意識していることは?
言葉に対する態度として、書く言葉だけじゃなく、けっこう話す言葉も意識してますね。メンバーとの何気ない会話とか、できるだけ自分の思ってることをクリアに伝えられる繊細な言葉選びができたらいいなと。日々意識しているので「書く言葉」が磨かれる部分もあるかもしれないです。
ただ、別にぼくは文章のプロじゃないから、素人の趣味、自己満足みたいな話かもしれないですけど(笑)
「臆病な秀才の最初のきっかけを、創り続ける。」と銘打たれた、ZOZO入りを知らせるプレスリリース。「yutori は、「なぜかわからないけど古着が好き」という、1人のピュアな「好き」から生まれた。たった1人が「好き」を宣言し裸で踊ることで、仲間は増え、形成された「会社」である。」という書き出しではじまる(引用:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000014.000034263.html)
それでもプレスリリースや、片石さんの言葉って強く突き刺さって。読んでいて揺さぶられます。
ありがとうございます。もともとはめちゃくちゃ言葉、雑だったんですよ。「かっこいいっすね」とか「すごいっすね」みたいな。むしろ雑に言葉を扱ってた時期の方が長い。20数年、そのまま生きてきた。
そうしたら、前職時代の上司に「優秀なマネージャーは、ただ“すごい”で終わらせない」と。「どこがどうすごくて、どう思ったのか。言葉のヒダが細かくないと、受け取る側も受け取れない。褒めても伝わらない。感覚の細かさがリーダーには大事だ」と叱ってもらったことがあって。新卒1年目とかかな。
だから、自分が発する言葉とか、自分自身に嘘をつかないで、本当にそのとき思ってることを、的確に表現するトレーニングをしている感覚はありますね。
言葉が物事を大きく動かすこともありますよね。
ホームページのトップページに「ポエム」ってあって、みんなと一緒に考えたやつなんですけど。それとかを見て、出資してくれた方もいて、本当にありがたいですよね。
自分が発した言葉、書く言葉で、いろんな人に興味持ってもらって、巻き込まれてくれる。こんな最高なことってないですよ。言ってしまえば、言葉ってタダじゃないですか。ビジネス的にすごい大事でしょ、っていう側面もあって。もちろん日頃から自分のちゃんと心のあり方とか、言葉にして、その結果論ではあるんですけどね。意識して気をつけてますね。
yutoriのHP「ポエム」より
「呪いにかかってるのかもしれない…1 日に 100 回以上画面を起動する。 活躍してるあいつを見て比べて 羨んで自己嫌悪になる。何者かになれともう 1 人の自分が囁いて 何者にもなれない自分は憂鬱そうだ。 いい加減、この呪いを解こう。 今の僕らは何者でもなければ、 何者かには一生なれないかもしれない。 でも、自分をやめることはできないから。 輝いてる他人より、濁った自分を見に行くんだ。 イタイ自分も、ダサい自分も、 恥ずかしい自分も置き去りにしちゃダメだ。 みんなまとめて連れてくのさ。」 https://yutori.tokyo/poem
よく「この感覚が言葉にできたらいいのに…」と、もどかしく感じることもあって。片石さんは、どうそれを言葉に置き換えていく?
音楽はでかいかも。邦楽しか聴かないんですけど、歌詞とかすごい見ますね。小説とかは全く読まないけど。
yutoriのプレスリリースも、リズム感とか、耳障りのよさ、読んでくれる人に入ってきやすい文章は心がけていて…っていうか、文章について語るとか、ぼく、偉そうですよね。アーティストかよって(笑)
そんなことないかと(笑)ちなみに言葉が「降ってくる」みたいなことも?
いや、ないっす(笑)「書こう」ってなってから普通に書いてるだけで。ひらめいた言葉のメモとかもしないですし。
ちなみに好きなアーティストはいますか?
Twitterには、Suchmosとか、フリッパーズ・ギターとか、この2組が好きって書いてますね。なんだろう、ちょっとニヒルに世の中を見つつ、それを間接的に伝えていくような、抜け感が好きですね。切迫感がある曲って聴くのも疲れちゃうので。アーティストのマインドとかはうまく参考にして、アウトプットできたらいいなってがんばってます。もう「ゆとり」という名前がある意味、ニヒルじゃないですか。自虐的だし、響きにも抜け感もあるし。
片石さんの言葉で、yutoriの仲間に加わった、という人も多いと思います。今後、会社としてはどこを目指す?
これまでyutoriって、目標とかで人を巻き込むってことをやってこなかったんですけど、プレスとかでも言っているのは、上場を目標に見据えています。どうせ何をやっても病むことはあるだろうし(笑)やるなら大きくやったほうがいいなと。
採用も強化されていますよね。組織も大きくしていく、と。ちなみに、現体制、共同創業者である瀬之口和磨さん、片石さん、経営でいうとお二人の役割とは?
スキル的にいうとぼくが攻めで、和磨が守り。でも、マインド的にはぼくが守りで、彼が攻め、みたいな感じです。経営まわりの数字は和磨が見ていますね。あとは商品が買われてから、お客さんに届けるまでのサプライチェーン、生産効率化とか、ロジカルに突き詰めるところは和磨ですね。
で、ぼくは新しいブランドを立ち上げるとか、既存ブランドで施策をまわすとか、「これやったら当たるんじゃない?」という動き。ブランドの数字に責任を持っています。
で、お互いの持ち場にはあまり干渉しない。最終意思決定の責任はお互いで取るスタイル。そのほうがスピードも上がるし、考え抜いて正しいと思ったことって自分でやってみないと納得できないと思うんで。ぼくらは血気盛んな若い会社なんで(笑)合議より、やりたかったらやって、結果を通して何を学び、どう活かすか。それだけの話。そういう意味でも、自身の責任で意思決定するところはすごく考えますね。
いわゆるバイブスも噛み合って、強み、弱みのバランスも互いで取れて…って、けっこう奇跡的な出会いですよね。
ホントそうですね。運命っていうか、ご縁とか、出会いとか、けっこう信じてるほう。スピリチュアルっぽいけど(笑)採用もそうですね。なんか運命めいた出会いとか、タイミングとかあるし。
yutoriの今の「空気感」を維持しながら、今後どう組織を大きくしていく?
正直そこは全然わからなくて。わかる人に入ってきてほしい人です。ぼくにそのスキルはないんで、これを見てる人とか自信がある人にやってほしい。
基本、yutoriって、浮遊してる感じだったんですよ。何の団体で、何を目指しているか、謎のサークル的に捉えられることも多くて。でも、こんなに世の中が暗いんだったら、会社としてもちゃんとして、上げていかなきゃだな、と思います。
アパレルってすごい勢いで業界再編が起きていて。いろいろと積み重ねてきた方にとっては揺らぐピンチだと思うんですけど、所詮、ぼくらは3年目、26歳のくそガキがやっている小さな会社だし、世の中がホントに変わっていくタイミング。ポジティブに捉えていて。大きい目標を掲げてがんばっていたいですね。
>>>前編|動悸で眠れない夜を越え、見つけたyutoriらしい戦い方。片石貴展と考える“弱さ”から生まれるもの
取材 / 文 = 白石勝也
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